2章 城塞都市ロンネスク 14
俺にとって初めての集団戦が一段落つき、陣は待機状態に入った。
「師匠は先程なぜ目立たないように『
ネイミリアが行動食を配給テントからもらってきて、俺に渡しながら質問する。
「あまり目立つのは好きじゃないんだ」
「それでは正当な評価が受けられないのではないですか?すべての力は、正しく評価されるべきだと思います」
「それについては賛同してもいいんだけどね……」
問題は、自分の持つ力が『正当』なものではないということだ。
正当に評価されるべきは、正当に身につけた力だけだろう。
「ま、個人の好みだと思ってくれ。評価されるより目立たないことを選ぶ人間もいるんだよ」
「分かりました。師匠は謙譲の美徳を重視されるのですね」
ネイミリアがニコッと笑う。
そういえば初めて笑った所を見た気がする。
というかキラキラオーラ付き超絶美少女エルフの笑顔は破壊力が大きすぎる。これこそがエルフの秘術なのではないだろうか。
「ところで先程の『岩砕穿』は恐ろしいほどの貫通力を持っていたように見受けられましたが、なにか工夫がされているのでしょうか?」
「ああ、まあそうだね。大切なのは石の強度と重さ、そして飛ぶ速さだ。硬く重く速くを意識すると、貫通力は格段に上がるよ」
「それは聞いた事がありますが……しかし石では強度が足りないと聞いています」
「そうかな?」
俺は先ほど使ったストーンバレットの石を生成してみる。
高圧縮、イメージは元の世界の銃弾だ。
手のひらの上に現れたのは、光沢のある弾丸状の石……いや、石じゃないなこれ。解析。
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徹甲弾(弾頭)
金魔法によって生成された弾頭
貫通力に優れる
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名前:ケイイチロウ クスノキ
種族:人間 男
年齢:26歳
職業:ハンター 4級
レベル:44(1up)
スキル:
格闘Lv.8 長剣術Lv.9 斧術Lv.2
短剣術Lv.7 投擲Lv.5
七大属性魔法(火Lv.6 水Lv.10
風Lv.11 地Lv.11 金Lv.1
雷Lv.4 光Lv.6)(new)
時空間魔法Lv.9 生命魔法Lv.6 算術Lv.6
超能力Lv.10 魔力操作Lv.6 魔力圧縮Lv.6
毒耐性Lv.5 眩惑耐性Lv.5 炎耐性Lv.1
衝撃耐性Lv.1 多言語理解 解析Lv.2
気配察知Lv.8 暗視Lv.6 隠密Lv.6
俊足Lv.6 剛力Lv.2 不動Lv.2
狙撃Lv.1(new) 錬金Lv.1(new)
瞬発力上昇Lv.6 持久力上昇Lv.6
称号:
天賦の才 異界の魂 ワイバーン殺し
エルフ秘術の使い手 錬金術師(new)
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だからさあ……。
ネイミリアが俺の手のひらの上にある徹甲弾をキラキラした目で見ている。
「これは金属ですよね!?師匠は金属を生成できるんですかっ!?」
「さっきできるようになったみたいだ……」
「ええっ!?」
いや、俺も叫びたい。
あれからもう一波、大量のモンスターが現れたが、副支部長とネイミリア(と一応俺)の活躍で、すんなりと撃退することができた。
無論他のハンターの存在なしでは為しえない勝利であることも忘れてはならない。
誰か一人の力だけで勝てる戦いなどない、と思う。
それより副支部長が、元ランク1段のハンターだというのを聞いて驚いた。
『伝説の弓使い』みたいな扱いらしい。これがキラキラパワーか。
「なんか戦闘が急に楽になった気がしないか?」
「ああ、それはあそこの子のおかげじゃない?」
周りのハンターの何人かが、ちらちらとネイミリアを見るようになった。
あれだけ派手な魔法で上位種を瞬殺してれば嫌でも目立つだろう。
期せずして俺の弾除けになってもらってる感が出てきてしまった。
「クスノキ殿、あまり地味にやってもらうと昇級させられないのだが?」
地面に座って休んでいると、副支部長が口元に笑みを浮かべながら歩いてきた。
言われてみれば確かにそうである。多少は目立たないといけないのか。ジレンマだ。
「クスノキ殿の魔法は、3級ハンター達では気付くのは難しいだろう。それはそれで恐ろしいことではあるのだがね」
ネイミリアが隣でさかんに頷いている。
「まあ、その時は正当なやりかたで昇級しますよ。ネイミリアが上がってくれればそれで十分です」
「ふむ、欲がない……というよりあまり騒がれたくないという感じかな?協会としては力あるものはその力を十全に発揮してもらいたいのだが」
「その考え自体には賛同できるのですが……。私にはもう少し心の整理が必要なようです」
「訳ありというわけか。ただ、君の場合は早く昇級して、ある程度力を持っていた方がいいと思うがね。例えば今回ネイミリアが評価される一方で君が評価されないと、一緒にいたときに無駄にやっかまれる可能性も出てくる」
「ああ、確かにそうですね」
有能でキラキラな超絶美少女エルフと俺のような一見普通の男がパーティを組んでいたら、確かにちょっかいをかけてくる人間は出てくるだろう。
「わかりました、ちょっと考えてみます。ところで、この戦いの終わりは見えているのですか?」
「そうだな……。この手の
「奥地……ですか。最終的にはそこまで戦線を押し上げるしかないと?」
「そうなるな。2級以上のパーティと都市騎士団がいれば可能なのだが……どちらも別の件で出払っていてね。しばらくは様子見をするしかないかもしれない」
「発生源の確認はしないのですが?上空からなら偵察できるのでは?翼のある人がいますよね?」
「ん……?有翼人はそこまで飛べるわけではないよ。知らないのかね?」
「え!?そうなのですか?」
そういえば飛んでいるところは見たことないな。じゃああの翼はほとんど飾りなのか?すごく邪魔そうだ。
まあ、上空から偵察できるならとっくにやっているよな。素人考えなんてそんなものだ。
……上空から偵察?
「副支部長、私なら偵察できるかもしれません。ちょっと試してみます」
「何……?」
久々に超能力を起動。千里眼発動。
視界が切り替わり、上空から大地に縦横に走った亀裂のような谷が一望できるようになる。
谷の底に、ピンクの生き物……オークがうじゃうじゃとうごめいているのが見える。
その流れの元を辿っていくと……上位種がぞろぞろいて……四つ足のモンスターがいて……モンスターの密度が高くなってきて……谷の一番深そうなところに黒い霧が立ち込めていて……その霧の中に、ぼんやりと複数の首を持った蛇が見えた。
「見えました。谷の一番深い所に黒い霧が立ち込めていて、その中に複数の首を持つ大きな蛇がいますね」
千里眼を解除すると、副支部長とネイミリアがポカンとした顔で俺を見ていた。
キラキラでポカンとか新しい境地ですね。
「いや、君は何を言っているのかね……。見えるとはどういうことだ?」
「ああ、実は特別なスキルを持っていまして……。遠くを見渡すことができるんですよ」
「師匠はいったいどれだけのスキルをお持ちなんですか……?」
「うむ、それも知りたいところだが……。今の話は信じていいのかね?」
「ええ、確かに見えましたので。私のスキルについては信じていただくしかないので何とも言えませんが……。首が十本くらい生えてる蛇はヒュドラというモンスターですよね。どれだけ強いのですか?」
副支部長はあごに手を添え、少し考えてから口を開いた。
「非常に強力なモンスターだ。討伐するには騎士団が総出であたらねばならんだろうな。ハンターだけでは手に余る」
「例えば……そう、少し前に出たというワイバーンと比べるとどうですか?」
「ほぼ同格と見ていい。ドロップする魔結晶が7等級と言えば、その強さが少しは分かるか」
それを聞いて、ネイミリアが「あ……っ」と声を上げた。
何か妙な事を察してこちらをキラキラした目で見るのはやめていただきたい。
「しかしそれが本当だとすると、長期戦になるどころか消耗戦になるな。クスノキ殿、済まないがまたポーションの運搬を……」
「いえ、私がなんとかしましょう」
「何……?」
平和な日本の職場なら、消耗戦と言えば体力の消耗だけで済む。
しかしこの世界の消耗戦で消耗するのは人の命だろう。
それを自分の都合だけで見過ごすのは、さすがに精神衛生上問題がありすぎる。
訳も分からず受け取った力だが、使うべき場面で使わないのは……それは違うだろう?
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