006. 皮とか爪とかドロップされるよりはマシだけど
「つまり、どういうこと? ガチャを回すだけで、99%の確率で……」
「……爆死する。そういうことね」
そんな馬鹿な。何を考えたらそんなガチャを実装して、あまつさえ異世界転移特典で1日1回無料にできるんだよ?
あの女神、いや邪神は、この光景を天だか地獄だかから見て哂ってるのか?
「悪趣味すぎるでしょ!!」
怒るを通り越してゾッとしている僕に、女子高生の人は「違うと思う」と首を振って答えた。
「だって君、デスゲームの最初に見せしめで殺されるモブみたいなムーブで、あの女神に天罰を食らってた人でしょ?」
「うん、そうだけど」
「あの時の女神の怒り様は演技じゃなかった。つまり、あの女神は、本当にデメリットのつもりで、【ガチャで
つまり、どういうこと?
「あの女神は……この世界のガチャが、99%爆死する調整になっていることを知らない。あるいは、気付いていない。最悪の場合、過去に何らかの理由で設定を変更したまま、
「うっそでしょ」
僕は真顔になった。
じゃあ何か。僕も呪いを受けていなければ、運営の無能のせいで爆死してたってことか。
「あれ、じゃあどうして、えぇと、そちらは……」
「山本です」
「どうして山本さんは生きてるの?」
口に出してから酷い質問だなとは思った。
「私は、単にガチャ運が良かったのよ」
そう言って、山本さんはステータスメニューを開く。
ガチャメニューとは別のウィンドウが空中に現れ、僕が覗く前で彼女は「スキル一覧」のタブを開いた。
そこには先程のガチャで取得したのだろう、1つだけスキルの名前が表示されていた。
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■スキル一覧
EpicRare(★★★★☆)
・【危機感知:超級】
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「【危機感知:超級】? 便利そう」
てか
「運良すぎない?」
「運が良かったら、こんな所にいないわ」
ごもっともだった。
異世界転移から1時間以内に、僕と山本さん以外の全員が全滅する世界。人並みの幸運があったら、こんなとこ来るわけないわな。
そう考えながら周囲を見回した所で、僕はようやく違和感に気付いた。
「また、消えてる」
「さっきの……うっ、おじいさんね。そうなの。君が地面に伏せて隠れてる間に、周りの様子を見てたんだけど……どうも、死んだ人は死体が消えてなくなるみたい。服や荷物もね」
「そんな、レーティング抑えめのゲームみたいな」
「……レーティング抑えめのゲームでは、人の中身が飛び散る様子まで鮮明に表示しないわ」
ごもっともだった。
改めて、おじいさんが倒れた辺りの地面を見ると、草が人の形に折れているくらいで、何も……んん。
ぎらりと鈍く光を反射する、1対の登山杖。
「トレッキングポールだ。おじいさんが持ってたやつ」
「えっ、あ、本当! どうしてそれだけ……あ、あー……」
一瞬驚いた山本さんは、何かに気付いた様子で顔を顰めた。
「何、どうしたの」
「……たぶん、それ。ドロップアイテムよ」
「………えええええ。うっそでしょ」
死んだ後の死体が消える。代わりに一部のアイテムを落とす。
確かに、スキルだガチャだとゲームみたいな世界観の異世界だし、モンスターを仕留めたらドロップアイテムくらい出るだろう。
モンスターから出るなら、人間からも出るだろう。
ううん……まぁ、皮とか爪とかドロップされるよりはマシだけど……。
「とりあえず、この杖はおじいさんの形見として持っていこう」
別に生前知り合いだったわけでもないけど、一応は言葉を交わした仲だ。向こうが僕の言葉を聞いていたかは怪しいけど。
そんな風に思いながら杖を両手に1本ずつ拾い上げると。
≪【双剣:トレッキングポール】を装備しました≫
そんな電子音声が頭に鳴り響いた。
「えっ!? 何これ!」
「えっ、えっ!!? 何? どうしたの!」
「えっ、何か、えっ、装備したって!! ちょっとこれ持って!」
「えっ、持つの? えっ!?」
≪【双剣:トレッキングポール】を外しました≫
「えっ、何これ、装備しましたって言われたわ!?」
「えっ、こっちは外しましたって言われた!!」
「えっ、ちょっと待って怖い、持って!!」
≪【双剣:トレッキングポール】を装備しました≫
「えっ、また装備しましたって言われた!」
「えっえっ、外しましたって言われたわよ!!」
まぁこの頃には大体何が起こっているのか気付いてはいたんだけど、僕と山本さんは無意味にテンションを上げてわちゃわちゃ騒いでいた。
だってそうでもしてないと、目の前でいきなり人が死んだショックなんて、ごまかせるものじゃないし。
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