Chapter002:ラビットフィールドの町

013. 草原があまりにも広すぎて、10日歩いた

「人里だ……っ!」

「やっと、人里……!」


 僕と山本さんが、遠くに小さく見える町を発見したのは、異世界転移から10日目のことだった。


 通学途中のバスがガス爆発し、魔王討伐(詳しい説明は一切ない)のために異世界に送られた僕達。

 この世界で最初に降り立ったのが、だだっ広い草原で、その草原があまりにも広すぎて、10日歩いた。

 1日6時間は歩いて、10日だ。

 時速4キロで計算すると、240キロくらい。東京から愛知くらい。


「チュートリアルの草原が! 広すぎるだろ!!」

「なるべく大物のいない、安全なルートで来たのもあるけどね」


 ここまで大きな怪我もなく辿り着けたのは、山本さんの持つ【危機感知:超級】のお陰が8割くらいあると思う。

 僕達は実際には出会ってないけど、この草原には、角ウサギ相手に無双できる人間(つまり一般人)の命を簡単に奪ってしまえる何か・・がいるようなのだ。


「あの町に入ったら、また少し命の危機があるみたいね。人が集まってる以上、多かれ少なかれ悪人もいるって話よ」

「かといって、ずっと焼いたウサギの毛皮で食い繋ぐのも、そろそろ限界だよね」


 栄養の偏りも、それはそれで体調不良の危険が伴う。


「この辺で一旦休憩して、近くまで行って覗いてみましょう」

「そうしましょう」


 恐らく、これが山本さんとの冒険の、最後の時間になるんだろう。

 僕達は周囲の草を殺して薪をドロップさせ、ウサギの毛皮を焼いたり敷いたりし始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る