011. この世界の食物連鎖は成立してるの???
空気が読めないとはよく言われるし、相手の反応を見ていれば自覚もできる。
人の心がないとまで言われたこともあるけど、あれは言った方も人格者では全く無かったから、ノーカウントで良いかな。
いきなりバスで事故死して、家族のいない異世界に飛ばされて、友達を含む沢山の人が目の前で爆死して、それでも頑張って、初対面の相手と一緒に生き残ろうとしていた女子高生の人に、「異世界転移して良かったね」は確かに無いんだろうな。
普段なら思ってても口には出さないよ。でも、朝は弱いんだよ。
「あっ、魚だ」
僕は川上の方、山本さんは川下の方に別れて進んだ。
僕1人での生存確率は、川上の方が若干高いらしい。お礼にトレッキングポールを渡そうとしたけど、自分1人ならどうとでもなるから要らない、と言われた。
彼女の身体能力は僕より高いし、危機感知のスキルは優秀だ。実際どうとでもなるんだろうな。
だから僕は1人、草原の奥の奥、遠目にうっすら見える山に向かって歩いている。
「……獲れないかな、魚」
1人で歩いているのは、思ったよりも退屈だった。
たまに出てくる
「地引き網みたいにしたら行けるかも」
僕は制服のシャツを脱ぎ、濡れるから靴とスラックスも脱いで、上半身はジャケットにネクタイという出で立ちで川に入った。
シャツを水に浸け、警戒心の薄い小魚の群れを、ガバッと一気に掬う!
水の抵抗がすごい!
大半の魚が逃げる!
「あ、でも1匹獲れてる!」
逃げ遅れた間抜けな魚を川原に揚げ、デイパックから出した折り畳みナイフで捌くことにした。
例によって、角の生えた小魚だ。フナみたいなやつ。
鰓にナイフを差し込まれた魚は、びくりと震えると徐々に姿を消して―――魚の鱗がドロップした。
「……流石にこれは駄目でしょ」
この世界の食物連鎖は成立してるの???
というか、小魚は10センチ程だったのに、鱗は10円玉くらいのサイズがある。明らかに元の魚の鱗より大きい。
やはりドロップ品は、元の生き物のパーツがそのままアイテムになっている訳ではないようだ。
植物ならどうか、と試しに草原の草を抜いて磨り潰してみたら、15本ほど続けた所で、明らかに異常な物がドロップした。
乾いた木の枝だ。焚き火に使った流木に似ている。
「何なんだろうね、この世界」
こういう時に、疑問や感想を共有できる会話相手がいないのは、本当に良くない。寂しい。
これは多分、山本さんが抱いていた不安感とか、ストレスとかに近い物なんじゃないだろうか。
少しだけ解った気がする。
二度と人間関係で失敗しないように、注意しよう。
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