062. 地理説明回

 ちょっと地理説明回やっとこう。


 ラビットフィールドと呼ばれる大草原は、このカタロース王国の中央辺りにあるそうだ。

 「ラビットフィールドの町」は草原の北西端。その西側にクリスタルマインを有するカタ山脈があり、山脈の向こう側がネック森国、国土の大半が森で覆われた国だ。

 その更に先、大陸の北西端の大きな半島に、ツラタン連合国という国があるらしい。


〈アタシの出身は王国の北東部で、王都に行くよりは東の隣国、リブロース公国の方が近かったな〉


 ううん。


 何となく位置関係はわかりますよ?

 たぶんリブロースの東がサーロインで、大陸中央にバラかナカバラみたいな大国があるんでしょ。


〈よく御存知ですのね!〉

〈少年の世界にも同じ国があったとか?〉


 国じゃなくて肉ですね。


 これ、何処までが固有名詞で、何処からが翻訳なんだろう。こっちの牛肉はドロップアイテムだし、部位とかないよね。


〈何を仰ってるんですの?〉


 異文化の相互理解は難しいな、という話です。


〈はあ、なるほどですわ?〉


 話を戻しましょう。

 今後のルートですけど、メイドの人のお墓を作りに開拓村跡に行って、それからプレタさんと大聖堂を見に王都に行くということで、どんなルートになるんですかね。


〈王都は我がカタロース王国の南端にありますのよ。クリスタルマインの町からカタ山脈沿いに、乗り合い馬車で2週間くらいですわ〉


 ラビットフィールドの町からクリスタルマインの町、そこから王都行きの馬車に乗って20日くらいかな?


 首都が国の端にあるのは僕の地元からすると不思議に思うけど、あっちの大国も首都は大体端の方にあった気がするし、そういうこともあるんだろう。

 というか、この国の地理的中心はラビットフィールドのど真ん中だから、首都はもっとマシな場所にあるよね。そりゃそうだ。


〈ラビットフィールドを突き抜ければ、10日と少しで着きますわよ!〉


 どうせ馬車の運賃もないし、そっちの方が良いですかね。


〈それなら、開拓村跡からまっすぐ迎えますわね!

 ラヴィはお休みの日に日帰りで行ってましたから、そんなに遠くはないはずですわ〉


 なるほどですね。

 ではまず、開拓村とやらに案内を…


〈アタシの家は元々、わりと熱心な女神信者でさ〉


 え、何です急に。

 どうしました、プレタさん。


〈毎日祈りは欠かさなかったし、月に3度は地元の教会に行ってた。

 ラビットフィールドの町に越して来たのも、領主が司教だって聞いたからだ〉


 急に語り出しましたけど……え、姫様、どうしましょう?


〈ど、どうしましょうか……!?

 あの、プレタさん? どうしましたの?〉

〈だけど、実際に司教男爵の所業を見て、幻滅した。

 ガチャが憎い。女神が憎い。神聖な物が憎い。

 生けとし生ける者全てが憎い……ゴスゴスゴス………〉


 ゴスゴスじゃないよ!!


「プレタさん! 正気に戻って!!」

〈…………はっ!? あ、アタシは一体………〉

〈お疲れですのね、プレタさん〉


 大丈夫かなぁ、本当に。

 僕は少し歩調を早めることにした。




 で、その開拓村跡についたのは、翌日の夕方くらいだった。

 日帰りの距離とは一体……。

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