155. ◇神代日常記録(魔王蛮行関連箇所抜粋)1/4

 初めに創世神オメガが世界を創り、22の神が様々なフィールドやシステムやオブジェクトを創り、終わりに豊穣神アルファが草木を創りました。


 食神イータが世界に降り立ったのは18番目のことで、彼が「食」というシステムを制定し、料理を開発するまで、この世界の生物は大気中のマナのみを糧としていました。

 神々が定めた下限を遥かに上回る個体数が生まれ、広がり、地に満ちたのは、間違いなく彼の功績だと言えるでしょう。


 その食神が封印されたのは、世界にとって大きな痛手だったように思います。

 食の管理は寿神ベータが後任に就きました。直接の引継ぎも行えなかったため、若干の不安が残ります。



「本当に……糞みたいな試合でしたね」


 創世神の言葉に、私は何と答えたか迷ったものの、結局は頷いて返しました。

 実際、糞みたいな試合ではありましたので。



 24柱の神――といっても既に何柱かは封印されたり、堕天したりしているのですが、その序列を決める主神争奪トーナメントにおいて、食神の相手となったのは魔王ガンマでした。


 ・自身の編み出した権能

 ・ポイント制で選択できる初期スキル

 ・ガチャで得られるランダムスキル

 ・シーズン中に育てた眷属


 これらを以て、神同士の直接戦闘による勝敗点と、眷属による信仰点の合計で競い合う本トーナメントですが、最新環境となる第6シーズンでは「獲得上限のない信仰点で高得点を狙う」ことがセオリーになっています。

 この点、個体数を増やすことで信仰の母体を増やせる食神は優勝候補と考えられていましたが、まさか魔王に敗れるとは思いもよりませんでした。



 黎明の頃、生命神タウが妖精を創り、獣王クシーが魔物を創りました。


 それから、変異神ミューが妖精をベースに人間を創りました。


 変異神は人間と魔物をベースに翼人を創り、獣王は人間と魔物をベースに獣人を創りました。


 魔王はそれを見て、人間をモデルに魔人を創りました。


 人間を外見のモデルにはしたものの、フルスクラッチの魔人はドラゴンやゴブリン、インテリヒツジ等と同様に癖の強い種族となり、祖である魔王自身も使い勝手が悪いと言って、数シーズン前からは権能の開発に注力していたはずです。



 戦闘中、魔王の放った炎の柱のような権能により、食神はほとんど何もする前に倒れてしまいました。

 死んだ神はペナルティタイムの後、死ぬ前と全く同じ姿/能力/記憶を持った状態で転生しますが、魔王に敗れた食神は100年間のペナルティタイム終了後も復活する様子はなく、そのまま試合は終了してしまったのです。


「相手を即座に封印する権能でしょうか。次シーズンからは使用禁止でしょうね」


 何かをする前に相手を封じてしまえば、相手が得点を得ることはなく、確実な勝利が掴めます。とはいえ、主神争奪トーナメントはあくまで神としての優劣を決めるための試合ですので、世界の発展に寄与することもなく、ただ試合に勝つためだけの試合は不適切と言えます。

 有体ありていに言えば、空気を読めと言った所でしょうか。


下衆げすな彼の者の考えそうなことです。神の何たるかを、まるで理解していません」


 創世神は元々魔王に対してあまり良い感情を抱いておらず、彼女が自身の世界に加わった時も、あまり良い顔はしていませんでした。

 創世神にも短気で潔癖な部分があるので、魔王との相性は良くないだけかとも思っていましたが、昨今の様子を見ると魔王の側にも問題があるように感じます。

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