023. お前じゃないんだよなぁ
宿代も払えない僕は、路地裏でウサギの毛皮にくるまって一晩を明かした。
ガチャの成果はスキル、【幸運値上昇:下級】。新しいスキルだ。幸運値といっても、これでガチャ運が上がるわけでもないし、上がっても
マニュアルを寄越せ。
冒険者としての僕の初仕事は、町の裏側、大草原ラビットフィールドの反対側にある山での、【薬草】採取の依頼だった。
これは指定数の薬草を摘んでくれば終わりの、簡単なお仕事……ではない。
この世界の薬草は、野生の薬草を
30株の薬草を摘むと、平均で3個の【薬草】がドロップする。
今回の依頼ではこの【薬草】を30個納品しなければならない。
「うう……いちたりない………」
野生の薬草は群生しない。
29個の【薬草】を手に入れ、最後の1個という所で、僕は15連続ドロップ無しを引いていた。
幸運が高いとは何だったのか? 幸運値上昇スキルとは?
スキルは1%しか上昇しないから、小数点以下切り捨てだけど。
「ゴブゴブ、ゴブーッ!!」
「げっ、またゴブリンか……オラッ! このっ! このっ!!」
「ゲブッ!?」
山にはウサギは出ないけど、いわゆるゴブリンというやつらが跋扈している。
この辺にいるのは僕の胸ほどまでの背丈だけど、血筋により見た目には幅がある。共通してゴブゴブ鳴くような言語を持つ、敵性亜人らしい。
2足歩行で言語を持ち、人間と交配できる種族をまとめて亜人と呼び、種族や地域によっては人権もあるらしいんだけど、ゴブリンは人間や他の亜人を襲う文化を持っているので、盗賊と同じ扱いになる。
つまり、殺しても罪には問われず、場合によっては討伐依頼さえ出される立場だ。
「あっ、何かドロップした……。お前じゃないんだよなぁ……」
採取依頼で使うべき運が、無関係な【鈍器:ゴブリンの棍棒】のために使われてしまった。
武器はあるから使わないけど、買取ってもらえるかもしれないし、一応鞄に入れておこうかな……。
山の何処かにゴブリンの集落でもあるのか、さっきから1人歩きのゴブリンには度々遭遇するんだけど、集団に会わない内に帰りたいんだよなぁ。
ゴブリンは拐った異種族との間に子供を作ることも多く、場合によってはほとんど原種ゴブリン(?)の外見的特徴を持っていない場合もありそうな気がするんだけど、見た目に関わらず、「ゴブゴブ」と鳴いて人を襲うのがゴブリンらしい。冒険者ギルドでは、ゴブリンを見掛けたらきっちり殺すか、最低でもギルドに報告するよう推奨している。
なるほど、ポリコレに配慮した虐殺だなぁ。
それから僕はしばらく山を散策し、数匹のゴブリンを狩り、追加で【斧:ゴブリンの石斧】を手に入れ(お前でもない)。
やっと見付けた野生薬草の群生地で、今更納品分にお釣りが出るくらいの【薬草】を手に入れた。
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