024. 制度的には断ってもいいけど、不敬罪で捕まるかも知んないよ
「指名依頼ですか?」
言葉の意味は解るけど、何言ってんだこの人、とは思った。
初依頼の報酬を受け取り、ドロップ品の売却も終えて懐の潤った僕は、2日ぶりの宿でゆっくり休もうと思った所で、受付のおばちゃんに呼び止められたのだ。
「さる御貴族様からの―――てっても、この町の貴族なんて御領主様と御家族しかいないんだけどね。まぁ御領主様から直々のご依頼だよ」
「何で御領主様が、昨日登録したばっかの僕なんか知ってるんです?」
「そりゃあんた、祭の騒ぎの話だろ」
祭の騒ぎ。この町のお祭りの中の舞台イベント、公開ガチャ刑執行ショーに乱入してガチャを回した件だろう。
あれは知人がガチャ爆死しそうになったから助けただけだったんだけど、
「何でそれで指名依頼に……?」
「さぁ? うちの御領主様は女神教の司教様でもあるし、女神のガチャで生き残った御祝儀~、って話じゃないかい?」
聞けば、貴族や教会からの御祝儀依頼というのは、冒険者界隈では珍しくもないんだそうで。安上がりなチャリティーみたいなもんかな。
「制度的には断ってもいいけど、不敬罪で捕まるかも知んないよ。金がなければ鉱山で強制労働か……うちの町ならガチャ刑用に、来年の祭りまで丸一年地下牢で拘束だね」
「うわぁ……どっちも嫌ですねぇ」
受けるしかないんだろうなぁ。
ただまあ、依頼の詳細を聞いてみると、依頼自体はそう難しい物でもないらしい。
宝石鉱山のある町まで、領主を守っての護衛依頼。護衛と言ってもルートは整備された安全な道で、盗賊や敵性亜人、危険な魔物の類いも滅多に出ないらしい。領主の専属護衛や私兵も普通に着いてくるし、移動も馬車。
これ僕まったく必要ないっていうか、本当に御祝儀だな。
報酬も何か桁がすごい。現物支給って書いてるけど。
何だろ。すごい武器とかかな。
「じゃあ、受けるってことで良いね?」
「はい、お願いします」
特に内容に問題もなさそうだったし、社会的立場のある人が、そんなおかしな依頼を出すことも無いだろう。
日程は明日から6日間。特に予定もないし、問題ない。
僕は依頼の受付手続きを行い、宿を取ってその日は早めに寝ることにした。
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