Chapter003:クリスタルマインの町
032. 流石はお嬢様! もう一流の鉱山奴隷でございますね!
「1つ掘っては~♪」
「国のため~♪」
カーンッ
「2つ掘っても~♪」
「国のため~♪」
カーンッ
クリスタルマインには今日も、
天然の水晶に竜脈からの魔力が染み込んで、特別な力を持った宝玉―――またの名を魔晶玉。様々な魔道具の動力となる魔晶玉の、国内最大の産地こそが、このクリスタルマインなのですわ!
「3つ掘っても~♪」
「国のため~♪」
カーンッ
何処を掘っても魔晶玉が出る、ゆえに掘りに掘られ、ピーマンのように空洞だらけになった宝石鉱山。
その中でもわたくしの担当するここは、掘り過ぎて、わたくしの実家のダイニングほどの大きさになった採掘坑。
歌声で指示を出す現場監督の平民と、1列に並んで鶴嘴を振るう犯罪奴隷達。
「4つ掘ったら~♪」
「自分のために~♪」
わたくしも負けじと鶴嘴を振り上げます。
「自分のために~ですわ!」
華麗に翻る鶴橋! わたくしの【対物特効:下級】が唸りますわ!
対物特効は石や金属に対し、耐性無視で攻撃力の5%分でのダメージを加算する
採掘のためにあるようなスキルですわね! まさに運命!!
そうしてしばらく掘り続け、終業の時間が近付いた頃。
わたくしの背の方から起こる、歓喜に満ちた1人分の喝采。
「流石はお嬢様! もう一流の鉱山奴隷でございますね!」
作業着の袖で汗を拭いつつ振り返れば、そこにはメイド服の少女―――わたくしのメイド、ラヴィがタオルを手に興奮の面持ちで立っていました。
「ありがとう、ラヴィ」
「お嬢様、本日の成果は如何でしたか?」
「ふふっ、聞いて驚くのですわ! 今日はバケツに丸2杯の魔晶玉原石を掘り出しましたのよ!」
熟練の鉱山奴隷でも1杯半の所を、2杯もですわよ!
この原石を磨き、魔力的に圧縮すれば、6~8個程の魔晶玉が精製されますの。
「流石でございます、お嬢様!
その優雅な所作、可憐な相貌、細く滑らかな指からは想像もできない、鋭く見事な採掘技……! まさに天性の才能でございます!
しかしお嬢様、お尋ね致しましたのは、そちらのお話でなく……」
と、ラヴィは声を潜めて耳を寄せます。
「……
「…………ええ、判っていますわ。成果は無しですわね」
ちょっと採掘に熱中し過ぎていただけですわ。
ええ、忘れていませんとも。
わたくしはただ、鉱山を採掘に来た奴隷ではありませんの。
このわたくしが、敢えてこの犯罪奴隷の強制労働施設へ潜入した理由。
それは――――――復讐。
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