152. なら、朕も殺す気で行くかァ……
「
森の手前まで来た所で戦えと言うのだから、森の何かを利用するんだろうな。
「さっき
人を襲うような魔物はいなかったし、第三者の
たぶん、隙を作って隠れろっていう話だ。
「どうやった? 危機感知スキルかァ? ランクは何だろうなァ?」
さっきから相手の話に相槌を打ちそうになるたび、コレットさんが脇を
まだ少し距離はあるけど、死死死の人はこちらに話し掛けながら少しずつ歩み寄って来ていた。
「そう高貴な面にも見えねえし、上級か、中級か……
近付かれたら普通に斬られて終わり。
そうでなくとも、気を抜いたら2人まとめて飛び道具でやられて終わりだ。
「運が良ければ次も避けれるなァ……その次はどうだろうなァ?」
後ろ手にハンドサインで「遠距離で一当てしたら全力で逃走」と伝え、「了解」を意味するタップを受けた。
「おい、寂しいなァ。返事くらいしろよォ」
まず、僕の背中に隠れていたコレットさんが持っていた竹刀を縦回転で投げつけた。
「おおっと!?」
死死死の人は手にした刀の1本で切り払う。竹刀は縦に真っ二つに裂けた。
「盾も」
「はいですワン」
僕の背中の荷物に引っ掛けていた竹の盾も、コレットさんの全力で投げつける。
それに合わせて僕は杖から出が早く目立つ炎熱魔法、義手からの矢を連射した。
相手はその全てを斬り払い、
「
やっと状態異常が入った。普通なら2発当てれば罹患する混乱付与(蓄積値+75%)と幻惑付与(蓄積値+70%)ですら5、6発は受けてようやくだ。
「おっ、何だこりゃ、状態異常付与かァ? それも2種類!
混乱は正常な判断ができなくなる状態異常。
幻惑はありもしない物が見えたり、見えた物を全く別の何かとして認識してしまう状態異常。
乱戦の中でこの2つに罹患すれば同士討ちを狙えるし、相手が1人でもまともに戦うことはできなくなる。
精神力での抵抗も下がるので、追撃で別の状態異常を重ねれば、普通にそのまま封殺できるんじゃないかな。
「危機感知に、混乱付与に、幻惑付与。まだ何かありそうだなァ?
なら、朕も殺す気で行くかァ……」
罹患はしたはずだ。
普通なら、まともに立っているのも難しいはず。
「どんな隠し玉があるのか知らねえが、スキル戦は、当たらずに当てりゃ良いんだよなァ」
それなのに、僕の魔法も矢も、当然のように躱す。
後ちょっとで行けそうなんだけどなぁ……。
「お兄さん」
コレットさんが裾を引く。
「ちょっと待ってね。次はこっちで」
「おっ? 何だこりゃ、変なのが混じってるな?」
普通の魔法や矢が当たらないならと、念動力による攻撃も混ぜてみたけれど、不可視のはずのそれすら躱された。惜しい。
「お兄さん?」
コレットさんが裾を引く。
「行くぜェ、武神流奥義――」
跳ね回るようにこちらの攻撃を避けながら、死死死の人は大仰な構えを取った。
「――――――――
3本の刀を3方に向け、3度振る。
少し遅れて、3箇所で何かが裂けるような轟音が聞こえた。
攻撃の手を止めて斜め後ろを振り返れば、刀の1本が向いていた一画の樹がまとめて
「んん、外したかァ? なら次だなァ」
今のが遠距離攻撃かな?
死死死の人はまた刀を振りかぶる。
「お兄さん、一当てしたら逃げますですワン」
コレットさんは僕を担いで、森の奥へ走り出した。
…………コレットさんがいないと死んでたな、あれは。
「ありがとう」
「どういたしましてですワン」
油断。油断だ。
僕自身、最近ちょっと油断が過ぎたとは思う。二本松さんにも言われたし。
でも、【即死付与】スキルを持って、状態異常耐性が高い上に、こちらの攻撃が当たらず、不可視の念動力さえ躱され、遠間で攻撃してくる相手に油断するのは、流石におかしい。
「……あの人おかしくない? 向かい合ってると、怖さを感じられないというか」
「何か、おかしなことをしてる気はしますですワン」
やっぱり、コレットさんもそう感じてはいるらしい。
「どうしてコレットさんは平気なの」
「臭いがやばいですワン。血が出てないのに、血の臭いがしますですワン」
臭いか。それは真似できないなぁ。
混乱状態は100%の耐性があるから違うだろうし……相手が100%以上の付与を持ってたら知らないけど、コレットさんに突かれただけで正気に戻るなら、やっぱり混乱状態ではない。
それ以外に考えられそうな状態異常は無いと思う。少なくとも、王立学院で習った限りでは。つまり、人族の把握している限りでは無いはずだ。
何か、そういう超絶激レアスキルがあるのかな。【警戒心低下】みたいな。
情報が足りない。とにかく今は、逃げないと。
「くんくん……あっちから蝙翼人の臭いがしますですワン」
不意に立ち止まったコレットさんが、鼻を鳴らして教えてくれる。
コレットさんの案内に従って森を奥に進むと、3人の蝙翼人の人達がいた。
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