087. ダンジョン探索実習当日
ダンジョン探索実習当日。
学院の敷地内にあるダンジョン前の広場(狭い)に1学年全体が集まり、本日の予定やら目的やら、注意事項やらを聞かされていた。
今回の実習では、3人~4人の班毎にダンジョンへ潜り、適当なドロップアイテムを取得して、それを提出する流れだ。提出したアイテムの価値や入手難易度で点数が付けられ、それが成績に反映される。採点終了後はアイテムは返却して貰えるので、例えば「レアアイテムを手に入れたから学校側に隠して持ちかえる」といった不正をする必要はない。
使い魔やペット、ゴーレム、従者は、班員1人につき1名まで連れて入って良いので、僕に憑いている亡霊2名はセナ君を僕の使い魔、姫様を同じ班のラム美さんの使い魔として申請した。
〈宜しくお願いしますわね、ラム美さん!〉
と姫様は張り切っているけれど、ラム美さんには姫様の姿は見えていないし、声も聞こえない。あくまで書類上の話だ。
姫様は対物特効スキルによって小石を転がす程度のポルターガイスト(手動)は起こせるので、存在すること自体は一応理解してもらえた。ただ、インテリヒツジは魔法で念動力を操れるので、実際に見せてもあんまりピンと来ないらしい。
王立高等学院は元は貴族向けの学校だったそうだけど、王国貴族はスキルの有無で任ぜられることからも想像できるように、戦闘力が求められる。貴族は他国との戦争や魔物の襲来など有事には前面に立って、民を守るのが義務なんだそうだ。だから戦闘向けの授業や実習が多い。だから頑張れ。
と言う旨のことを、さっき先生が言ってた。
諸々の説明が終わり、A組、B組と順番に、1班ずつの出発だ。僕達のX組は最後。
出発準備のために班毎に集まっていた僕達の前に、同じクラスの角エルフの人がやってきた。
「おい、下等種族共」
「あ、はい何でしょう」
僕とインテリヒツジのダイ吉君(眼鏡)、ラム美さん(リボン)は円陣を組んでいたので、角エルフの人の方を向いていた僕が真っ先に返答する。
「私を貴様らの
「えぇ……そんな急に言われても。自分の班はどうしたんです」
周囲を見回して探してみれば、昨日班決めの時に一緒にいた3人がこちらを睨んでいる。
何か揉め事でもあったなら先生に……ん、何ですダイ吉君。裾を引っ張ったりして。
「待て待てメェ。黒毛の野郎が普通に話し始メェたから流してしメェそうになったけど、こいついきなり俺達のこと下等種族って纏メェやがったメェ!」
ダイ吉君はそのようにご立腹だった。
「あ、確かに……! インテリヒツジの方が角が多いから上等種族なのでは?」
「くッ、確かにその通りだな、失礼をした。下等種族1名と上等種族共」
「黒毛さんは下等種族扱いで良いメェ!?」
だって、まともに相手にしてもなぁ。
貴族とかと同じで、何か地元にそういう文化があるんでしょ。だったらセナ君やカマセーヌ様に対するみたく、表面上はある程度尊重すれば波風も起きないんだろうし。
〈おいッ、死霊術師! お前そんな風に思ってたのかッ!
いや、それ以前に僕はお前に尊重された覚えはないぞッ!!〉
〈わりと尊重してると思いますわよ?〉
してますよねぇ。
してたかな。たぶんしてたと思う。
と、僕が亡霊の人達と遊んでいる内に、角エルフとインテリヒツジ達の会話は進んでいた。
「……やはり人間ごとき下等種族と共に行動するなど、反吐が出る。だからあの班は抜けた。下等種族の教師にも許可は取ってある」
「でも、黒毛さんも人間だメェ?」
「くッ、業腹だが仕方ない……ッ、3匹よりは1匹の方がマシだ」
死の苦痛でも耐えるかの表情で角エルフの人が言った。
あ、でも訂正が1つあるな。
「ここだけの話、僕、人間じゃないんですよ」
「は?」
「メェ?」
「メェ?」
〈そういえばお前、異世界人とかいう謎種族だったな……ッ!〉
〈あ、そうでしたわね〉
一応、証明のためにステータスメニューを空中に開く。
インテリヒツジの2人にも見えるように、低めの位置に表示した。
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▽ステータス
体 力:1.2 魔法力:1.3
攻撃力:1.5 防御力:1.0
敏捷性:0.9 器用度:2.0
精神力:0.7 幸運値:5.3
▽備考
・異世界人
[スキル一覧][装備一覧]
[所持アイテム一覧][×閉じる]
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この備考の「異世界人」っていうの。称号的なやつだと思ってたら、種族名だったらしい。最近知った。
こっち来た頃はステータスが低すぎたから、恥ずかしくてあまり他人に見せなかったし。
最近は体力とか色々、結構上がって来たけどね。
改めて見ると、何だろうね、この簡素なUIは。情報が少なすぎるでしょ。
今度アップデートがあったら、現在HP/MPと状態異常くらい表示して欲しいな。
〈何がアップデートだ! 女神様が創りたもうたメニューは、これこそが完成形なんだッ!!〉
どうかなぁ。この世界、割と仕様バグが多いんだよなぁ。
ともあれ、僕のステータスを見た人達は驚いて目を丸くしていた。
「ほ、本当だメェ! こんなの初めて見たメェ!!」
「しかしおメェ、ステータス低すぎメェ……いや幸運値だけ高すぎるメェ!?」
結構上がってきたつもりだったステータスも、インテリヒツジ的には低すぎるらしい。へこむ。
「本当に、人間じゃない……知らん種族だが、人間よりはマシか。暫定的には中等種族だな。
良いだろう、なら私がこの
よく判んないけど、問題は解決したのかな。で、追加メンバーの是非についてだけど。
「僕はどっちでも良いですけど、お2人はどうですか」
「わ、私はどっちでもいいですメェ」
「正直俺もどっちでもいいメェ」
主体性のない人達だなぁ。根がヒツジだからかな。
〈ふんッ、どっちでも良いからさっさと進め! 前の班が出発しているぞッ!!〉
〈わたくしはお友達が増えた方が嬉しいですわ!〉
「うちの亡霊の意見も合わせると、賛成1票、どっちでもいい4票、反対0票です。
あと、前の班がもう出発したので、そろそろうちも出ないとまずいです」
ということで、角エルフの人は僕達の
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