081. レーザーみたいなのを撃ってきた人の亡霊
「うぅ~……お姉ちゃん、助けてぇ……」
〈あっ、この邪悪な死霊術師め! 一体僕に何をしたッ!!〉
「ど、どうしたのコナ! 何があったの!?」
〈あらセナさん、ごきげんよう! やっと御挨拶できましたわ!〉
んんん。何これ。
山本さんの案内で新しい隠れ場所にやってきた僕達は、山本さんの連れのコナさんと、さっき別れたセナ君……の亡霊に遭遇した。
「コナ、何があったの!」
「このお兄ちゃんが急に来て、急に、あ、頭が爆発して、消えちゃって、また出てきたの」
「??? 本当に何があったの?」
うん、大体わかった。
「山本さん、今そこにセナ君、えぇと、さっきレーザーみたいなのを撃ってきた人の亡霊がいるんだけど」
「ええっ!? 怖っ、は、早く除霊してよ!!」
〈何だと、穢らわしい鬼め!! この僕が浄化してやるッ!!〉
お互いに当たらないパンチを繰り出す2人を宥め、この場でただ1人亡霊を見ることのできない山本さんに通訳をしつつ、状況と情報を共有する。
僕からは、セナ君が僕の知人だという話と、さっき幻惑と混乱を食らっていなくなったという話。
セナ君からは、僕と戦っていた途中から記憶がなくなり、気付いたらここで亡霊になっていたという話。
コナさんからは、急に現れたセナ君が、たぶんガチャを回して爆死し、亡霊になってからも喧しいという話。
山本さんからは、ちょうどガチャ1回分の宝石が貯まっていて、落ち着いたら使う予定だったという話。
姫様からは、今まで自分を認識できなかったセナ君と話ができるようになって嬉しいという話。
それで、現状は全員が把握したようだ。
本当にガチャ回しちゃったのか……状態異常こっわ。
とは言え、疑問はまだ残っている。
「セナ君、何で山本さんを襲ったの。冒険者もやってたっけ?」
〈馬鹿にするなッ!! 女神様に仕える僕が、そんな賤業に関わるものかッ!!〉
何かめっちゃ怒るな……こんなキャラだっけ……。
〈きっと亡霊化の影響ですわよ〉
えっ何ですそれ。そんなのありました?
〈亡霊になると、気分がふわふわ楽しくなって、心が明るくなるのですわ!〉
これ明るくなってます?
〈邪悪な死霊術師め! お前如きが、一番弟子の僕より師匠に認められ、あまつさえ支援まで受けるだと……そんなことは許されない……ッ!! だからこの僕が王都を脅かす鬼を討伐し、師匠に誉められるんだッ!!!〉
ええ。話の繋がりが解んないんだけど、これ僕が何か悪いんですかね……。
というかセナ君大丈夫? もう悪霊化してない?
〈うーん、何となくですけれど、これはプレタさんの時とは違いますわね。たぶん素ですわよ〉
してないのかぁ。
「ちょっと、急に黙っちゃってどうしたのよ」
「? しっぽのお姉ちゃんと司祭のお兄ちゃんはお話ししてるよ。司祭のお兄ちゃんはうるさい」
と、そうか、通訳忘れてた。
山本さんには何にも聞こえてないし、コナさんにも僕の声は聞こえてないんだった。
〈煩いだとッ!? 無礼だぞッ、平民!!〉
「ひゃあ、ごめんなさい~……」
「! この亡霊! コナに何かしたのね!!」
「ごめん、ちょっと話に聞き入ってた。コナさんは、うるさい発言を注意されただけ」
「そうなの?」
「うん、そう……」
だいぶ面倒臭いんだけど、何で山本さんは対霊特効を持ってないんですかね。
半分が罵声の証言を要約すると、今までの疑問の全ては、セナ君のスキルに由来する物だったらしい。
先日学校を休んだ僕は、大聖堂に立ち寄ってから山本さんに会いに来たんだけど、その時にセナ君が跡を付けていた。
本当ならその時点で山本さんの危機感知スキルは反応するはずなんだけど、ここで仕事をしたのが、セナ君のスキルだ。
〈【感知抵抗:中級】スキルだ!! 血から生まれた高貴なスキルッ!
このスキルはあらゆる感知系スキルの成功率を20%下げる……その鬼には危機感知のスキルがあるそうだが、この僕のスキルで相殺してやったんだ!!〉
感知抵抗! そんなのあったね!
「あ、山本さん、危機感知スキルが感知抵抗スキルで抵抗されてたんだって!」
「何それ、そんなスキルあるの? 詳細な効果は?」
「ちょっと待って、僕も持ってるから説明読むよ。
えーと、自身を対象とする感知スキルの成功率を
ちなみに僕は下級の感知抵抗を11個持ってるので、成功率55%減だ。
〈はあっ? お、おいふざけるなよッ!
55%だと!? 有り得ない、上級スキル並じゃないか!!〉
そう言われると凄い気がしてくるなぁ。使ったことないけど。
んん。いや、これもしかして、山本さんが僕に会いに来たのも、この感知抵抗55%が影響したんじゃ……。
「そんな! じゃあ、そいつの攻撃に対しては、私の危機感知が80%しか反応しなかったってこと!?」
〈!? 抵抗無しなら成功率100%だと!?
超級スキル並じゃないか、有り得ない!!!〉
超級スキル並というか、
〈有り得ない……認めない……ッ!! 許されるはずがないッ!!〉
「まぁそれはそれとして、今冒険者の人達が来てるのは、セナ君が教えたから?」
〈知るかッ、冒険者如きにこの僕が口を利いてやる謂れはないッ!! 連中が勝手に見付けたんだろう!!〉
「えー……山本さん、冒険者が来てるのはセナ君とは関係ないんだって」
山本さんにも思い当たる所があったらしい。
「ふうん。なら、その感知抵抗スキル持ちが、他にもいるのかも。今までも、いつの間にか危険度が急に進行する時があったのよ」
「感知抵抗持ちの人が影響してる可能性はあるね」
僕のせいでは無いと思いたい。
あと、一通りの聞き取りが終わったので、まだ騒いでいるセナ君は意識から遮断した。
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