Chapter010:フルーツフォレストの村
193. ◆創世神オメガ・ミグレータ
異世界転移者にして知識神の眷属、
神界に新設された牢獄の視察を終えた創世神オメガ・ミグレータ、知識神ラムダ・チェシャキャットの2柱は、共有スペースのソファに並んで座り、しばらく無言で壁を眺めていた。
「本当にあの大半を、ただの異世界人が成したのですか?」
それは牢獄に拘束された魔王の無残な姿を思い出しての感想だった。
「はい、そうですね。ただの異世界人ではなく、私の眷属の異世界人ですが」
呆然とする
「神と、人ですよ? ……どれだけのことをすれば、その差を覆せるのです」
「魔王討伐時点でのガチャ回数は、無料ガチャ571回に有料ガチャ331,834回で、計332,405回ですね」
「さ、33万……? いえ、それにしても、あれは【ガチャで
他人事のように、と
「状態異常付与スキルも蓄積値+2万数千%となれば、神にすら通るものなのですね。2万年程も生きてきましたが、また新しい情報を得ました」
気を取り直すように、笑って言った。
それを聞いた
想定外だったのは、ヤツアシトッキュウウマの脚の速さ。そして、この期に及んで協力を渋る神の数だった。時間の余裕と「枯らしても良い土地」が予定より増えたことで、ガチャ回数は1.5倍に上り、正面からの殴り合いで人が神を超えるに至ったのだ。
と言ってもステータス差は補正を入れても絶大で、人による攻撃は神に掠り傷を負わせるのが精一杯だった。
捕縛の為にすぐ降臨できるよう待機していた神々も、その魔法の奔流に巻き込まれるのを恐れ、全てが終わるまで見ているしかなかった。
中には腹を抱えて笑った神もいたが、大半は今の
「……もし、その力が私達に向いたらどうするのです」
「何をする想定かは知りませんが、きちんと謝れば、ある程度のことは許してくれますよ」
「ああ、筋肉毛虫ではありませんか。ちょうど良い所に来ましたね」
「あの
なお、この
「復興か? それなら自分より、
「生命神は忙しい時に話しかけると怒りますし、ふわふわ頭とは可能な限り関わりたくないのです」
「何だそれは」
ちなみに、このふわふわ頭と言うのは
「貴方は開拓神でしょう。荒地の開拓の話なら、貴方の専門ではないですか」
間違ってはいないが、釈然としない部分もある。
「仕方ない。聞くだけは聞こう」
それでも諦めて聞く体勢に入った
何の話かと言えば、魔王のせいで不足している霊魂と、
聞けばますます開拓神の領分ではない、と
魔王の権能を受けた者は、肉体/精神/霊魂の全てが焼かれ、消滅する。
大陸の半分以上が被害を受けた以上、大雑把に考えても大陸に暮らしていた半分以上の霊魂が消滅したことになる。
生物や死者の持つ霊魂は、その個体の死後ないし昇天後、転生によって新たな生物の肉体を得る。これを繰り返すことで原動機を回し、世界を成り立たせるためのエネルギーを生み出しているのだが、その霊魂の数が減ったのだから新しく生産する必要ができてしまった。
「霊魂の生産自体は、コストはかかるだろうが、通常通り繁殖で行われるのを待つしか無いだろう。確か、繁殖による出産時に転生待ちの霊魂がなければ、自動的に生産するのではなかったか?」
「その通りです。あの
「なるほどな。竜脈が枯れたからその
「それどころか、マナを吸収して生きていた生物は全て死にました。空白地帯は空白地帯のまま、魔物も植物も繁殖を行うことすらできません」
ガチャに使われた魔力もエネルギーとして回収されたため、直近で世界の運営に問題が生じることはない。が、継続的な収益は減ってしまう。
「だがまあ、問題ないだろう」
「何故そう言えるのです。竜脈が枯れた地は、今後100年は不毛の地となるでしょう。
神代ならばともかく、この時代の100年は大きいですよ。その間、土地を遊ばせておくつもりですか」
むくれた表情で問い返す
「見るが良い。不毛のはずの大地に、少しずつだが人の領域が広がっているだろう」
「……本当ですね。これは?」
「人や魔物は歩いて移り住む。種は風や生物に運ばれ、雨を受けて芽吹く。それが開拓だ」
自分が何の神なのか、判って話を振ったのではなかったか、と
「先程
ラビットフィールドの町は元々が草原を開拓するための町だったので、この手のことにかけては初動が早い。今まで彼の地にはいなかった亜人の移民も見られ、将来的には、技術を学んで地元に持ち帰る者もいるだろう。
「なるほど。理解しました」
溜息と共に首の向きを戻し、
「それで、貴方は先程からずっと、何を書いているのです」
「
「気にせずと言われても……それをどうするのですか?」
「いつも通り
恥ずかしいので破棄しろという
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