175. ドリルツーノ枢機卿
イジョーシャさんが紹介してくれたのは、ドリルツーノさんという人だ。7人いる枢機卿の1人で、聖国内では(数え方によっては)ベスト10に入る地位を持つんだとか。
たぶんマンガとかの影響で、枢機卿というと漠然と「悪の黒幕」みたいなイメージがある。
だけど、実際はそんなことなくて、教皇を選ぶ人? みたいな役職らしい。
教皇の任期は5年、選出方法は枢機卿内での多数決。といっても、今の教皇は数千年連続で再任しているので、真面目に仕事をしているのか疑問なんだけど。
〈元々は7種族から成る7つの
「過半数がドラゴン派閥だから、ドラゴンの中で一番偉い純血ドラゴンが絶対に教皇に選ばれるんですね」
選挙制度として崩壊しているような。
「今から会う人もドラゴンですワン?」
〈ドリルツーノは純血主義の角エルフの家系ですので、ドラゴンの血は1滴も混ざっていませんよ〉
「4人がドラゴン、1人が角エルフですワン。あとの2人は何ですワン?」
〈1人がインテリヒツジ、1人がゴブリンですね〉
「え、ゴブリンが国政に携わってるんですか?」
冒険者ギルドで、ゴブリンは見たら殺せみたいなこと言われたんですけど。
〈彼らは大抵の冒険者より強いので、大きな問題は起きていないようです〉
「強さを証明する機会があった時点で問題のような……」
ラムダ様いわく、今の教皇は7つの
そして、大抵の種族はドラゴンと混血すると、子の種族はドラゴン――種族自認は
だけど、ゴブリンはドラゴンと混血しても子供がゴブリンとして生まれるので、派閥の独立性を保てているわけだ。
〈見た目もステータスもほぼほぼ純血のドラゴンで、思想だけがゴブリンなんですけどね〉
「それで
「その辺の国なら滅ぼせますですワン」
最悪の怪物じゃないんですかね。
〈ゴブリンは他の人族から搾取するのが大好きなので、ある程度の権力を与えておけば、合法的、平和的に搾取するだけですよ〉
「なるほどです」
「それなら安心ですワン」
平和が一番。
枢機卿に謁見するための寄付金額は1000万
本当なら侍祭、助祭、司祭、司教、大司教……と順に会って、順に寄付金を払わないといけないはずなんだけど、一気に数段飛ばしだ。すごい。
「フン……業腹だが、あの亜人モドキからの紹介となると、会わない訳にはいかんからな」
お屋敷の執務室に案内されて顔を合わせ、部屋のドアが閉まった途端、ドリルツーノ枢機卿は苛立ちを隠しもせずにそう言った。
「本日はお忙しい所、お時間をいただいてありがとうございます」
「ありがとうございますですワン」
来客用ソファの後ろの前に立ったまま、揃って頭を下げる。
「
おい、貴様。何と言われて来たのか知らんが、会うのは会ってやった。だが、薄汚い人間がこの私と対等に口を利けると思うなよ……!」
ギリギリと歯軋りの音が聞こえる。
理由は知らないけどドリルツーノ枢機卿はどうやら、人間を毛嫌いしているようだ。
でもこのパターンは前にやったから大丈夫だぞ。
「実は僕、こう見えて人間じゃないんですよ。ステータス見てください」
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▽ステータス
体 力:1.2 魔法力:2.9
攻撃力:2.1 防御力:1.2
敏捷性:0.9 器用度:2.1
精神力:0.8 幸運値:5.3
▽備考
・異世界人
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「む、確かに人間ではない……失礼したな。
ならば敬意を忘れない限り、会話を許可してやろう」
「いえいえ、初見ではよく間違われますので」
馬鹿馬鹿しい線引きだとは思うけど、これで話が進むなら何でもいいや。
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