052. 回すのですわ。ガチャを

 で、今ここ。


 目が覚めたら落盤に囲まれて動けないわ、魔物ロックビーストがその落盤を砕きながら生き残りを探してるわ、けっきょく姫様は死んでるわ。


〈ふむむむ……そんなことがあったのですわね〉


 亡霊になってる分、普通に目の前で死なれるより気分的に楽だけどね。


 他の亡霊は普通に頭から足の先まで霊体(?)になってるけど、姫様だけ何か足の方がにょろにょろっとマンガの幽霊みたくなってるのは、御本人が幽霊に持ってるイメージの影響とかですかね。

 なんというか、ファンシー?


〈脚? これはきっと、死ぬ直前に両脚が千切れてたからですわね〉


 ……思ったよりグロい理由だったな。


「イワァッ!! ジュウウッ!!」


 ガンッ ドゴッ


 っと、そうだ、まだ全然助かってないんだ。

 どうにかここから出て、逃げないと!


〈皆さん、ラヴィは、わたくしのメイドはこちらに来ていませんの?〉

〈来てないス。まだ生きてるのか、そのまま昇天したかっスね〉

〈未練があれば、亡霊になってこっちに来ると思いますよ〉


 亡霊は危機感が無いからなあ!

 今は自分の心配が先!


〈329番さん、ここから出る方法はありますの?〉


 ないです!


〈出たとして、ロックビーストに勝つ方法は?〉


 ないです!


〈では、わたくし達と同じですわね。最後の賭けに出るしかありませんわ。

 ……わたくし達は、負けてしまいましたけれど〉


 賭け?

 何です、方法があるなら聞かせてください!


〈回すのですわ。ガチャを〉


 ……ガチャ?

 今日の分はもう回して……。


〈? 今日の分とは?

 ……いえ、329番さん。今座っている床を見るのですわ。

 わたくし達がいるのは、大結晶層の真上なのです!〉

〈なんだって!?〉

〈た、確かによく見ると宝玉と同じ質感、光沢ですね姫様!〉


 本当だ! 全然気付かなかった!


〈ここで11連ガチャを回すのですわ。

 11連ならば★★★☆☆スーパーレア以上が1枠確定。

 運が良ければ、不死系の★★★★★レジェンドスキルが出て、爆死を免れます!

 他にも戦闘に役立つスキルが出れば……〉


 え! 11連ってSRエスアール確定なんですか!?

 やった、これで僕も上位のスキルを……!


〈テロっち、この前11連回しても全部ノーマルじゃなかったか?〉

〈ああ、この町に着いた日に回した時ね〉


 …………そうだった! ああああ、糞ガチャ!


〈どういうことですの?

 そういえば、329番さんの回想でも、毎日ガチャを回しているような話でしたけど、あれは一体……?〉

〈姫様、こいつは何というか、女神様の加護のような物で、ガチャを回してもノーマルしか出ないんです〉

〈ひゃっ、えええ! 女神様の加護ですの!!?〉


 また話が脱線してるなぁ。


〈テロっち、とりあえず回してみたらどうだ?〉


 そうですね……。


 僕はガチャメニューを開き、11連ガチャのボタンがアクティブに明るくなっていることを確認した。

 11連ガチャに必要な3000個の宝石の山は前に見たけど、あれもとんでもない量だったもんな。

 それ以上の財宝が今、僕の足元にあるのか……何だか不思議な気分だ。


 えい。ぽちっと。


『ピロリッ、ガチャッ、スタートッ!!』


 お馴染みのチープなガチャ演出。

 11個の木の扉が並び、あっさり開かれ、結果が表示される。


 【魔封耐性:下級】。

 【攻撃力上昇:下級】。

 【電撃耐性:下級】。

 【混乱付与:下級】。

 【下級回復薬】。

 【魔封耐性:下級】。

 【体力上昇:下級】。

 【弓:竹の弓】。

 【幸運値上昇:下級】。

 【暗闇付与:下級】。

 【魅了付与:下級】。


〈ほ、本当に全部★☆☆☆☆ノーマルですわ……!〉


 とはいえ、結果を見てもまったく打開策が浮かばない。


「イワッ! ジュッ!」


 ゴガッ ドゴッ


 さっきより離れた場所から、ロックビーストの暴れる音が聞こえる。

 僕の居場所は特定できてないようだけど、偶然で掘り当てられるのも時間の問題だ。


 ううん。仕方ないな。これは本当に、仕方ないやつだ。


 とりあえず時間の許す限り、回せるだけ回してみるか……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る