057. どうしても、今すぐ気になるから未練なんだよ

 なんか町に着くと安心したのか、急にお腹が空いてきたな。


〈わかりますわー、冒険中ってあんまり気になりませんけど、家に帰ると急にお腹が空くんですわよね〉


 姫様も思いますか。

 こっちくるまで、ガチャアイテムの携帯糧食を前半4日4個、ウサギの毛皮(ドロップアイテムに賞味期限はないらしい)を後半4日で4枚、あと栄養バランスのため手持ちの薬草と、適当に採った木の実(大体9~10個採ったら1個ドロップする)を食べて、それだけでお腹一杯に感じてた。

 けど、そんな食事で足りるわけがない。


〈姫様は仕方ないですけど、少年も町から出たことなかったのか?〉


 とプレタさん。どういうことです。


〈自然の中は周囲のマナが多いから、それほど食事は必要ないんだよ。

 鉱山でもあんまり食べてなかっただろ?〉


 え、マナ? が多いと食事は必要ない?

 何それ怖い。


 よくよく考えると、鉱山でも1日2食、パンの欠片と薄いスープだけという、肉体労働者とは思えない食事内容だったけど、特に空腹感はなかったな……。


〈へえ、人里ではマナが少ないんですの?〉

〈元々マナが少ない上に、人が多いから取り合いになるんだそうですよ。

 王都辺りだと更にマナが少なくなるから、食費もかかるんじゃないですかね?〉


 マナが何なのかはわからないけど、翻訳機能の効果から考えると、何となく僕のイメージにあるやつで良いんだろうか。

 大気中の魔力とかそういうやつ。


 それより、王都にいくと食費が高くなるのか……。

 ちょっと先に冒険者ギルドでお金を稼いだ方がいいかな。

 今日はもう昼も過ぎちゃったし、一晩野宿でもして、明日の朝イチで顔出してみよう。


〈おいおい、それよりまずは俺の家だろ!〉


 と、モッコイさんが僕の計画を遮る。

 明日で良くないですか?


〈まだ日も高いじゃねーか。

 ちょっと行って顔見てくるだけだぜ?〉


 えー。でもなぁ。


 未練がなくなったら、モッコイさん昇天するんでしょ。たぶんですけど。


〈ゴスゴス……何だお前、まさか寂しいのか?〉


 …………まぁ正直そうですね。

 短い付き合いとは言え、あっさりお別れというのも、ちょっと。


〈俺だって、もうしばらくこっちでお前らと遊んでても良いとは思うけどな。

 それでも、どうしても、今すぐ気になるから未練なんだよ〉


 わかりますよ。

 でも、何かこう、あっさりし過ぎでは? という……。

 お別れパーティーとかしません?


〈少年、聞いてやんなよ。

 未練ってのは、アタシらにとって大事な物だと思うんだ。

 長引かせると良くないことが起きる気もするし〉

〈行きましょう、モッコイさんのお家に!

 わたくし、お友達の家に遊びにいくのも夢だったんですわ!〉


 ……3対1なら仕方ないですね。

 じゃあ、これから行きますか。案内お願いします。


〈ゴースゴスゴス……ありがとな、テロっち!〉


 あと、さっきスルーしましたけど、その「ゴスゴス」っての何なんです?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る