009. 本気を出せば、角が生えた程度の小動物に負ける僕達ではない

「この世界のモンスター? 動物? は、安易に角を追加する方向なのかな」 


 角の生えたウサギをトレッキングポールでグサグサ突き殺すと、3匹目で毛皮をドロップした。

 人間の生皮とかドロップしなくて本当に良かったね。と、口に出して言ったら、多分山本さんに嫌われるから、何も言わない。

 僕は詳しいんだ。中学、高校、似たような経験したことあるからな。ドロップの方じゃなくて、異常者扱いされて排斥された方ね。


「この分だと、人間にも角が生えてたりするかもね」

「それ絶対、僕ら角無しで差別されるやつじゃん。マジでこの世界、糞じゃない要素がないな……」


 単なる高校生とは言え、本気を出せば、角が生えた程度の小動物に負ける僕達ではない。

 ウサギの死体も消滅するまでは普通にグロいというか、動物虐待感があるんだけど、さっきまで人間同族の爆死風景に囲まれてグロ耐性、暴力耐性を付けた山本さんには、何ということも無いらしい。

 実際にそんなスキルが生えたわけじゃないけど。



 その後しばらく進んで昼食休憩。元の世界から持ち込んだお弁当を食べながら、2人してウサギの毛皮をあれこれ弄ってみた。

 いや、お弁当食べてるとね、そりゃ元の世界のこと思い出すよね。山本さんのお弁当は、お母さんが作ってくれたんだって。

 泣いちゃいそうになってるし、無理矢理でも話逸らすよね。


 毛皮を頭に被ったり、首に巻いたり、まさかと思って武器みたいに振り回してみたりしたけど、どうもこれは装備品ではないらしい。


「売却アイテムか素材辺りね」


 売却アイテムって、ゲームだと「でもこれ実は後で納品クエストとか生産素材とかに使うのでは……?」と思って売らずに取っておくんだけど、何にも使わないままエンディングになるよね。


「人里で売ったら、生活費の足しになるかな?」

「どうかしら? この程度なら子供でも狩れそうだし、供給過多だったりするかも。今のところ危険度生存確率に変化は無いし、駄目元で装備品に加工してみても良いんじゃない」


 と言っても、毛皮って何かなめす? とかしないと駄目なんじゃなかったっけ。

 そのまま使うにも、刃物くらいは鞄に入ってるけど、せめて針と糸でもないと、何ともなぁ。


「焼いたら食べられないかな? ライター持ってるから、焚火は作れるよ」

「ああ、いいんじゃない? 鶏皮みたいなものね」

「肉とかドロップしたら、そっち食べたいけど」


 結局、それから通り道で何匹かウサギを狩ったりしたけれど、運なのか固定なのか、ドロップ品は毛皮だけだった。


 焼いて食べて良し、寝床にして良し。

 ウサギの毛皮は優良アイテムだと思うよ。

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