043. 少年、寝てる場合じゃないよ!

 ドパパパパパパパパパンッ

 ドパパパパパパパパパパンッ


 うう、うるさい……。

 爆竹みたいな耳障りな音で目が覚めた。


〈お、やっと起きたか!〉

〈少年、寝てる場合じゃないよ! まずは何でも良いからメニューを開きな!〉


 僕に憑いている亡霊達が耳元で騒ぎ立てる。

 真っ暗で何も見えない(亡霊の人達だけは見えるけど)ので、言われた通りにステータスメニューを開いた。

 ウィンドウから薄ぼんやりとした光が漏れて、暗闇よりはマシになる。


 惨憺たるステータス数値が並んでいたので、見なかったことにして装備品のタブを開く。

 まあ、装備は全部空欄だ。仮にも(?)奴隷の身だし、持ち物は全部官吏の人に預けてある。

 一応、今月一杯は売らない約束だから、それまでに大結晶層とやらが見付かれば回収のメはある、はず。


〈おいテロっち、まだ寝惚けてんのか?

 緊急事態の自覚はあるか?〉


 亡霊のお兄さん、モッコイさんが目の前で、というか頭の中を貫通するように手を振っている。


 怖いわ! 目も覚めたよ!


「そうだ、何か魔物に襲われて、床が抜けて……」


〈今はその床の残骸に埋もれてる所だよ〉

〈で、さっきの魔物が床の残骸を壊しながら、こっちに向かってきてるとこね〉


 亡霊のお姉さん、プレタさんの言葉で、「イワァッ!」だの「ジュウッ!」だのいう鳴き声や、地響きを伴う破砕音がようやく意識出来るようになってきた。


 ……間違いなく緊急事態だね!

 教えてくれてありがとう!!


 僕よくこんな状況で寝てたな!!


〈本当だよ……お前が死んだら、俺達多分このまま昇天するんだぞ〉


 それはそれで良いのでは?

 いや、僕は死にたくないし、死ぬ気もないけど!


 とそこへ、岩の隙間からモヤモヤした塊がスーッと染み出て来て、


〈329番さん? ご無事でしたのね!〉


 僕の目の前で人の形になった。

 うわあ。


〈あっ、姫様!〉

〈姫様、ご無沙汰してます!〉

〈あら、お2人はうちの町の兵士の方?

 女性のかたはプレタさんと仰ったかしら、以前に護衛についていただきましたわね!〉

〈名前まで覚えて頂いていたとは……! 感激です!!〉

〈お2人はどうしてこんな所にいらっしゃるの?〉

〈はい、実はですね姫様……〉

 

 亡霊が増えて、何か盛り上がり始めた。


 いや、緊急事態でしょ。

 死んでる人はこういう時に緊張感がないなあ!


 とはいえ、僕も正直、まだちょっと頭が混乱気味だ。


 混乱はロクなことにならない。それはもう、骨身に染みた。

 早急に、精神を安定させないといけない。


 危機が迫ってるとはいえ、音の位置からしてすぐに死ぬような話でもないだろう。

 僕は瞑想がてら、ここしばらくの出来事を頭の中で整理することにした。

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