042. シジューサンワ=デ=バクシースルの名に懸けて!

「ガチャですの?」

「ええ。魔晶玉3000個を使った、11連ガチャでございます」


 11連ガチャ。

 10回分の魔晶玉、宝玉を捧げて、11回分のガチャを回す至高の祈り。


「11連ガチャでしたら…」

★★★☆☆スーパーレア以上が1枠確定、でしたわね」

「はい、その通りでございます」


 本来は0.16%しか出ない高位スキルが、確実に1枠出てくるのも、11連ガチャの特徴ですわ。

 ★★★★☆エピックレアまでのスキルは、単に効果の大小しか違いがありませんが……。


「……★★★★★レジェンドレアの、それも不死系・・・スキルが出れば」


「慧眼でございます、お嬢様。そうすれば必ず、」


 99%の確率で☆☆☆☆☆ヘルランク【爆死】が当たるガチャで生き残るための、人の持つ唯一の方法。

 それが不死系スキル。【不死】【確率自動蘇生】【九つの命】と言った、死を回避する伝説級のスキルなのですわ。

 今と違って、ガチャが当たり前に回されていた古代の記録に記されていた、現代では名前が残るそれら。


 絶対に死なない身体になる【不死】、幸運値依存で死亡時に蘇る【確率自動蘇生】、9回までは死んでも蘇る【九つの命】。

 どう見ても【不死】が上位互換に見えますわね。


 【九つの命】は11連ガチャだと2回は自力でノーマル以上を引かないと差し引きで死にますし、【確率自動蘇生】は幸運に幸運を重ねなければなりませんが……それでも、可能性はゼロではないのですわ。


「では、まずはわたくしが回しますわね」


 まあ、このままではわたくしは死ぬのです。

 たとえ不死系スキルが出なくとも、一撃でロックビーストを葬れるようなスキルが出れば、一か八か爆死前に試してみることも出来ますものね。


「お、お嬢様!? おかしなことを仰らないでくださいませ!

 まずは私が回し、必ずお嬢様をお助けいたします!」

「いえ、わたくしはもう助かりませんもの」

「大丈夫です! 私が! お助けいたします!」


 ううん。

 ラヴィは、こういう時にわたくしの言うことを聞かないのが悪い所ですわね。

 わたくしの脚が千切れていなくとも、ここはわたくしがガチャを回すのが当然ですのに。


 このままでは埒が明きませんわ。


「そうね、ラヴィ。では一旦落ち着いて、話し合いましょう」

「……承知いたしました」


 わたくしは声を掛けながらガチャメニューを操作し、ううん、視界が暗くて難しいですわね。


「ねえ、ラヴィ」

「はい、お嬢様」


 ガチャメニューは薄く青い光を放ち、完全に尽きた魔法の代わりに暗がりを照らしています。


「わたくしには、わたくしのメイドを守る義務がありますの」

「はい、私もいつも、お嬢様のお陰で幸せに暮らせております」


 ああ、確かに11連ガチャのボタンが明るくなっていますわ。

 ここはラヴィの言う通り、魔晶玉3000個を優に越える魔晶が固まった、大結晶層なのですわね。


「お父様や、ご先祖様達から引き継いだ、バクシースルの家名にかけて」


 わたくしは迷わず11連ガチャのボタンを押しました。


「そしてこの私、シジューサンワ=デ=バクシースルの名に懸けて!」


『ピロリッ、ガチャッ、スタートッ!!』

『ピロリッ、ガチャッ、スタートッ!!』


 重なって聞こえる2つの声。


「まさかラヴィ、貴女……」

「お嬢様……ッ! 回して、しまわれたのですね」


 隙をついて先に回そうと思っていたのに、ラヴィも同時にガチャを・・・・・・・回してしまっていた・・・・・・・・・なんて。


「……ふふっ。これで22・・連ガチャね。

 これなら、きっと1つは当たるわ」


 ふう。最後まで、上手く行きませんわね。


 私の目の前のウィンドウ上のガチャ演出には、11の扉が並んでいました。

 そして、その扉の色は……。

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