098. 嫌だよ、お金払って変な人達と3日も過ごすの
スッ……と全員の視線がこちらを向き。
スッ……と元に戻る。
何これ。変に絡まれるよりドキドキするんだけど。
〈傭兵なんてゴロツキ崩れのイメェジしかなかったメェが、案外
〈パンフレットによりますと、ここの傭兵は商国の半常備軍らしいですわね。オフシーズンのダブルワークとして登録が推奨されているらしいですわ〉
〈……情報量が多いメェ。俺も後で読ませてくれメェ〉
何はともあれ、傭兵の臨時雇いだ。
傭兵とでもパーティを組んで冒険者仕事をこなせば、メン募の「リーダー未経験の初心者です」という部分を取っ払うことができる。それで多少はマシな文面になるはず。
「すみません。傭兵を雇いたい時ってここで良いですか?」
「はい、こちらで承っております」
受付嬢の人も国家公務員なので、冒険者ギルドの人より丁寧な感じがする。
この国の人は未就業児童以外は全員国家公務員だけども。
「期間と人数はお決まりですか?」
「えぇと、明日から3日間、人数は3人って大丈夫です?」
「はい、1人~10人程度までは予約なしで対応可能です。それ以上になると、事前にご予約が必要です」
あ、少人数は普通に行けるんだ。良かった。
「前衛・後衛のポジション、魔法技能、専門技能、性別、種族など、ご希望はございますか?
特に無ければ、目的に合わせてこちらで見繕いますが」
誰か何かあります?
〈ダンジョンに潜る訳でもないなら、前衛後衛の比率くらいかメェ?〉
じゃあそれで。
「冒険者初心者の剣士なんですが、パーティを組んでくれる人を雇いたいです。
僕が一応前衛なので、前衛1人、後衛2人で。他の希望は特にないです」
「では、ご予算からお選びすることも可能ですよ。新人冒険者用の依頼でしたら、3人3日間で1500
〈1日500zですわね〉
〈結構するメェ……黒字を出すのは難しいメェ〉
だねぇ。今回は経験を積みたいだけだし、多少の赤字は覚悟しよう。
最低価格だとやばい人が来ても文句を言え無さそうなので、3人3日分を2000
〈3日間で仲良くなれば、お友達として冒険に付き合ってくれるかもしれませんわよ〉
姫様がキャバ嬢に入れあげたお客さんみたいなことを言っているけど、そんな都合の良いことないと思うなぁ。
「ほう。冒険者の臨時メンバーかね」
と、そこへ背後から野太い声がかかると共に、僕の顔の横ににゅっと知らない人の顔が突き出て来た。
〈きゃあ! わ、よ、傭兵の方ですの!? びっくりしましたわ~!〉
僕は顔が急に出てくるのとか慣れてるから全然ですよ。
顔が傷だらけのゴツいお爺さんが出て来てびっくりする気持ちはわかりますが、半透明の女の子が自分のお腹を突き抜けてくるのも、慣れない内は心臓に悪いんですよ。
「ヒザニヤさん。接客中ですので、後にしてください」
受付嬢の人は困り顔でゴツいお爺さんを窘めるが、ゴツいお爺さんの方は何処吹く風といった様子。
「面白そうな仕事ではないかね。報酬は多少減らしても良いから、儂を入れてくれ」
「多少減らしたって、ヒザニヤさんが入ったら、あとは素行不良でクレーム常習割引のド新人2人でもカツカツですよ……」
「あ、条件追加で申し訳ないんですが、素行不良でクレーム常習割引の人はちょっと」
「はい、承知しております。この老兵にも自重させますので」
「何だつまらん」
嫌だよ、お金払って変な人達と3日も過ごすの。
ひとまず雇用契約申し込みは終わり、明日の朝にまたここ、傭兵斡旋所の受付に来るように言われて、僕は宿に戻った。
ちょっと不安は残るけど。
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