Chapter004:王都ハネシタ

065. 王都の石畳をひた走る

「もう少しですよ!! 頑張ってください!!」

〈あっ、正面玄関が見えましたわ!!〉

〈ゴスゴスゴスゴス……王都を血と闇に沈めたいでゴス……〉


 王都の石畳をひた走る。


「すみませーん!! 通してくださいっ、すみませんっ!!」

〈ゴスゴスゴスゴスゴス……教会……神に反逆を………聖職者に血の裁きを与えるでゴス……〉

〈プレタさん! 深呼吸、深呼吸ですわ!!〉


 驚いてこちらを振り向く都会ッ子を、観光客を、家族連れを、聖職者を、縫うようにかわして、


「うわっ危ない!」

「あ、こらっ! ここは神聖なる場所ですよ!」

「誰か、その少年を捕まえなさい!」

〈緊急事態なのですわー!!〉

「ごめんなさい、今だけ通してください!!」

〈ゴスゴス……イーヴィルヴィルヴィル………ゴスゴス……〉

〈きゃあ~!! 「イーヴィル」が入ってきましたわよ!〉


 滑り込みッ!! 入った!!


 2人の亡霊を―――もとい、1人の亡霊と1人のほぼイヴィルゴーストを引き連れた僕は、どうにか王都大聖堂の中へ駆け込んだ。


〈ゴスゴ…………はっ、こ、ここはあの、王都大聖堂……?〉

〈プレタさん! 正気に戻りましたのね!!〉


 良かったぁ!

 間に合ったんですね!!

 何か黒っぽいモヤモヤとか、髪が逆立ったりとか、目が赤く光ってたりが治ってる!!


〈姫様……ありがとうございます。少年も、本当にありがとう。

 イヴィルゴーストになりかけていた時のことは、薄らと記憶に残ってる。迷惑かけたね〉


 いえいえ、なんのなんの。

 あ、もう霊体がキラキラしてますね!

 足の方から消えてってますよ!


〈憧れだった大聖堂にも来れて、悔いはないよ。

 アタシはもう逝く。

 少年、姫様のことを宜しく〉


 はい、お任せください。


〈姫様も、こいつを宜しくお願いします〉

〈もちろんですわ!〉

〈それじゃね。さよなら!〉

〈さよならですわー!〉

「さようなら! 今までありがとうございました!」


 その日、僕に憑いた2人目の亡霊、プレタさんは昇天した。

 日付は突風の月/14日、彼女が亡くなってから35日後のことだ。


 1つの使命をやり遂げた僕は、満足して大聖堂の床に寝転がる。

 昨日の深夜に王都についたら門が閉まってて、そのまま門の前で仮眠しながら場所取りして。

 門が開いて手続きしたら、そのままここまで走り通しだったしなぁ。

 疲れた……少し寝たい。


「走り回ったり騒いだり! ここを何処だと思っているのですか!」

「取り押さえろっ!」

〈ああっ、329番さん!!〉


 そうして、僕は聖職者の人達に引き摺られていった。

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