004. これは攻撃とかじゃない、ガチャ爆死よ
「……ヒェッ」
しゃっくりのような声がした方を見ると、何人かの生き残りが立っていた。
生き残り。つまり、それ以外の全員が爆死したということだ。
僕は慌ててガチャメニューを閉じると、草の上に身を伏せながら呼び掛けた。
「生き残ってる人! 敵襲かもしれません、身を隠してください!」
異世界転移の草原パターン、よくある展開は盗賊や軍隊に巻き込まれる強制イベント。
外から見ている人がいれば、僕らは突然に虚空から草原に現れた謎の集団――考えてみれば、怪しすぎるわ。
相手が盗賊だろうが軍隊だろうが、先制攻撃で頭に爆発魔法を撃たれたって、全く不思議はない。
「んん? 皆さん急に寝転がってどうしたんかの?」
呑気なおじいさんの声が聞こえるが、ちょっと呑気すぎるでしょ!
「死んだふり! 死んだふりして!」
匍匐前進で声の方に近寄りながら小声で呼び掛けるが、これたぶん聞こえてないな!
でも大声出すわけにもいかないし、引き摺り倒してでも……!
「うっ……おげぇぇぇぇえ………ッ」
と、今度は近くからゲロを吐くような
「ごぽごぽごぽごぽ……」
完全に吐いてるし、割と近いし、かかりそうで嫌なんだけど、そもそも既に爆散した人達の血や破片とかが……あれ?
そういえば、あれだけの人が死んだのに、
「……うぷっ……ま、待っで。これは、攻撃じゃな、ぶ、うぼぉぇぇぇぇぇ………ッ」
嘔吐と共に何かを訴える声に、僕は恐る恐る顔を上げる。
1メートル程先に、出す物を出し切って尚、胃液の泡を飛ばしている女の子がいた。
他校の制服を着ている、たぶん女子高生の人だ。
「攻撃じゃない、って、どういうことです?」
僕は中腰まで立ち上がり、吐瀉物から少し身を引きつつ尋ねた。
先程のおじいさんも、こちらに気付いたのか「皆さん何処へ行ったんかの?」と首を傾げながら近寄って来る。
んん? あれ、本当に何処にいったんだ?
突然の爆死、死体の消失、呑気なおじいさん、吐瀉物の異臭、怒涛の如く押し寄せるあれこれ。
混乱する僕を現実に引き戻したのは、ゲロから復帰した女の子の言葉だった。
「これは攻撃とかじゃない」
彼女は涙声で続ける。
「ガチャ爆死よ」
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