027. まさか、御領主様の宝玉に手をつけたわけ……?

「で、話戻るけど、その靴はどしたん?」


 わちゃわちゃしたのが一段落した所で、急に話が戻る。


「さっきガチャで当てたんですよ」


 気付かれた以上はと、僕は素直に種を明かす。


「はぁ?」

〈っスよね〉


 兵士のお姉さんは胡乱げな目で問い返してきた。


「ガチャです。僕、とある事情で毎日1回無料でガチャを回せて、おまけに爆死もしないんですよ」


 まあ、隠すことでもない。

 これから目的地まで、今日、明日、明後日の残り3日間は一緒に過ごす相手だし。


〈毎日無料? 爆死もしない?

 何だそりゃ。いや、見てたけど、けどな? は?〉


 ガチャを回す時はなるべく他人に見られないよう、隠れて回していたんだけど、別に知られて困ることではない。

 ただ、毎日ガチャを回してるのを知られると、お金持ちだと誤解されて強盗に襲われかねない……ってのが隠れてガチャを回してた理由なんだけど、毎日一緒に過ごしている兵士の人達は、僕が大量の宝石を抱えてないことくらいは知ってるはずだ。


 だから問題ないと思ったんだけど。


「……それマジで言ってる? 無料でガチャって少年、まさか、御領主様の宝玉に手をつけたわけ……?」

「あっ、違います違います!」


 え! あ、そういう勘違いになるのか!


〈そりゃそう思うスよね。

 なぁテロリスト君、俺達がどれだけのガチャを見てきて、どれだけの宝玉が使われるのを見てきたと思う?

 どういう事情か知らんけど、ある程度は説明した方がいいぜ。

 プレタさん同僚にすら容赦しないからな、適当なこと言って疑われたら、領主様に突き出されるぞ〉


 僕は慌てて女神から無料ガチャの加護を受けていることと、ノーマルしか出ない呪いのことを、自分のスキル一覧を見せながら説明する。異世界転移のことや、直接女神に会って呪われたことは省いて。

 説明が終わると、相手は急に真面目な顔になって、こんなことを言った。


「……これ、他の人には話した? アタシ以外に誰が知ってる?」

「特に誰かに話したことはないですね。一応、地元が一緒の人が1人だけ知ってます」

〈俺も知ってるよ〉

「誰にも言っちゃ駄目だよ。誰から話が広まるか判らない。貴族に知られても、教会に知られても、絶対にロクなことにならない」

〈俺も聞いてるスよ〉


 そういうものか、と僕は素直に頷いた。



 全6日間予定の護衛の旅は、今日で4日目。

 僕達はまだ日が高い内に、今日の宿泊場所となる村に到着した。

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