159. 昼から居酒屋でお疲れ様の乾杯
二本松さんの叔父さん達と一緒に国境の壁を越え、野宿しながら2日歩いて辿り着いた近くの町で、倒れ込むように1泊。
翌日、昼から居酒屋でお疲れ様の乾杯をした。
蝙翼人のおじさん達はつい昨日まで監禁されていた身なので、当然現金は持っていない。ので、宿も飲食費も僕の支払いだ。
随分恐縮されてしまったけど、流石にここで放り出すわけにもいかないし、この後も皆さんには魔王情報を提供して貰わらないといけない。
遠慮しないでください、と言った所、二本松さんの叔父さんの従兄の人は、遠慮なくお酒やおつまみを大量に頼んでしまった。社交辞令と言うのは難しいなぁ。
お酒の飲めない僕とコレットさんは、芋を刻んで茹でたやつ(芋を刻んで茹でた味がする)をモソモソと食べるばかりだ。おつまみ系って、素材の味しかしない感じのメニューしかないのかな……。
あ、メニューの最後の方にパフェがある。これ2人分頼もう。
この世界に転移してからそろそろ1年。全体的にやる気のない料理文化についても、米と魚とお菓子類は結構信用できることが、経験上わかっている。
「おう、兄ちゃんも飲め飲め! 今日は祝いと追悼の席だ!」
「すみません。地元の法律だと、僕まだお酒飲めないんですよ」
「ああ? 生意気言いやがって、俺の酒が飲めねえのか!」
「それ僕の払いのお酒なんですよねぇ」
酔っ払った二本松さんの叔父さんの従兄の人は、二本松さんの伯母さんの夫の兄の人に拳骨を落とされて大人しくなった。
キリが良いので本題に入る。
「それで、魔王の話なんですけど」
「そうですな。まずは魔王がどのような存在なのか、お聞かせしましょう」
二本松さんの叔父さんが言うには、魔王というのは女神や知識神と同じ24大神の1柱で、同じ神を殺したか何かして、神々の手で封印されていたらしい。
しかし今回その封印が解け、魔王は封印されていたカタバラ商国を灰にした。
このままでは大陸全体が滅ぼされてしまうのも時間の問題だ、という話なんだけど。
「どうして神様が対応しないんですかね」
魔王と女神が同格なら、地上で暴れる魔王に対し、女神も地上に降りて来て倒してくれたら良いと思うんだけど。
国単位で焼き尽くすような相手を、人の身でどうにか出来るとは思えない。
「知識神ラムダ様によれば、魔王との戦いでこれ以上神々の数が減れば、いずれにせよ世界は滅んでしまうとのことですな」
二本松さんの叔父さんはそう答えた。なるほど。
「それで、死んでも良い下請けを使うってことですか。
理由を聞くとあまり良い気分はしませんね……」
話は判らないでもないけど、完全に捨て駒扱いだもんね。
叔父さんも、ちょっとバツの悪そうな顔をしている。別に叔父さん自身は悪くないし、たぶん叔父さんの信仰する知識神もそこまで悪くないとは思うんだけど、せめてもう少し何とかならなかったものかな。
「えぇと、当時はどうやって魔王を封印したんでしょう。何か罠に嵌めたとかですかね」
「記録に拠れば、24大神の内でも戦の得意な神々が集まって
「それって、人の力じゃどうにもならないやつじゃないですか?」
捨て駒どころの話じゃなかったぞ?
「わふ? お兄さん、天井に何かありますですワン?」
思わず天井を仰いでしまった視線を無理やり引き戻す。
苺パフェを食べ終わったコレットさんは、口の周りの毛をクリームだらけにしていたので、紙ナプキンで拭っておいた。
これ、叔父さんはどんな顔で言ってるんだろうか。
と、叔父さんの方を見てみれば……意外にも先程のバツの悪そうな顔ではなく。
今度は多少なりと笑みを含んだ表情をしていた。ちょっと苦笑っぽいけれど。
叔父さんは言う。
「ラムダ様は、あなたなら魔王に対抗できる可能性があると仰っていました」
そしてこう続けた。
「我が甥、天道からは、あなたに我が一族の秘伝についてもお伝えするように言われております。私もそれには賛成です。
―――そして昨晩、ラムダ様からも、その様にお告げがありましてな」
そういう訳で、僕はその秘伝とやらを教えていただくために、二本松家の御屋敷の跡地に向かうことにした。
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