第114話 お楽しみは後日

 うーん、砂津波、砂津波。

 おっと。

 掛かってきたオークをバールで仕留めた。

 俺は現在、弥衣やえを連れて、綺羅々きららと獣のごった煮に来てる。


 砂津波は弥衣やえに任せればいいか。

 いや、俺が考えないと。

 なぜって、パーティリーダーだからだ。

 腐っても海老だ。

 あれっ、鮭だったかな。


「心ここにあらずね」


 綺羅々きららの咎めるような目つき。


「悪かったよ。ちょっとした油断がダンジョンでは命取りだ」

「分かっていればいい」


 でもオークぐらいだと本気を出すとスプラッタだ。

 片手間ぐらいがちょうどいい。


 オークを倒したので解体してからの休憩だ。

 俺は休む必要はないが、綺羅々きららは病気なのでいたわらなきゃな。


 休憩の間、真紀真紀まきまき綺羅々きららチャンネルを見る。

 今の俺達がいる様子を配信してる。


【チアフルだっけ、綺羅々きららちゃんの味方になって、あのおっさんを退治してくれたらなぁ】

【あのおっさんのことは言うな】

綺羅々きららちゃん、負けないで、応援してる】

【チアフル、どこかで見た気がするんだ】

【射手と前衛のペアなんて珍しくないだろう】

【まあそうなんだが】

【バールを使っているやつは結構いるぜ。最初は高い武器買えないからな。それでそれに慣れちまうと、ランクが上がってもそのままだ】

【仮面は誰も突っ込まないのか】

【ガスマスクしている奴もいる】

【顔に傷があるやつは仮面しているのが多い】

【仮面も多数いるってことだな】

【そうそう、ありふれてる】


『みんな、ポーションの支援ありがとう。私、頑張るから』


 綺羅々きららが配信で呼び掛けている。


【もっとポーション送るよ】

【ポーションは送れないけど頑張って】

【明けない夜はない。がんば】

【応援してます】


『みんなありがと』


「そろそろ次行こうか」

「そうね」

「賛成」


 次のモンスターは猿だって、アイアンモンキーの悪夢がよみがえる。

 あいつらの糞攻撃には参ったよな。

 弥衣やえもそう思ったのか、先手必勝とばかりにボウガンを撃つ。

 矢は猿のモンスターの足に深々と刺さった。


「ギャキー」


 猿のモンスターが悲鳴を上げる。

 綺羅々きららが詰め寄り、大剣で止めを刺した。


 ええと、こいつの名前は、シルバーモンキー。

 群れで行動するとモンスター図鑑に書いてある。


 それがフラグだったのか、シルバーモンキーが次々に現れた。

 俺はこのぐらいどうと言うこともない。


「うらぁぁ!!!」


 俺は雄叫びを上げた。

 固まるシルバーモンキー達。


 綺羅々きらら弥衣やえが次々に討ち取った。


【チアフルの男、やるな。殺気でモンスターをビビらせたぞ】

【もしかしてAランクか】

【該当者は見当たらないが、目立ちたくない冒険者も少なくない】


 解体がめんどくさい。

 アイテム鞄を使いたいが、これ使うと身バレする危険がある。

 皮を剥ぐ作業に3時間ぐらい掛かってしまった。


 今日は終りだな。

 討伐が終わった綺羅々きららをマッサージしてやる。

 嬌声を流したのは言うまでもない。


 俺のチャンネルのコメントを見る。


【あー、くそっ】

【ほんと胸糞悪い】

【警察はまだか】

【はやく場所を特定しろよ】

綺羅々きららちゃんが場所を打ち明けてくれれば】

【おっさん氏ね】

【あー、もう】


「お前らに朗報だ。やがて、さっきの動画の画像を流すぞ。モザイク一切なしだ」


【それはまずいだろ】

【おっさんならやってくれる】

【そんなことされたら綺羅々きららちゃんが街を歩けなくなる】

【絶対に阻止だ】

【警察通報祭りだ。証拠映像がおっさんの手元にあれば立件できる】

【普通に考えて消すだろ】

【いやどこかに隠すとみたね】


 マッサージを終えて家でくつろいでいたら、警察がきた。

 もちろんマッサージ動画を見せてやった。


「あんたたちも人気商売なのは分かるけど、紛らわしい動画は困る」

「気に食わなければ、訴えてくれてもいいんだぜ」

「法を犯してないのにそんなことはできない。とにかく紛らわしいのは困る」


 そう言って警察が帰っていった。

 なぜだという声でコメントが溢れるんだろうな。

 暴露する日が待ち遠しい。

 ただのマッサージだと知ったらあいつらどんな顔をするかな。

 配信では文字のコメントだけで顔が見えないのが残念だ。

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