第76話 養子

 4階層は特に問題なかった。

 ただダンジョンが草原のフィールドに変わっただけだ。

 見晴らしがよくてオークの増援がすぐに集まって来る。

 まあそれだけだ。


【ボウガンこんなに強かったか?】

【魔鉄製だからな。鉄の何倍も強い】

【下手な拳銃より威力があるか】

【加えてミスリルメッキだ。矢が硬くなっている】


「オークって2メートルぐらいのガタイの良い奴だよね。特殊能力とかないの?」


【上位種なら持っているはず】

【あまり強力なのはないな。オークミスリルナイト辺りだと身体強化ぐらいかな】


「シロガネにモグモグされた奴ね。強そうじゃなかった」


【まあBランクだから】

【いやミスリルの鎧込みでBランクだから、実際はCランクだろう】


「シロガネは物ともしてなかったな」


【そうそう、攻略法があればランクはあてにならない】

【オーク強いのになぁ】



 ボス部屋の扉もあっさり見つかり、ボスはばん馬より大きい馬に乗ったオークだった。

 槍持ちだが関係ない。

 貫通矢の敵じゃない。

 あっさり仕留められた。


【一撃で終りか】

【馬乗ってても矢には敵わない】

【横移動ができない分弱いかも】

【相性の問題だな】


「このダンジョン俺は要らないのか」


【疎外感を感じているのか】

【一緒に見物してようぜ】


「そうするよ」


 5階層も草原フィールド。

 ただ、剣を持ったオークがやたら多い。

 中には矢を剣で叩き落とした剛の者もいたが、シロガネに喉笛をやられてあっさり死んだ。


【わお、シロガネ強い。あいつオークファイターじゃなかったか】

【そうだな。でも上位種じゃない】

【ザコオークには変わりない】


 ボスは剣豪オーク。

 居合の構えをした。


 矢を放つと剣がきらめき、全ての矢が地に落ちた。


【マスターオークだな。上位種だ】

【あんま強そうに見えないけど】

【魔法すら斬られるんだぞ】


「どうやって倒すの?」


【居合だから抜かせりゃいい。おっさんなら連打でいちころだ】

【範囲魔法でもいい。水魔法の溺死がお薦め】

【酸の水鉄砲でも勝てるかな】

【あれは射程が短いから危険だ】


 どうするのか見ていたらシロガネがオークの攻撃範囲外からブレス。

 まあそうなるよな。


【ブレスは範囲攻撃だからな】

【シロガネはフェンリルだろう。ここのラスボスにも勝てるかも】


「俺、要らない子」


【おっさん、がんば】

【シロガネが優秀過ぎるんだよ】

【おっさんの方が強いから、気を落とさずに】


「よし、今日は終り」


「わん」

「はい」

「お疲れにゃ」

「お疲れ様ですわん」


 モチとキナコのヘアヌード写真集を出した。

 いやパンツ穿いているよ。

 体毛イコール、ヘアヌード。

 文句は言わせない。


 モチはブラをしていたが、お前乳首いくつあるんだ。

 8個もあるんかい。

 まるで変ったデザインのチューブトップみたいだ。


 うん、コボルトとケットシーがヘアヌード写真集を買っていく。

 こいつら何でもいいんじゃないか。


 コボルトとケットシーの幼児の写真集も出してみた。

 女性が買うことと言ったら。


 癒しを求めているのかな。


「結婚して下さい」


 女性がケットシーに求婚してる。


「体に毛が生えてない方はちょっと遠慮するにゃ」

「ああん、ケットシーの子供が欲しいのに」


 どういう子供が生まれてくるのか分からないのに。

 そもそもケットシーと結婚して子供は出来るのか。


「そこのところどうなの」


 モチに聞いてみた。


「子供は出来ないにゃ。異世界でも普人種と結婚した人はいたにゃが、子供はできなかったにゃ」


 悲しい現実が起きないように、密かにその事実をSNSで流しておこう。


「孤児のコボルトとケットシーの里親とか考えた方が良いのかな」

「面倒をみてくれるにゃら、養子に行ってもいいという子はいるにゃ」

「俺は馬鹿だから、弁護士にでも頼むか。家庭状況とか念入りに調べてくれるだろう」

「虐待とかされたら、ケットシーとコボルトの子は反抗するから平気にゃ。この世界の普通の人間にゃら、子供でも大人を圧倒できるにゃ」

「なるほどな。証拠の映像を撮っておくように教育してやらないとな」

「それも平気にゃ。そういうスキルがあるにゃ。過去視にゃ」

「安心だな」

「心配にゃら、しばらく感覚共有で見守るにゃ」


 スキルは色々と便利だな。

 コボルトとケットシーの同族に対する愛情は深いから、養子に出されても繋がりは切れないのだな。

 安心したよ。

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