第75話 ミスリルの万年筆

 オークの蒐場ぬたば、3階層の敵は、重武装した重騎士オークと呼びたい奴だった。

 こりゃ弥衣やえ達には荷が重いか。

 見ててというので任せる。

 弥衣やえ達は矢じりに酸を付けて放つ。

 そうだよな貫通すれば鎧は関係ない。


 シロガネはというと鎧で覆われた足をかみ砕いていた。

 このぐらいじゃ止まらないってことか。


【まだ余裕だな】

【貫通矢は反則】

【ミスリルなら貫通しないけど】

【ミスリルの鎧を着けたオークがいたらウハウハだな】

【目が¥マークになりそう】


「ミスリルの鎧っていくらぐらいだろう」


【数千万はするな】

【総ミスリルだと億とかいくかも】

【あー、オークナイトが可哀想】

【オーバーキルだもんな】

【装備が反則なんだよ】

【苦戦するところとかないと面白みに欠けるな】


「圧倒的パワーで蹂躙。これしか認めん」


【なんか炎上するようなことを言ってよ】

【きっと盛り上がるぜ】


「写真集を出す。なんとヘアヌードだ」


【誰の?】

【おっさんなんて言ったら怒るからな】

【ほら言ってみそ】


「おっさんではないな」


【俺には分かった】

【俺も】

【まさか、ヤエちゃんじゃないよね】


「キナコとモチだ」


【そんなのを見て興奮できるかぁ!】

【全裸待機してたのに】

【俺は分かっていたぜ】


「ひと肌脱ぐですにゃ」

「昔が懐かしいですわん」

「二人とも討伐に集中」


 弥衣やえから叱責が飛んだ。


【コボルトとケットシーは裸族】

【そうみたいだな】

【たしかに暑いときなんか脱ぎたくなるよな】

【冷気魔法があると言ってたよな】

【冷房装備でしたか】


「コボルトとケットシーの生態は知らない。ヘアヌードは冗談で言っただけだ」


【まあヘアヌード写真集出してみれば。ケモナーが買っていくかもよ】

【世の中には猫とか犬のあそこを見て興奮する奴がいるのか】

【そんな奴はいない】

【いないと思いたい】

【分からんぞ。いるかもよ】

【世界に何人かはいるかも知れないな】


 コメントが凄い勢いで流れていく。

 えー、コボルトとケットシーのヌードがそんなに需要あるのか。

 世の中変態だらけだな。


 そんなことをしているうちにボス部屋に着いた。

 ボスは驚いたことにミスリルの鎧を身に着けていた。

 オークアークナイトかな。


「俺がやろうか」

「いいえ、私達が」


 お手並み拝見といこう。

 弥衣やえ達は酸の水鉄砲で顔面を撃った。

 オークジェネラルの顔面から白煙が上がる。

 息をしなきゃならないし、目が見えないとだから、隙間は空いているよな。


「シロガネちゃんお願い」


 シロガネがオークアークナイトの手足をかみ砕く。

 そして喉も噛み千切った。


【ミスリル装備はなんだったのか】

【シロガネの牙の前にはなんの役にも立たなかったな】

【やはり、おっさんとシロガネが突出しているな】

【ヤエちゃんの目潰しが無かったら、シロガネでも苦戦したかもな】

【頭脳プレーは必要。おっさんとシロガネにはそれがない】


「俺が馬鹿みたいじゃないか」


【アホだろ】

【うんアホだな】


「俺は芸人じゃないぞ」


【ヤエちゃん入学おめでとう】


「くそっ、忘れてた。お前どこで調べるんだ」


【合格発表のデータと参照すれば学校は分かる】

【怖えよ】

【ストーカーかよ】


「ヤエという名前だけで分かるのかよ」


【家だって知ってるぜ】

【お巡りさんこいつです】

【たいーほ】


弥衣やえ、入学おめでとう。プレゼントは後で持って行く。それより学校はいいのか」

「1年休学することにしたの。ノートは友達が取ってくれるし、勉強は合間にするから」


 さあ、何を贈ろう。

 俺は頭を捻った。

 万年筆にしようミスリル製が良いな。


 武器屋のおっちゃんの所に行った。


「ミスリルの万年筆を作ってくれ」

「おいおい、従魔の首輪とリードはありっちゃありだが、万年筆はねえだろ」

「そう言わずに。教室も戦場にいつ変わるか分からない。ミスリルの万年筆があればそう言う時役に立つだろう」

「あくまでも武器だと言うんだな」

「オフコース。フルコース。モチのロン倍満」

「よし、武器にもなる万年筆作ってやるよ」

「やった」


 ミスリルの万年筆は1日で出来上がった。

 何だ、おっちゃんもきっと作りたかったんだな。


「改めて、弥衣やえ、入学おめでとう」

「ありがとう。万年筆大事にするね」


 虹色に輝く金属光沢の万年筆が、弥衣やえとマッチして見えた。

 我ながら良いチョイスだ。

 500万ほど掛ったがいい買い物をした。

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