第88話 アンチの悲鳴

 トカゲの楽園の6階層。

 出てきたのは頭が二つあるトカゲ。


【配信やめろ】

【ツインリザードだな】

【解説してんじゃねぇ。犯罪を告発しろよ】

【おはようございます。氏ね】

【ああ、アンチばっかりだ】

【何時になったら警察は動くんだ】

【被害届は出している】

【警察は無能だな】

【無能じゃなくて、逮捕されないんだよ。無罪だから】

【いいや、有罪だ。お前は裁判官じゃないだろ】

【オマエモナー】

【しばらくコメント見ないでおこう。コメントしないけど、配信、頑張って】


 おー、今日もアンチが湧いてるな。

 さて討伐だ。

 まずは挨拶代わりのキャメルクラッチ。

 ボキっと音がしたので、もう一方の首に腕を回す。

 簡単にへし折ると、最初に折った方が復活してた。

 再生持ちかよ。

 関係ない腕は二本ある。

 二つの首に同時に腕を回す。

 キャメルクラッチでへし折った。


 同時に倒すと復活しないみたいだ。

 ザコだな。


【何でやられない。こいつら強敵だぞ。心臓の一撃しか殺せないはずなのに】

【ほんとしぶといね】

【ゴキブリみたいな奴だ】


 今日もアンチで飯が美味い。

 ほら、ボキっとな。


【この階層には期待できないようだ】

【モンスター頑張れ。正義は君に掛かっている】

【このモンスターはBランクじゃなかったのか】

【なんでやられない】


 次もボキっとな。


【ああ、モンスターが次々にやられていく】

【くそう、正義の味方はどこにもいないのか】

【お前ら、過去の動画見てないな。特にダイヤドラゴン。あれ見たらね】

【信者は引っ込め】

【モンスター素材の不買運動しようぜ】

【おっさんが狩った奴を重点的にな】

【いいね】


 ボキっとな。

 しばらく討伐に集中しよう。

 討伐は順調に進んだ。

 ボス部屋に到達。


 ボスはみつ首のトカゲだった。

 トリプルリザートだな。


 さっそく跨って、ええとみつ首いっぺんはだめだ。

 仕方ないので俺は胴体を抱えた。

 ふんっ。

 ボキっと背骨が折れる。

 トリプルリザートは血を吐いて死んだ。


【ボスには期待してたのに】

【Aランクだぞ。それなのにあっけなく死んだ】

【パーティメンバー何もしてない。くそっ、余裕綽々ってか】

【くそう、このまま行くのか。頼む誰か阻止してくれ】

【モンスター、だらしないぞ。怪我のひとつも与えられないのか】

【ノーダメなんて許せん】


 最寄りの冒険者協会の買取場に行く。

 どさどさってツインリザードの死骸を出した。


「いつもリザードの素材ありがとうございます」

「良いってことよ」

「ツインリザードは回復薬の原料になるので、高値が付きます」

「料金はいつも通り口座にな」

「はい」


【冒険者協会に抗議の電話しようぜ】

【そうしよう】

【不買運動の題目は『犯罪者が獲った素材を買うのか?!』だな】


 家に帰って不買運動で検索を掛けた。

 どこも取り合って貰えてないみたいだ。

 俺が奴らのSNSを炎上させてやるか。


「モンスター肉食うと健康になれるんだぜ。薬にも使われている。不買運動している奴らいるけど根拠があるのか? 証拠を出せないのなら引っ込んでろ。みんなで不買運動叩きしようぜ」


 奴らのSNSは炎上した。

 モンスター素材の恩恵に与っている人は多い。

 そういう人がアンチを攻撃する。


 はははっ、利権を妨害しようとするからそうなるんだ。


 奴ら何を考えたのか、モンスター素材の肉や薬を使うとモンスターになると言い始めた。

 これは訴えられるな。

 完全な営業妨害だ。


 弥衣やえが弁護士に電話して訴えることになった。


「モンスター素材の肉や薬を使うとモンスターになると言った奴、訴えるから。損害賠償がくるぞ。俺が勝訴すれば業者や製薬会社からも訴えられるだろう。震えて眠れ」


 メッセージを配信した。


【くそう】

【結局こういう落ちか】

【アンチなんてそんなもの】

【これでアンチが消えればいいのだが】

【馬鹿やった奴は一握りだろ】

【俺を訴えてみろよ】

【俺も負けない】

【次の手を考えるぞ】

【こりない奴らだ】


 アンチの悲鳴が聞こえてくるようだ。

 そいつらの悲鳴で飯が美味い。


 しかし、モンスター肉を食うとモンスターになるなんてデマを飛ばすとはな。

 デマ飛ばした奴もモンスター肉を食っているだろうに。

 それに薬。

 病気の人が治療をためらったりしたら、重大責任だぞ。

 あとでそういう人が出て来て、本人や遺族が後悔したら、訴えるのを支援してやろう。

 デマで人が死にましたってな。

 やつら一線を超えるどころか、許されないことをした。

 こういう奴には罪を償ってもらいたい。

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