第126話 巨人を守る会

真紀真紀まきまき綺羅々きららチャンネル始まるよ。今日は引き続き巨人のダンジョンに来てる。テンションあげあげで行くからよろしくね」


 うん、今日の俺は一味違うぜ。

 と言っても床を舐めて閃いたりはしない。

 ミスリルの手袋に水鉄砲、いや酸鉄砲と呼ぶべきだろうな。


 綺羅々きららが先陣を切り、弥衣やえ達がバリスタで援護する。

 シロガネはハフハフ言って控えてる。

 シロガネが蹂躙すると、他の人の出番がない。

 もちろん俺もそれに含まれる。


「アシッドスプラッシュ」


 俺は酸鉄砲を巨人の後ろから発射。

 酸は巨人の足を溶かした。


「はははっ、どんなもんよ」


【後ろから狙う安定のクズっぷり】

【酸が掛かっても平気な様にミスリルの長手袋か】

【怖いんだろうと言われたのが悔しかったのだな】

【止めは綺羅々きららちゃんと、ヤエちゃんが刺すのね】


 見てろよ。


「アシッドスプラッシュ、顔面シャワー」


 俺は巨人の顔面に酸を浴びせた。

 そして。


「アシッドストロー」


 ミスリル鉄パイプを巨人の口に突っ込み、酸を流し込む。


「ぐぎゃあ」


 巨人が悶え死んだ。


【なんか汚い殺し方だな】

【CGの鉄パイプ連打みたいなわけにはいかないさ】

【それにしても。一撃で首を刎ねるとかやりようはあるだろ】

【うんうん、綺羅々きららちゃんは酸を使うにしても剣でぶった切っているからな】

【貫通の矢も見てて爽快だ】

【おっさんはなんかゴキブリに洗剤掛けて殺しているような感じだな】


「俺としても恰好良いやり方があるなら参考にしたい」


【頑丈なんだから盾職をやれ。ミスリルの盾に酸を塗るぐらいできるだろ】

【男なら殴れよ。ミスリルの手袋しているんだから、酸を塗って殴れば良い】

【酸に頼るな。男なら正々堂々だ】

【おっさんに恰好良さは似合わない】

【悪役の武器だと。ムチとか】

【ムチは妖艶な女悪役が映える。おっさんは却下だ】

【大剣だと綺羅々きららちゃんと被るから、槍が良いな】

【おっさんは槍なんか使えないだろ。簡単そうに見えて、あれはなかなか難しい】


 俺はコメントをチェックしつつ長手袋の拳に酸を塗った。

 巨人の後ろに回り、膝の裏を殴る。


【酸付けて、膝カックンかよ】

【必殺技、膝カックン。うん笑える】

【でもサポートにはなった。綺羅々きららちゃんがやり易そうだ】

【そりゃあ、いきなり膝カックンされたらね】


「うーん、酸の拳はいまいちだな」


【それは攻撃部位が問題であって】

【巨人の殴り易い部位だと股間だな】

【酸でそこを焼くのか】

【面白いが鬼畜だな】

【おっさんは、正面から行けんだろ】

【そこで顔面に酸ぶっかけて、股間に攻撃】

【最低なコンボだな】


「やっぱり水鉄砲が良いのか」


【実力には合っているのかもな】

【中距離からの攻撃は被弾の心配もないしな】


 討伐は順調だった。


「なあモチ、ジャイアントの体は何に使うんだ。皮なんか人みたいで気持ち悪いだろう」

「そんなことないにゃ。異世界ではよく使われてたにゃ。巨人は捨てる所がないにゃ。特に肉から作った肥料は作物が良く育つにゃ」

「知ってる。巨人から色々な植物が生まれたって神話があるの」


 弥衣やえが会話に入って来た。

 弥衣やえは物知りだ。

 討伐を終えてダンジョンから出ると、とんがり帽子に木の葉の飾りが付いた物を被った一団がいる。


「巨人は敵ではありません。その証拠に言葉を喋ってます。知的生命体をあなた達は殺すのですか」


 ええ、スタンピードのときに巨人は人間をたくさん殺したと聞いている。


「巨人の頭が良いのは知ってるけどもにゃ。やつら人食いにゃ。魔石も持っているしモンスターにゃ」


 この一団は巨人と同盟を結ぼうというのか。

 姿形が人間に似ているというだけで。

 言葉ならオークやゴブリンも話す。

 うーん、この一団に喧嘩を売りたくてうずうずする。

 なんと言って煽ろうか。


「巨人は皆殺しだ。神話でも巨人は退治される運命にある。人間の敵なんだよ。巨人を守りたかったら巨人の餌にでもなってろ」

「その暴言は許せません。協会に圧力を掛けてこのダンジョンを保全してもらいます」

「やってみろよ」


【弱そうな奴には強気だな】

【おっさんは金持ちだから、こういう輩に強い】

【面の皮も厚いし】

【この一団、巨人を守る会が、署名活動を始めたぞ】

【早い展開だな】

【前から準備してたんだろ】


 協会は巨人討伐禁止令でも出すかな。

 禁止されても俺達は討伐するが。

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