第127話 焼肉

 巨人のダンジョンの依頼が全て偵察依頼になった。

 言葉を録音してくれば良いらしい。

 あの団体は、それなりに力があるんだな。

 だが、俺達にはそんなの関係ねぇ。

 討伐しまくってやるぜ。


「巨人のダンジョンの依頼が全て偵察依頼になったが、俺達には関係ない。出来るだけむごたらしく殺してやるよ」


【巨人を守る会って力があるんだな。調べたら一流企業もスポンサーになってる】

【喧嘩を売る相手を間違えておっさんがブルってるに違いない】

【おっさんにそんな頭はないだろ。企業の環境汚染もやってたしな】

【あれな。相手の企業は巨人を守る会のスポンサーになってるぞ】

【報復か】


「悪党は誰にも屈しない。正義だろうが、同じ悪党だろうが」


【推移を生暖かい目で、見守らせてもらうよ】

【ところで巨人とは仲良くすべき?】

【人食いだしな。巨人はプライド高そうだから、話し合いなんかならないんじゃね】

【意外に良い奴かも知れんぞ】

【美人の巨人をローアングルから眺めたい】

【お巡りさん変態がいます】

【美人と言っても男かもよ】

【男の巨人がミニスカート穿いている姿を想像しちまったよ。どうしてくれるんだ】

【スカートは民族衣装とかだと男も穿くぞ】

【吐きそうな話題だ】


「俺にもそのギャグが分かったぞ。穿きそうと吐きそうを掛けたんだな」


【そろそろダンジョンに入ろうぜ】

【うん、俺もそれが見たい】


「じゃあ入りますかね」


【おー、巨人がいるな】

【なんか新兵器はないのか】

【おっさんは、ボウガンでも撃っとけ】


 おっと、後ろに回って後頭部に酸の水鉄砲と。


「ギャー」


 巨人も悲鳴は人間と一緒だな。


【後頭部にか。きっと巨人は禿げるだろう】

【その前に、ヤエちゃんが止めを刺した】

【けん制にはなっているな】

【それにしても後ろに回るのが上手い】

【ゴキブリ並みだな】

【意外と素の能力は高いのかもな】

【鉄鉱石を掘って暮らしてたらしいからな。体力はあるだろう】


「悪党は黙って後ろから」


【恰好悪い標語だな】

【前から行ったら、巨人に叩かれるだろう】

【チキンだな】


「効率重視と言ってくれ」


 討伐は問題なく終わった。

 冒険者協会の買取場に巨人の死骸を持って行くと、おっちゃんが渋い顔をした。


「巨人から作った肥料の不買運動が起きているんだよ」

「ええ、マジか」


【ただ働きになるのか】

【こうなると思ってた】

【てか、偵察依頼オンリーになるってことは、協会は肥料の件を知って切り替えたな】

【まあそういうことだろうな】


「悪いな。協会も売れないと話にならんからな」

「仕方ないな、グラトニーに食わせよう」


【やられっぱなしでいいのか】

【悪党らしく悪知恵出せよ】


「うーん、巨人の肉を食うわけにもいかないし。食えるのか? 聞いてみる。もしもし、モチか。巨人って食えるのか」

『食えるにゃ。けっこう美味いにゃ』


「食えるってさ。よし、巨人を守る会の目の前で捌いて食ってやるか」


 巨人のダンジョンの入口の前にバーベキューセットを設置。

 巨人の足をアイテム鞄から取り出した。

 そして、肉を大胆に切って、串に刺して焼き始めた。


「なんておぞましい」

「そうよ」

「そうだそうだ」

「知的生命体を食べるなんて」


【俺も人間の見た目のモンスターは食えない】

【オークは食えるけどもな】

【顔がブタか人間かの違いだな】


「買い取ってもらえないのなら自分で消費しないといけないからだよ」

「まず殺すという発想を辞めろ」

「言葉を覚えて友人になろうとは考えないのか」

「食人反対!」

「やばん行為を辞めろ!」


【ここまで行くとどっちが正しいなんて関係ないな】

【俺もちょっとやり過ぎだと思う】


「あー、美味い美味い。お前達もどうだ」

「誰が食うか」

「即刻、食うのを辞めろ」

「亡骸を丁重に葬るんだ」


【あー、巨人を守る会がおぞましい野蛮行為というタイトルで動画を上げたな】

【食うのに反対の意見が圧倒的に多いな】

【そりゃそうだろ】

【もっとも法律違反じゃないから、おっさんは捕まらないがな】

【巨人を守る会が署名して、法律を作らせるように嘆願するんじゃね】

【そうかもな。今回ばかりはおっさんの主張は通らない気がする】


 うん、今回の手は上手くなかったか。

 炎上はしてるけどな。

 スカッと爽快に悪事と行きたいもんだ。

 何か上手い手を考えないといけないようだ。

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