第22話 アンアンスパイダー

 アイアンウルフを乱獲した。

 さて、そろそろ奥へ行くか。


 次の敵は蜘蛛だった。

 針金の糸で巣を作ってやがる。


【次は蜘蛛ね】

【グロイもの見せやがって】

【蜘蛛は楽勝だな。推定Dランクだと思われる】

【また大げさに見せるように工夫するんだろ】

【どんなことを言うのか楽しみ】

【いくら稼ぐのかが楽しみです♡】

【出たなパパ活おばさん】

【まあ見ていようぜ】


 蜘蛛の巣が邪魔で仕方ない。

 鉄パイプを武器強化して、蜘蛛の巣を払う。

 くそっ、鉄パイプじゃ滑って駄目か。

 鉈とか持って来ないと駄目そうだ。


【蜘蛛の糸が鉄パイプで切れない演出か。どんなカラクリ?】

【そりゃ、ヤエちゃんが武器強化で強靭にしているのだろう】

【蜘蛛がAランクって可能性は?】

【ないな。なぜかというと蜘蛛の糸は粘るんだよ。滑ったりはしない】


 家に鉈を取りに帰るのはちょっと負けた気分だ。

 それに鉈でも切れないかも知れない。

 鉄パイプは初期からの得物だし、今更変えたくない。


 金属に強いのは何だ。

 うがぁ分からん。

 ここで弥衣やえに金属の攻略法を聞くのは悪役ムーブとしてどうだろう。

 でも俺には分からん。


弥衣やえ、この蜘蛛の巣をお前ならどうする」

「私なら魔法で酸化させます」

「参加? 混ざりたいのか」


【謎の答え】

【ゲスで低脳なんだよ】


「そう、鉄と酸素を混ぜて合体させて錆させるのです」


 錆させるんだな。

 俺はカメラを止めた。


【くっ、ブラックアウトしてる。カメラの録画を止めたな】

【何が起こっているんだ】

【もしや合体しているのでは】

【くそう】

【こんなところで盛るなよ】


弥衣やえ先生、錆について教えて下さい」

「いいわよ。鉄と酸素が結び付くと酸化という現象が起こるの。塩水を掛けるとさらに錆びやすくなるわ。塩水は土と水魔法の合わせ技で行けると思う。酸素を集めるのは風魔法が良いかもね。そして錬金術よ。錬金術スキルなら反応は一瞬よ」

「なるほど。塩水。そして酸化」


 蜘蛛の巣が赤茶けて醜く膨れ上がってボロボロになった。

 これなら鉄パイプで薙ぎ払える。

 カメラのスイッチを入れた。


「ふぅ、合体したぜ」


【やっぱりか】

【氏ね】

【呪】

【あれ蜘蛛の巣が灰色から、赤くなっている】

【これはあれだ。CGだな】


 俺は鉄パイプで蜘蛛の巣を払った。


【これは合体したことで不思議パワーを得たって演出?】

【なんて下品な技だ】


「その通りだ。合体することで赤くなる」


【CGだよ。金もっているからな。ライブ映像に見せかけてコンピューターで処理して、映像を流したのだろう】

【だが、合体は事実かもな】


「塩水酸化。これが合体の力だ」


【錆びたっていう演出?】

【チープだな。なんで蜘蛛糸が錆びる? ああ、最初の演出に結び付くのか。蜘蛛糸が針金っていう】

【下らん設定だ。それより合体の詳細を】


「塩水ローションで合体しやすくなるのだ」


【このノリは寒すぎる】

【一生懸命考えた僕の必殺技なんだから、笑ってやるなよ】


 コメントは無視して進もう。

 蜘蛛の巣を錆させて、払いながら進む。

 ようやく、本体のお出ましか。

 2メートルはある蜘蛛が針金の糸の上を滑るように移動して来た。


【ビッグスパイダーね。やっぱりDランクだ】

【模様が違うけど】

【亜種だろ。ダンジョンが違うと同じ系列のモンスターでも模様が違う】


 俺は蜘蛛をアイアンスパイダーと名付けた。

 さてどんな攻撃をしてくるのかな。


「上から見下ろすなよ、モンスター風情が。塩水酸化」


 巣が錆びてアイアンスパイダーは落ちた。

 駆け寄ろうとしたら、毒液を吐かれた。

 俺はまともにそれを浴びた。


すぐる!」

「俺が死ななくて残念だったな。弥衣やえを解放などしてやらん」

「ほんと残念」


 ほっとした様子の弥衣やえ


「コボルトとケットシーには毒耐性スキルをもっているのが50人ぐらいはいる。当然、寄生スキルで俺もその恩恵おんえに与れる」


【おんえってこいつ何を言っているんだ】

【ドヤ顔で設定を披露したのだから、素直に聞いてやれよ】

【間違えて覚えるあるあるだよ。ふいんきなぜか変換できない】


 おんえじゃないのか。

 別に良いじゃないか。


恩恵おんえで毒はもう効かない」


 俺は呪いを込めた鉄パイプで、アイアンスパイダーを滅多打ちにした。


「アンアンスパイダーは死んだ。おっとアイアンスパイダーだった」


【殺意が芽生えた】

【全ヤエちゃんファンを敵に回したな】

【親父ギャグ寒い】

【別にアンアンスパイダーでも良いけどよ。おいくら?】

【俺もそれが気になる。ビックスパイダーだと20万円ぐらいだな。足が美味いらしい】


 よし、買取場に新種を見せに行こう。


 買取場にいくと俺もおっさんだが、いつものおっさんがいた。


「今回は新種を持ってきた」

「出してみろ」


 アイアンスパイダーの死骸を出した。


「どう?」

「ふむ、硬さは武具の素材として良いが。蜘蛛じゃ作れる物は限られる。ビックスパイダー辺りだと、足の肉が美味いんだが」


 ダイヤモンドカッターで解体が進む。


「どれ、焼いてみるか」


 ガスバーナーで足の肉が焼かれた。

 食うと、鉄さびの味がした。


「不味いよ、これっ」

「鉄分が多く含まれているらしいな。薬に使えないか打診してみるぜ」

「頼む」


 さて、攻略法も分かったことだし、アイアンスパイダーを乱獲しますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る