第119話 マグネットゴーレム

 マグネットゴーレムを弥衣やえが討伐してみたいと言うので任す。

 バリスタに矢が装填される。

 矢じりに酸が塗られたのは言うまでもない。

 マグネットゴーレムの足は遅いから当たるんだろうけど。

 マグネットゴーレムの飛ぶ腕との撃ち合いが始まった。


【撃ち合いは面白いな】

【映える映像だ】

【盾に飛んできた腕が当たるところなんか良い】



 段々と増殖していくマグネットゴーレム。

 弥衣やえが押され始めた。


【増殖しはじめたぞ】

【これどうするんだ】

【おっさんが死んで終わる】

【前に連打でわけもなくやってただろう】

【新暴行映像と拉致映像が決め手になる。もうおっさんはアウトなんだよ】

【だが、なにか言い逃れするかも知れない。新しい情報をいつでも求めてる】

【アンチは勝ったつもりなんだろうけど。あの映像をおっさんが肯定してるのがな】

【言い逃れが出来ないんで認めたんだよ】

【そんなに潔いかな】

【もうおっさんの逮捕は間近だ】


 シロガネがつまらなそうにそれを見てる。

 ゴーレムは無機物に近いからシロガネが食いつかないのか。


「切り札よ」


 そう言って弥衣やえがバリスタに黒い矢を装填した。

 そして黒い矢が発射された。

 黒い矢は、途中砂を巻き上げ、ビルほどの大きさに成長。

 マグネットゴーレムに襲い掛かった。


【うおっ、凄い迫力】

【良いもんを見た】

【マグネットラークからヒントを得たのかな】

【くそっ、モンスターには期待しない。あくまでも決戦は裁判だ】

【おっさんが裁判で負けるイメージがないんだがな】

【それな。俺もだ】


 マグネタリウムで矢を作ったらしい。

 まあ何度でも使えるから高いけどコスパは良い。


 こんな武器があればマグネットゴーレムは一般人にも楽勝だな。

 弥衣やえが切り札のマグネタリウムの矢を撃ちながら進む。

 やがてマグネットゴーレムの領域を抜けた。

 次の敵は黒光りするサソリだった。


 マグネットスコーピオンかな。

 尻尾に砂鉄が集まり、発射された。

 それはマグネットゴーレムの腕より早い。

 そしてアダマン鉄パイプで迎撃したが、べっとりと毒が付いた。


【蠍か。おっさんなら毒が効かないだろう。寄生している人達もな】

【今度こそ終わりだと思ったのにな】

【過去動画を見て来い】


 叩くだけだな。

 少し早いぐらいでは迎撃に失敗しない。

 アダマン鉄パイプを振りながら近づき、ハサミごと頭をかち割った。

 楽勝だな。


 弥衣やえ達に毒は効かないのだろうけど、試して見る気にはなれない。

 こいつらの攻略は明日考えよう。


 ダンジョンから出て、テレビ、俺のチャンネル、SNSをチェックする。

 良いように炎上してる。


 真紀真紀まきまき綺羅々きららチャンネルを見る。

 新しい動画が配信されてた。


 綺羅々きららにはケーブルと点滴が付けられ痛々しい。


『みんな、私は大丈夫。ちょっとドジを踏んだだけ。モンスターにやられちゃった。ポーションがあれば復活できるわ』


【ポーション送るよ】

【俺も】

【復活を願っている】

【頑張って。負けないで】


 コメントがたくさん付いているな。

 愛されキャラらしい。


 俺のとは真逆だ。

 もっとも俺のファンも一定数いるが。

 それより綺羅々きららは意識が戻ったんだな。

 何よりだ。

 ポーションを持って面会に行かないと。


 チアフルになってお見舞いに行く。


「配信みたよ」

「あれ見たの。ポーションを乞食みたいにねだるのは滑稽に映るでしょうね」

「そんなことはないさ。ポーションを送った奴らだって騙されたのを許してくれる」

「そうよ。病気に負けちゃ駄目」

「後少しなのよ。あと少しでエリクサーの金額に手が届く」


 ここで俺がオークションの代理人にエリクサーを頼んでると言ったら、彼女の張りつめてた糸が切れるような気がする。

 エリクサーのことを告げるのはエリクサーが手に入ってからだ。


「ねえ、なんとかならない?」


 病院からの帰り道、弥衣やえにそう言われた。


「瀕死になった時に寄生スキルで持ちこたえてくれることを祈るしかない」

「そんな」


 俺だって助けてやりたい。

 だが、運命ってのがあるからどうなるのかは分からない。

 ここまで来たらその運命をぶち破れるどうかは綺羅々きらら自身に掛かっている。

 そんな気がしてならない。

 生き残るのは足掻く奴だけだ。


 諦めたら終わり。

 勝てる勝負も負けてしまう。


 綺羅々きらら頑張れ。

 応援しているぞ。

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