第120話 エリクサー

 マグネットスコーピオン対策は、マグネタリウムを使って盾を作るだ。

 攻撃はバリスタ。


 マグネタリウムの盾は磁力を発している。

 マグネットスコーピオンの砂鉄の毒針も吸い寄せる。


【マグネタリウムの盾って鉄製品には無敵】

【まあそうだな】

【なに呑気に討伐しているんだよ。綺羅々きららちゃんが死んだらおっさんのせいだ】

【意識もあるし、ポーション飲んでれば大丈夫なんだろ。おっさんが気にすることではないな】

【いや、おっさんのせいだ。おっさんに暴行を受けてから、おかしくなった】

【いやその前から落ち目だろ。人気回復のための釣りとみてるけどな】

【じゃあ怪我も嘘】

【今頃ポーションを転売して笑っているかもな】


 絶対的な盾があればバリスタが威力を発揮する。

 バリスタの矢はアルミ製で、磁力の影響を受けない。


 マグネットスコーピオンはバリスタの矢で死んでいった。


【モンスターの攻撃が地味だな。バリスタも地味だけど】

【ミサイルでも持って来いっていうのか。無茶言うなよ】

【今日のおっさんは無口だ】


綺羅々きららは俺の女だ。回復を願っている。ポーションも渡してる」


【おっさんも貢いだのか】

【転売されているかもな】


「ふん、俺の女にしたからには、べつにあげた物をどうこうしようと構わない。定期的にお金を渡すのと変わりない」


【やっぱり、綺羅々きららはビッチで愛人契約したんだな】

【黙れ】

【結局、配信が上手くいかなくなったので、別の路線に移った。そろそろ年だしな】

【そんなことはない】

【あるだろ】

【ないったらないんだ】


綺羅々きららは良い女だと言っておこう」


【おっさんの評価はあてにならない】

【おっさんが、綺羅々きららちゃんを語るな】

【そうだそうだ】


「おっと、ついにボス部屋だ」


【4階層、ザコ制覇おめ】

【おつかれ】


「よしこの勢いでボスに行ってみようか。綺羅々きららのことは悪く言わないでほしい。生きるのに必死なんだ」


 ボス部屋の扉を開ける。

 出た所は砂の海の真っただ中。

 俺達がボス部屋に入ると扉が消えた。


 どんなボスかな。

 砂が爆発したように噴き上がり、ボスモンスターは砂から躍り出た。


 見たところ30メートルはある鮫だ。

 マグネットシャークだな。


 マグネットシャークは背びれを砂の上に出し、砂の海を泳ぎ始めた。

 俺達の周りをグルグルと回っている。

 その円は段々と狭まっている。


【強敵の予感】

【磁力で何をしてくるのかな】

【30メートルという大きさがもはや脅威】

【うん、ドラゴンクラスだからな】

【遂におっさんは死ぬのか。いいや絶対に死ね】

【わくわく】

綺羅々きららちゃんの仇だ。思い知れ】


 よし、まずは一当て。

 俺はジャンプしてアダマン鉄パイプをマグネットシャークがいるであろう地面に叩きつけた。

 砂が爆発したように飛び散り、クレーターが出来る。


 マグネットシャークの巨体が露わになった。

 だが大ダメージではなかったようだ。

 マグネットシャークはお返しとばかりに砂を集め、100メートルはある口を作った。

 その口で俺を飲み込みに掛かる。


「どっしゃらぁ」


 アダマン鉄パイプの連打で砂鉄の口を破壊していく。


「ぺっぺっ」


 砂をもろに被った。

 マグネットシャークは再び砂の中に。


【死んでないな】

【形勢は五分五分か】


 マグネットシャークの背びれが見えない。

 どうやら下の方から一気に飲み込む作戦らしい。


 こんなの叩きゃ良いんだろ。

 連打連打の嵐。

 砂の海が、飛ばされ消えていく。

 ダンジョンの床である岩の岩盤が見えた。

 一帯の砂が遥彼方に飛ばされた。

 マグネットシャークは岩盤の上で跳ねている。

 こうなればマグネットシャークは陸に打ち上げられた魚だ。


【めっちゃ力技で笑った】

【連打で砂を全て吹き飛ばすとはな】

【砂の海の下は岩盤だったんだな】

【くそっ、今回も駄目か】


 マグネットシャークに酸を塗ったであろうバリスタの矢が突き刺さった。

 マグネットシャークは死んだようだ。

 弥衣やえがしてやったりの顔。


弥衣やえに美味しい所を持って行かれた」


【お疲れ】

【宝箱出てるよ】


 おお、宝箱がある。

 開けると虹色の光を発するポーションがあった。

 エリクサーだ。

 これで綺羅々きららが助かる。


 さて、クライマックスだ。

 物語のエピローグといこう。

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