第32話 アイアンオーガ
グラトニーの領域を抜けたら、ボスの扉があった。
さあ、いくか。
扉を開けると3メートルはある巨人がいた。
はげた頭には2本の角。
大きく発達した犬歯。
肌の色は赤くて、やはり金属光沢だ。
手には黒光りする棍棒を持っている。
アイアンオーガだな。
「
「任せて」
「はいですわん」
「やってやるにゃ」
俺はアイアンオーガに駆け寄った。
そして、呪いを込めた一撃を足にお見舞いした。
アイアンオーガは呪いに掛かった。
アイアンオーガが棍棒を振りかぶったので、俺が飛び退くと、
アイアンオーガに酸がもろに掛かったが、白煙は上がらない。
アイアンオーガの振り下ろしの一撃で、ダンジョンが揺れて俺はバランスを崩した。
くそっ。
アイアンオーガの二撃目が来るのが見えた。
回避は間に合わん。
俺は慌てて立ち上がると鉄パイプを両手で持って、その一撃を受け止めようとした。
一撃は食らって骨が軋んだ。
足は膝まで埋もれた。
うおお、耐えきったぜ。
三撃目を振りかぶったのが見えたので、足を地面から抜いて、前に転がった。
股下をくぐり抜けたわけだ。
アイアンオーガのアキレス腱の場所を連打する。
だがびくともしない。
アイアンオーガは足を上げると俺を踏みつぶそうとした。
食らってたまるか。
俺は飛び退いた。
後ろからなら魔法が良いかな。
天井にまで届く火の玉の魔法をぶつけた。
だが無傷。
くそう、タフ過ぎるぜ。
どんな攻撃なら効くのかよ。
コメントをちらりと見る。
【オーガはAランクだな】
【死んだな】
【CGだって、実際はゴブリン】
役に立たないコメントだ。
【打撃も魔法も効かないなら、状態異常スキルじゃね】
「麻痺スキル」
アイアンオーガの動きは止まらない。
くそう、何なら効くのかよ。
マニュアルを寄越せ。
「鑑定スキル」
『全耐性』と出た。
分かったのは良いが、こんなのどうするんだよ。
「全耐性らしい」
「無効じゃないのなら、やせ我慢と変わりがないわ」
おお、ぶっ叩くしかないのね。
俺は叩いては飛び退くを繰り返す。
やがて、アイアンオーガの足は腫れあがった。
効いているぞ。
叩く時に呪いも忘れない。
オーガの赤い肌は赤黒くなり最後には漆黒になった。
そしてアイアンオーガは膝をついた。
俺は頭を集中的に攻撃した。
一時間ほどの激闘でアイアンオーガは息絶えた。
【結局叩いて殺すのね】
【ひねりが足りないな】
【だな、隠された力に目覚めるとかしないと】
【オーガお高いのかしら】
【オーガならね。ゴブリンだと二束三文】
さて、ポータルに登録しよう。
2階層制覇したぞ。
アイアンオーガをアイテム鞄に入れてダンジョンを出る。
いくらになるかな。
買取場でアイアンオーガと棍棒を出す。
「全部で220万ってとこだな」
「苦労したわりにダメダメだな」
「オーガは強敵だが、肉は食えないし。皮と魔石ぐらいしか使えない」
アイアンリッチもだが、ボスマラソンしたいボスはいないようだ。
【きっとゴブリン220円だな】
【このてかり具合がCGくさいんだよな】
【そうだな】
俺はコボルトとケットシーが住むマンションに行った。
出ていけという張り紙を剥がす。
立て札も抜いた。
代わりにコボルトとケットシーはモンスターではないと書いた紙を貼ったが虚しい努力だろうか。
以前はマンションの滑り台で遊んでいたコボルトとケットシーの子供の姿はない。
思いっ切り遊ばせたりしてやりたい。
グランドでも貸し切ろうか。
グランドを借りてサッカーボールでコボルトとケットシーの子供達を遊ばせる。
何事かと近隣の住人が集まってきた。
そして出ていけコールが始まる。
子供達から笑顔が無くなった。
くそっ、俺のせいだな。
遊ばせてやることもできない。
騒ぎをSNS辺りで知ったのだろう、
「俺のせいなのか」
「ううん、見た目がこれだけ違うと排除に動く人はいると思う」
「味方がいないってのが、ズシンとくる」
「覚えておいて、私はいつでもあなたの味方だから」
「確かにゼロじゃないな。声を上げないだけで、コボルトとケットシーを好きな人達もいるはずだ」
「そうよ」
何か良い方法を考えないと、でないとコボルトとケットシーが可哀想だ。
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