第31話 火種

 グラトニーにゴミを食わせてみる。

 うん、何でも食う。

 そして大きくなる。


「麻痺スキル」


 小型のシャベルで体を切り取った。

 もう一度やろうかと思って待っていたら、腹がスース―する。

 みたらど服にでかい穴が開いているじゃないか。


 体は別に大丈夫だ。


【むっ、地味な演出だ】

【スライムに反撃を食らったんだな】

【それにしても地味だ。いきなり服が切り取られていても何が何やら分からない】

【CGケチったんだよ。服の穴ならカメラ止めてチョキチョキ切ればいい】


 いやー、大事だぞ。

 見えない消去魔法だ。

 こんなの反則じゃん。

 でも攻略法は分かった。

 グラトニーの体を削ったら離れる。

 そして時間をみてまた近づく。


 追い詰められるとこんな大技を出すなんてな。

 しかし、よく平気だったな俺。


 何かのスキルがきっと働いたんだな。

 1000人に寄生すれば、グラトニーの天敵スキルぐらいあるさ。


 とにかく収穫だ。

 体を削り取ったら、離れた場所の別のグラトニーに行けばいい。

 そうすれば効率がいいと思う。


 100体ぐらいから、体を削り取った。

 さあ換金が楽しみだ。


「おう、大漁だな。5億ちょっとだな。つぎは何時来る? 定期的に採取してくれると嬉しいんだが」


【このエキストラ、喜ぶ演技が上手いな。素で喜んでいるように見える】

【本当に5億あるんだったら分けて欲しい】

【素敵♡】

【でた守銭奴】

【愛情するなら金をくれ】

【全部芝居なんだよ】

【芝居を楽しむ心も必要だぞ。本物だとのめり込むのはどうかと思うが】

【俺は本物だと思う】

【俺も】


「ゴミが溜まったらな。1000人いるからすぐに溜まるさ」


 さて久しぶりにコボルトとケットシーのマンションに行くか。


「あー、なんか張り紙とか立て札が立っている」


 ええと、街中にモンスターを住まわせるの反対。

 極悪人の底辺おっさんは出ていけともある。

 これってやばい。

 コボルトとケットシーがモンスターではないと証明してやらないと。


 俺は前に診断してもらった獣医師の診断書をコピーして、ベタベタと貼った。

 コボルトとケットシーモンスターではありませんと。

 そして、コボルト達とケットシー達と雑談して帰るときに俺の貼った紙をみると、嘘を付くな、悪人の御託に騙されるなと赤で書いてあった。

 俺は弥衣やえに頼んで診断書をSNSに上げてもらった。

 悪人とモンスターは消えろの書き込みが多数。


 俺は慣れないながらもSNSに反論を書き込んだ。

 俺の書き込みの何百倍ものアンチコメントが書き込まれる。

 くそう、悪役ムーブがいけなかったのか。


「炎上しているみたいね」

弥衣やえ、どうしたらいいか」

「待つしかないわね。反論するとますます炎上すると思う。あの子供が落ちて無傷だった件が尾を引いているみたい。なるべくしてなったかな」

「そう言えば難民認定はどうなんだ」

「難航しているわ。何度申請しても通らないらしいの」

「そうか。俺のせいだな」

「炎上で配信の再生数は稼げるから、落ち込む必要はないんじゃないの」


「コボルトとケットシーが不憫で。あいつら異世界でもモンスター扱いされたんだろ、ここでも同じ目に遭わせたくない」

「とにかく沈静化を待ちましょう」


 金で全て解決できたらいいのに。

 俺は何時の間にこんなゲスな考えになったんだ。

 世の中には金で解決しないことはままある。

 その問題が人の善意で解決することもある。

 奇跡のようなことが起こったりする。


 金の力なんてちっぽけだ。

 俺の力の源は1000人からなる寄生の力。

 この信頼関係が崩れたら俺はどうなってしまう。


 とにかく危機だ。

 だがなんと言って訴える。

 助けて下さいと訴えても、悪人ざまぁとしか言われないだろう。

 俺に対する文句は別に良いんだ。


 昔から、鉄鉱石を協会に持ち込んでは、馬鹿にされたものだ。

 俺自身大した人間だと思っていない。

 配信の反応が生きる糧のただのおっさんだ。


 最近は別の生き甲斐もできた。

 弥衣やえとコボルトとケットシーだ。

 家族だと思っている。


 今から善人ムーブに切り換えるか。

 いや、そんなんじゃ配信は流行らないだろう。

 生き甲斐のひとつがなくなるのは悲しい。


 あちらを立てればこちらが立てず。

 だが、こんなこと、俺は不可能を可能にしてきたじゃないか。

 スライムを倒せずに何日間も叩き続けた。

 そして、奇跡が起こり、倒せるようになったじゃないか。

 今回も叩き続ければ突破できる。

 どういうふうに世間を叩けばいいのか分かってないだけだ。

 そういう場合は考えない。

 無心で叩く。

 今まで通りでいこう。

 SNSの反論は辞めない。

 叩いて叩きまくるだけだ。

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