第210話 焼酎

 冒険部の部活。

 筋トレをした。

 最近、筋トレが多いな。

 健全な部活に戻りつつあるのか。


 水が用意された。

 いつもはジュース買ってこいというのに今回は気が利くな。

 水を飲もうとして、水じゃないのに気づいた。


 この匂いは焼酎だな。

 そう言えば、最近酒を飲んでないな。

 前に飲んだのは中学生の体になる前か。


埼京さいきょう、どうした。俺が出した水は飲めねぇってのか。さあ飲めよ」


 俺って成人しているから、飲んでも警察沙汰にはならない。

 ただ中学生的には不味いだろうな。

 学校にばれるとお叱りを受ける可能性がある。


 俺は焼酎を一気飲みした。

 喉が焼ける。

 ただそれだけだ。

 寄生スキルで、パッシブスキルを多数獲得している俺は酔わない。


「美味い水だ」

「おっ、埼京さいきょう、いける口だな」


 コップに焼酎を注がれる。

 俺はまたも飲み干した。


「なるほど、本当に美味い水だ」

「お前に飲ませたのはこれだ」


 見矢原みやはらが2リットルはある焼酎の瓶を俺に見せた。


【中学生が焼酎を飲んで良いのか?】

【おっさんは成人しているから】

【校則はどうなっている?】

【たぶん酒を飲むななんて校則はないな。法律に違反してなければセーフなのか】


「なんだ、通りで美味いと思った。水じゃなかったんだな」


【とぼける台詞が棒読み】

【癖になってきた】

【大根なのは仕方ない。素人なんだから】


「この映像を学校に見せれば退学かもな。それが嫌なら10万円持って来い」


【脅迫するのか】

【だが、おっさんには通用しないぞ】

【おっさん、おもろいこと言え】


「これは水だ」


 俺はそう言って残ってた焼酎の瓶の残りを飲んだ。

 そして、焼酎の瓶をスポーツドリンクで洗って飲んだ。


「お前、酒豪だな。だがそれになんの意味がある」

「映像ではアルコールかどうか分からない。どうやって証明する」


【馬鹿なおっさんとしては、ナイスな切り返し】

【つまらん、ボケろよ】

【まともに答えるんじゃない】


「証拠をだせぇ、うっぷ。出せにゃいのならないのどうぜんにゃ」

「酔いが回ったのか?」


【棒読みなのがなんともな】

【それが味】

【これだと学校側にはどう言い訳するんだ】

【さぁ】


「ぜんぜん酔ってませんよぅ。酔ってにゃいったらにゃい」


【俺でももっと上手く演技するぞ】

【言ってやるなよ】

【でこの後どうなる】


「そんなことを言うなら、生活指導の先生の所に行くぞ。大人しく10万円はらっておけばいい物を」


【おっさんピンチ】

【ボケが招いたピンチをどう切り抜ける】

【さぁ、どうでも良い】


 職員室には多数の先生がまだ残ってた。

 生活指導の先生ははげた体育教師だ。


「なんだ、余野よの見矢原みやはら喜多本きたもととえっと誰だ?」

「先生、こいつは埼京さいきょうです。こいつ筋トレの後に焼酎を飲んだんですよ。これが証拠の瓶」

「いやだな先生、これは確かに焼酎の瓶ですけど、中身はスポーツドリンクですよ。ねっ、教頭先生!」


【何で教頭が出で来る】

【あー、金で】

【なるほど】


「先生」


 教頭はそういうと体育教師に耳打ちした。


「お前ら、悪戯ばかりしやがって。いいな、中身はスポーツドリンク。ほら、帰った帰った」


 体育教師はしっしっと手を振った。


【隠蔽体質だ】

【金の力か】

【でも法律違反ではない】


埼京さいきょう、お前、教頭先生と親戚か?」

「いいや。山吹色のお菓子の繋がり」


「お菓子がどうしたんだ」

「こいつ、ちょっと頭おかしいんじゃないか」

「白けた。今日は帰ろうぜ」


「また、美味い水を持って来てよ」


【中学生は昔の時代劇は見ないらしい】

【見てる奴がいたら珍しいだろう】

【山吹色のお菓子、有名なのに】

【菓子折りの下の段に小判だよな】

【懐かしいな】


「ふっふっふ、お主もわるよのう」


【そして、お代官様には敵いませんとか言うんだよな】

【公立中学だろ。買収して良いのか】

【寄付は買収じゃない】


「俺は悪だからな。イカサマするんだ。中学生の不良なんか可愛いもんだ」


【そうだな。最強設定だからな】

【リーダーは今日いなかったけど、どこに行った?】


「リーダーはバイトらしい」


【中学生でバイトは良いのか?】

【無許可に決まっている。俺も昔やってたよ】

【俺もだ。ゲームが欲しくてな】


 皮口かわぐちはそのうち何かやらかしそうなんだよな。

 俺の正体に薄々気がついているような感じだし。

 さて、どうなるか。

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