第35話 ダンジョン事故
テレビを点けるとうちのダンジョンの話題だった。
「うちの庭Fランクダンジョンで、死者が出ました。状況を説明するとスライムを狩ろうとして一般人が酸を全身に浴びて溶かされたようです。一緒に行った人たちがダンジョンの外に運びだすも、心肺停止でした」
「モンスターによる被害は後を絶ちませんね。ダンジョンにお詳しい
「モンスターはもれなく人食いです。のろまだと思われるスライムでも例外ではありません」
「今回の件はどこに非があったと思います?」
「昨今、ダンジョンの討伐動画が配信されていまして、あれを見ると実に簡単そうに見える。実際はスキルという異能をもった人達が討伐をしているわけでして、素人には簡単に真似できない」
「では、動画配信が悪いというわけですか?」
「それと、ダンジョンの入口には危険の立て札を立てておくべきでしょうな。今回のダンジョンは関係者以外立ち入り禁止や、危険の立て札はありません。これは過失です。できるなら塀や柵を設置するべきでしょう」
「現在警察は業務上過失致死も視野に入れているそうです」
テレビを切って、SNSを見る。
【底辺おっさんついにやったな】
【犯罪者の仲間入りか。おめでとう】
【モンスターを庇ったりするからだ】
【ふふふ、ざまぁ】
【胸がスカッとした】
【死んだ奴は可哀想だが良くやった。君の犠牲は無駄にしない】
くそっ、好き放題書きやがって、もう俺を犯罪者扱いしてる。
血相を変えて
「テレビ見たよ。安心して。過去の判例では一般人がダンジョンに入り込んで亡くなっても無罪になっている。有罪になってもきっと執行猶予が付く」
「運が悪いのは今に始まったことじゃない」
「諦めないで」
「諦めてはいない。
死中に活を求めるだったけな。
まあいいや。
とにかく勝つ。
「具体的にどうするの」
「柵を作って一般人が立ち入られないように頼む」
「任せて。1日で終わらせるわ」
どう反論したものかな。
俺はSNSに掲載する内容を考え始めた。
ふと、捏造番組が頭に浮かんだ。
あれは都合のいいところだけ切り取って編集している。
悪に相応しい所業だ。
「
「いけると思う」
「やってくれ」
俺がうちのダンジョンの脅威を訴える映像ができ上がった。
この映像は過去の物ですとして、SNSに流した。
【捏造だ】
【いや過去映像だぞ。編集はしてあるが】
【言い訳にすぎない】
【大急ぎで柵を作ってて草】
【そんなの作っても駄目なのにな】
【タイーホ】
【お前ら人一人亡くなっているんだぞ。底辺おっさんの罪を訴えるのはいいが、興味本位は被害者に失礼だ】
【安全管理の不備は明らかだよな】
炎上は止まらない。
配信のチャンネル登録者数が5万を超えている。
嬉しくない。
人が亡くなったのにそれを良いことだと言ったら、そいつはもう人じゃない。
「
「出せるけど、今は良くないと思うわ。とりあえず弔意を示めしましょう」
「よし、文章を考えてくれ。SNSで発表しよう」
「すぐに取り掛かる」
そう言えば、スライムの領域は酸を採取する彼らがいたな。
話を聞いてみるか。
「人が亡くなったらしいが、何か見てないか?」
「危ないと警告したわん」
「引き止めようとしたけど、モンスターは引っ込んでろといわれたにゃ」
「それでどうなった」
「何人かでスライムを囲んで酸を吐かれたにゃ」
「パニックになっていたからスライムを逃がして、そして彼らを救助したにゃん」
「あのままだとさらに二人ぐらいは死んでたわん」
「今から警察にに行って証言してくれ。頼む」
「分かったわん」
「了解にゃ」
「はい、にゃん」
警察に行って彼らが証言してくれた。
「ここだけの話ですが、あの件は困っているのですよ。遺族からは被害届が出されたのですが、ダンジョンの中は日本であって日本じゃないのですよ」
と愚痴る刑事さん。
「難しいことは分からないが、あそこは無法地帯だってこと?」
「ありていに言えば。それと素人と冒険者の垣根が存在しない。冒険者だと言い張れば誰でも冒険者です。冒険者の死亡率は知っているでしょ。あれをダンジョンの持ち主の責任にしたら、ダンジョン全てが立ち入り禁止になってしまう。コボルトとケットシー達には感謝状を出さないといけませんな」
分からないが、事態が難しいということは分かる。
なんとなくしっくりとはいかなかったかが、感謝状を出すというのは褒めているってことなんだろう。
突破口のひとつになればいいな。
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