第100話 不法投棄

「やって来ました不法投棄現場。おー、一昔前の家電製品とか色々とあるな。とりあえず封印。よし、作業に掛かれ」


【不法投棄のゴミを回収するのな】

【許可取っているんだろうな】


「地主には話を通してある。痕跡は辿れそうか」

「辿れそうですわん」


【追跡系スキルに掛かってはお手上げだ】

【今頃、業者はガクブルしてるかな】

【見てないだろ】

【人類は悪発言を取りせ】


「この現場をみて善だと何で言える」


【ごく一部を切り取ってそう言っても、そんなのは詭弁だ】

【生きているだけで悪発言を取り消せ】

【アンチが湧いているな】


「さて、取り立てに行くぞ」


 俺は不法投棄した業者に押し掛けた。


「ちわー、清掃代を回収に来ました」

「なんだお前は、カメラを止めろ」

「不法投棄したよね。そこ片付けたから。はい請求書」

「頭おかしいのか」


【あー、こうなるよな】

【落ちが見えた】


「呪い」


 俺は手を事務所の床に置いて、呪いを解き放った。


「何をした?」

「さてなんでしょうね」


【あー、呪い発動か】

【犯罪の証拠を押さえたぞ】

【呪いを罪に問う法律はない】


「くそ、気味の悪い奴だ」

「じゃあ、帰るけど。気が変わったら電話して」


 俺は名刺を置いて立ち去った。

 一時間もしないうちに電話が掛かってきた。

 会いに行く。


「何をやった。俺達の会社の従業員が全て癌で、余命1ヶ月なんてあり得ないだろう」

「神も怒っているらしいな」

「お前が、強力な電磁波を、俺達に浴びせたのか」

「そんなことはしてないさ」

「とにかくお前を訴えてやる」

「ご自由に」


 俺はその場を立ち去った。


【ドツボに嵌ったな】

【ノアフォロの入会資格ゲットおめでとう】

【この映像をコピーしたから、業者に送ってやるよ】


「好きなようにするがいい」


【どのぐらい業者は持つかな】

【半日だろう】

【きっと癌は転移してるぜ。断言できる】

【こんな無法が許されるのか】

【許されないと思うなら、訴えればいい】


 いくつも業者を呪ったから、電話の鬱陶しいことと言ったら。


「払います。助けて下さい。もう悪いことはしません」

「うん、ノアフォロに入ることを許そう」


【一時間で陥落する奴もいるんだな】

【そりゃ、余命1ヶ月とか言われたら、降参するしかないだろう】

【業者ざまぁ】


「何の呪いを掛けた。解呪師に行ったら、門前払いされたぞ」

「なんでしょうね」

「お前が呪いのスキルで嵌めたんだろう」

「断言するよ。俺は呪いスキルなんてものは持ってない」


【コボルトとケットシーから吸い取って利用している】

【これ、立証できないのか】

【うん、無理だろうね。呪いスキルの存在はないし、解呪できない呪いもない】

【呪いはアンデッドが使うんだったっけ】

【そうだな】


「くそう。呪いを返してやる。覚えていろよ」

「気が変わったら来るがいい」

「二度と来るか」


【後になればなるほど、つらくなるのに】

【不法投棄の全員が癌か】

【そうみたいね】

【神の呪いだっけ。神も不法投棄に関しては思うところがあるらしい】

【ダンジョンに投棄すればいいのに】

【それすると。モンスターがあふれ出てくるんだっけ】

【人命に関わるので警察がすぐに動く】


 一週間もしないうちに、全員が白旗を上げた。

 余命一ヶ月はさすがに堪えたらしい。


【やっぱりこうなったか】

【なぜだ。こんな悪党がのさばっていいのか】

【うん、おっさんだから】

【諦めろ。まあ訴えるのを止めはしないが】


「不法投棄現場があったら知らせてくれ。迅速に対応する」


【そんなの凄いあるぞ。地図をメールで送る】

【こうやって寄生される人達が増えていくのね】

【おっさん今回の騒動でかなり儲けただろう】


「そこは税理士に任せている。詳細は知らない。だが億は超えた」


【素敵、結婚して♡】

【不法投棄を懲らしめて、清掃料を取る。なんて良いビジネスだ】

【お前ら、おっさんは犯罪者だぞ。脅迫罪だ】

【告訴できればな】


 今回は悪党らしく振舞えた気がする。

 呪いは便利だが、悪用すると神が怒ったりするんだろうな。

 そんな気がする。


 次はなにやろう。

 公害をまき散らす企業をやってやろうか。

 土壌汚染とか水質汚染とか解決したいな。

 でも染み込んだ土壌などから、どうやって有害物質を分離するんだ。


 頭の悪い俺には良い方法が浮かばない。

 でもなんか方法があるはずだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る