第177話 ランクアップ
今日は冒険者バトル。
はっきり言ってパラサイトウルフの家庭への浸食が気になってどうしようもない。
「兄さん、冒険者バトルが上手くいかないって顔してるね」
そう胡散臭げな男に声を掛けられた。
「そんな顔してたか。まあいいや。何?」
「冒険者バトルをしなくても金でランクが買えるんですよ」
「違法か?」
「いやいや、合法ですよ。ちょっとだけ細工しますが」
「ふーんいくらだ」
「兄さんの現在の階級によりますね」
「Fランクの10級だ」
「それなら3万円です。この書類を出すだけです」
書類を見ると、モンスター素材納入書というのと、実績報告書と、ランクアップ申請書があった。
名前を書けば良いらしい。
ええと、素材を納入してその実績でランクアップというわけか。
うちのダンジョンの素材は納入してたぞ。
あれは俺が討伐したわけじゃないのか。
ええと、巨人の時はどうだ。
「実績ってパーティだと駄目なのか」
「駄目じゃないですが、功績割合評価ってのがあります。審査して功績の割合を出します」
うん、おっさんとしては何にもしてないな。
たぶん審査しても通らない。
大人しく3万円でランクアップしておこう。
「ほらよ」
「まいど」
名前を書き込んで、冒険者協会に提出。
そう言えば、ファントムは裏の組織と戦っているんだったな。
いい加減、それを何とかしないと。
だけど、パラサイトウルフの問題が。
嘘くさい組織をでっちあげても、フレンドリーモンスターを守る会ほどはリアルにできない。
そうか、名前を伏せてパクってやれば良いんだ。
俺はファントムになった。
「諸君、愛玩用のモンスターを使って家庭に侵略するという手を使っている組織がある。魔王を信奉する会だ」
【フレンドリーモンスターを守る会のこと?】
「いや違う、魔王を信奉する会だ」
【まあいいけど】
【愛玩用モンスターってそのまんまだが】
「パラサイトウルフだ。それが浸食してる。これはラブリードッグと別物だ」
【ラブリードッグとは違うの?】
「別物だ。ラブリードッグにパラサイトウルフが化けているかも知れない。ファントムによる検査をお薦めする」
【モンスターが化けているのか。恐ろしいな】
「魔王を信奉する会の仕業だ。手始めにこの会場で売られているラブリードッグを検査する」
【ちょっと楽しみ】
俺は檻の所に行った。
「ファントムが何の用だ」
「モンスターかどうか調べる」
「やってみろ」
パラサイトウルフを檻から出して精神魔法を掛ける。
歯を剥きだしにして掛かって来るパラサイトウルフ。
「パラサイトウルフだ」
俺はパラサイトウルフを叩き潰した。
【ほんとにいるんだな】
【俺の所もパラサイトウルフだったらどうしよう】
「安心するがいい。ファントムがチェックに駆け付ける」
【ファントムに会えるのか。ラブリードッグを飼おうかな】
【うちにも来てくれ】
初めからこうすればよかったんだ。
ラブリードッグはいるけど擬態する偽物が紛れ込んでる。
良いシナリオだ。
フレンドリーモンスターを守る会が配信を見てやってきた。
「うちのラブリードッグも検査して下さい」
反射魔道具と魔法吸収のお守りがたくさん付いている。
「いいぞ」
精神魔法、普通になれ、最大出力。
反射の魔道具と魔法吸収のお守りが壊れる。
この方法は一晩考えて編み出した。
ただ、至近距離でないと難しい。
精神魔法、素直になれ。
「がぁぁぁぁぁ、がー!」
「パラサイトウルフだ」
俺はパラサイトウルフを叩き潰した。
【フレンドリーモンスターを守る会も騙されたのか】
【恐ろしいな】
「このようにパラサイトウルフはどこにでも入り込む」
フレンドリーモンスターを守る会のメンバーが俺を睨んでる。
だが何も言えない。
無害なモンスターに化けているというシナリオは良いな。
チェックさせてくれと言えば好きな様に討伐できる。
解決策が出来て気分が晴れた。
興が乗ったのでいつもよりサクッとファントム争奪戦を終えた。
「防衛、7.5回おめでとうございます」
インタビュアーにマイクを向けられた。
「ありがとう」
「今回は決め技がなかったようでしたが?」
「ネタ切れではないノーマルモードという技だ。普通に見えるが、普通ではないのだ。そこがこの技の恐ろしさだ」
「そうですか。最後に何か一言ありませんか」
「普通に見えて普通ではないというモンスターがいる。パラサイトウルフだ。最近分かったのだが、ラブリードッグに擬態してる。ラブリードッグをパラサイトウルフと言って悪かった。あれはパラサイトウルフが擬態した姿だ。魔王を信奉する会がこれを主導している」
「恐ろしいですね。見事、防衛を果たしたファントムさんでした」
「サンキュー。さらばだ」
恐ろしいモンスターが擬態してる。
このシナリオは良いな好き勝手出来る。
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