第178話 仕組み
ラブリーネスト、14階層。
なんじゃこりゃ。
【ぬいぐるみだね。樹とか草にぬいぐるみが生っている】
【ラブリードッグと合わせると破滅的可愛さだ】
「ファントムから聞いたが、ラブリードッグとパラサイトウルフは別物だったってな。襲い掛かってくるやつがパラサイトウルフ。よし、襲い掛かってこないのは無視するぞ」
パラサイトウルフは隙を見せなければ襲ってこない。
ボス部屋まで到着した。
この扉の大きさはラスボスだな。
いよいよここも終わりか。
中に入るとボスパラサイトウルフがぬいぐるみを従えてた。
【ボスは襲い掛かってくるから、パラサイトウルフか】
【そうなるな】
【おっさんとフレンドリーモンスターを守る会が和解できたようで良かった】
ボスパラサイトウルフが繰り出して来るぬいぐるみは痛覚も何もないらしい。
ボスはあっさりと死んだ。
さてと、ダンジョンコアだ。
俺はダンジョンコアに手を掛けた。
【まさか取るつもりじゃ】
【やめろ。ラブリードッグの楽園を壊すな】
「ファントムなら、許せ。パラサイトウルフの根を断つためにはこうしないといけないとか言うんだろうが。俺は違う。金になるなら奪う。合法ならなおさらだ」
【あー、確保隊遅いよ】
【まあこうなるよな】
ダンジョンから出ると俺はファントムになった。
そして検査の旅に出る。
パラサイトウルフの発見率は100%だ。
ファントムのSNSには、発見してくれてありがとうのコメントが多数寄せられた。
俺がパラサイトウルフを全部潰すのが先か魔王がパラサイトウルフを使って襲撃するのが先か。
間に合わないような気がした。
「ファントムだ。ラブリードッグのチェックにきた」
呼び鈴を鳴らし、声を掛ける。
「はーい、ドアを押してお入り下さい」
ある家にお邪魔した時にドアの開く向きが逆だった。
外に開くんじゃなくて、内に開くのか。
どういう経緯でドアがそうなったか分からないが、呼び鈴を鳴らした時に注意されなかったらドアを壊してたところだ。
よく見ると、玄関の脇の壁に、引いて駄目なら押してみな、押して開けて下さいとある。
俺の脳内を稲妻が走った。
そうか、引いて駄目なら押す。
逆のことをやる。
庭の檻に入っているパラサイトウルフのフレンドリーベルに向かって俺は呪いを放った。
パラサイトウルフの毛が逆立って目が真っ赤に染まる。
そして、檻に噛みついて鉄棒を噛み千切った。
これが、襲撃事件を起こすと言っていた仕組みか。
鉄棒を食い千切る力で噛みつかれたら死者多数だな。
俺はパラサイトウルフを殴って殺した。
「あんなに狂暴になるんですね。檻を食い千切るなんて」
「こんなケースは稀だ。だが今後増えるかも知れん」
負の力が溜まると、暴走するんだな。
きっとフレンドリーベルで大人しくしておくのは負の力を吸い取って溜めているんだ。
となると時間がないな。
フレンドリーベルの仕組みが分かった。
後はこれで注意喚起するだけだ。
ファントムのアカウントでSNSを使って、『緊急、人命が掛かってます』と書いて動画を添付した。
動画にはフレンドリーベルの副作用として、檻を食い破る程に狂暴になりますという実験映像を載せた。
SNSで瞬く間に拡散していく。
フレンドリーモンスターを守る会は火消しに必死だ。
だが、今回は証拠がある。
仕組みも理に適ったものだ。
大人しくするには負の感情を吸い取る、そして暴発する。
スタンピードが発生。
パラサイトウルフが暴れ始めた。
何匹かは暴走状態になってるらしい。
だが、数が少なかったのでパニックになる程ではない。
自衛隊の戦車が手を焼くモンスターが現れた。
テレビで中継されて、SNSにも動画が流れた。
その姿は狙撃された冒険者が語ったものだった。
2本の角に黒いオーラ。
戦車の砲弾も片手で軽々と受け止めている。
腕を振るえば、街が瓦礫の山となる。
俺はファントムの仮面を被って駆け付けた。
ついに魔王戦か。
動画をAIで作る会社に動画制作を依頼。
AIの動画作成は早い。
10分で出来上がった。
ファントムに問い詰められ、買取場のおっちゃんが魔王に変身する動画を捨てアカウントでアップした。
よし、当初のシナリオになったぞ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます