第179話 魔王討伐

「ついに某協会に巣食う闇の組織と対決する」


【ファントムが魔王戦を配信か】

【魔王って冒険者協会に巣食ってたの】


「先制攻撃だ。レイザーブレード」


 アダマンバールがあまりの速さに燃えて真っ赤になって、魔王に突き刺さる。

 魔王はうるさそうに片手を上げただけだ。


【必殺技が効かないなんて】


 魔王が俺を殴る。

 俺は塀や壁をいくつも突き破り止まった。


【ファントムが負けた】

【映像切れたぞ】



 俺はおっさんになった。

 ファントムを幻影魔法で映し、ファントムのアダマンバールを拾い上げる。


【おっさんと、負けたファントムか】

【バールを拾い上げて何するつもりだ】


 魔王のもとに戻る。

 幻影魔法で魔王が苦しむ様子を映した。


「くっくっくっ、あと一撃で魔王は死ぬ。ファントムありがとよ」

「狂人か。殺してやろう。それにしても忌々しい。ラブリーベルの仕組みをファントムに暴露されて計画が狂った。おかげで準備が完璧に出来ぬままの蜂起になって、我も出て来ざるを得なくなった」


「ふっ、弱者の一撃」


 俺はわざとヘロヘロにバールを振った。

 魔王は完全に油断している。

 こんなの避けることもないと思っているのだな。


 当たる寸前に全力を込める。

 魔王の首が千切れ飛んだ。


 幻影魔法の魔王は股間に一撃を食らって悶絶。

 倒れた所を戦車砲で死んだ。


【これっておっさんが魔王を倒したのか】

【股間に一撃って】

【止めは戦車砲だろう】


「ふっ、俺はファントムに勝った魔王に勝った。ファントムと魔王の称号は俺が頂いた」


【魔王(笑)、そんな屁理屈通らないから】

【おいファントムが引退するぞ】

【嘘だ】

【魔王に負けたのがショックだったのかな】


 ファントム引退の書き込みは弥衣やえがしている。

 魔王が死んだタイミングでするように連絡しておいた。


【おい冒険者協会に魔王の手先がいたらしいぞ。魔法で洗脳されてたらしい】

【買取場のおっちゃんもか】

【そっちはフェイクニュースらしい】

【フレンドリーモンスターを守る会にも警察が踏み込んだ。こっちは魔王を信奉するカルト教団だったらしい】

【警察遅いよ。事が起こる前に逮捕しろ】


 いろいろと急展開すぎる。

 警察は前から調べていたようだ。

 今回のスタンピードで逮捕に至ったらしい。

 容疑は、フレンドリーベルが暴走を起こすと知っていて販売した疑い。

 どういう罪になるか分からないが、最終的には狙撃事件との関連を疑っているのかな。

 いずれ明らかになるだろう。


【ラブリードッグの99%はパラサイトウルフだったみたいだな】


 暴れなかったパラサイトウルフがいたようだ。

 こういうのを品種改良すれば大人しくなるのかもな。


 家に帰ると、弥衣やえ綺羅々きららが来てた。


「ファントム様も引退か。私も引退しようかな。お金もだいぶ貯まったし」


 綺羅々きららにファントムの正体をばらそうかな。

 いや、夢を壊したらいけない。

 弥衣やえと結婚する時に話そう。


「これやるよ。記念に持って行け」

「それはファントム様のバール。盗んだのね」

「ファントムに魔王を倒すために一撃加えるって言ったら、持って行けと言ったぞ。持って行けだから、返す必要はない」

「なら、いつの日か私がファントム様に返す」


 冒険者協会、買取場。


「お前、あのフェイクニュース作ったのお前だろ。魔王と呼ばれて大変だったぞ」

「なんのことかな」

「じゃあ俺はお前がファントムだっていうのをばらす」

「ますますもってなんのことかな。ピューピュー」


 あんなのジョークだろ。


 武器工房。


「お前か、ファントムのバールを作ったのが俺のところだと吹聴してまわったのは」

「アダマンタイトでバール作っただろう。あれがファントムの手に渡った」

「マジか。くそっ、それにしてもな。注文がバールばかりで嫌になるぜ」

「じゃあ、蠅叩き作ってよ。安いのは駄目だ。一回で壊れる」

「また、金に糸目をつけないで作れとか言うんだろうな」

「まあね」

「くそっ、やりゃいいんだろ。バールなんざ見たくないから作ってやる」


 うちのダンジョン。


「おー、ピカピカの巨人だ」

「輝きからするとミスリルよ」

「10億は行くな。もっとか」


綺羅々きららちゃん、辞めさせてもよかったの」


 ミスリルジャイアントがパンチしてきた。

 無粋な奴だ。


「おっと、会話中に攻撃してくるな。ここからはCG。連打連打連打ぁ」


【最近、またCGが多くなった】

【いや魔王の股間を殴った男だぞ】

【あれは傑作だった】

綺羅々きららちゃんの引退は残念だった】

【ファントムを探し求めているらしいぞ】


 ミスリルジャイアントはただの金属の塊になった。

 俺はカメラのスイッチに手をやった。


「俺には弥衣やえがいれば良い」

「あなたがファントムだって綺羅々きららに言ったら、ハーレムに加えてとか彼女、言いそうだったよ」

「良いんだよ。ああ、モチとキナコとシロガネもいて貰わないと困る」


「お供しますにゃ」

「どこまでもだわん」

「わふう」


 よし、うちのダンジョン制覇に向けて頑張るぞ。

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