第176話 雪原
ラブリーネストの13階層は雪原。
パラサイトウルフの毛には雪が毛玉のように付いていた。
【雪を溶かしてやりたい】
【ラブリードッグも雪が好きなんだな。元気に走り回ってる】
【この白い雪も赤く染まるのか】
【確保隊、何やってんの】
【ア○ム、毒装備持って来い】
【毒ゾーン装備の製作中】
【そんなの間に合わない】
「邪魔な奴だけ殺していくぞ」
了解の声が上がる。
点々と続く赤い色は、血で舗装された道のようだ。
【酷いな】
【綺麗だと思ってしまう俺がいる】
【サイコパスだな】
【真っ白な雪に血の赤は映える】
【またひとりサイコパスが】
血の赤が強調されるためか、とても冷たく残酷に感じる。
こいつも、戦略のひとつか。
ボスまで、簡単に行けた。
パラサイトウルフは雪の中の行動にそれほど向いていないようだ。
寒さには強いのだろうけど。
ボスはひと際長い毛並みのパラサイトウルフだった。
長毛種かな。
「撃て」
【また希少な種がひとつ】
【ボスは確保できないから諦めろ】
【くそっ、毒ぐらい解毒剤飲んで強行突破しろよ】
【お前がやれば良い】
ボスは吹雪を操る奴だった。
だが、それぐらいではやられない。
フロストジャイアントの方がはるかに強かった。
ハリネズミになるボス。
【長毛種良かったのに】
【可愛いのは認めるが、どう猛な獣が可愛くっても仕方ない】
【可愛いは正義】
ポータルに登録して外に出た。
相変わらず、パラサイトウルフを檻に入れて売っている。
くっ、ここで思いっ切りアダマン鉄パイプで暴れられたらな。
俺は腹いせに素直になれと精神魔法を掛けた。
檻にいるパラサイトウルフが一斉に騒ぎ出す。
歯を剥きだしたその姿は猛獣だ。
【なんなん。救急車でも通ったか】
【パトカーとかのサイレンにも反応するね】
【まあ、よくある事】
「攻撃です。魔法攻撃を受けてます」
【魔法攻撃か。ファントムが言ってた魔王かな】
【モンスターを守る会は気にし過ぎじゃね】
【魔法攻撃を感知しました。至急対策を講じます】
【きっと理性を失わせる奴だな】
【人に被害は出てないけど】
フレンドリーモンスターを守る会の人達が犯人を捜し始めた。
ここまでかな。
俺は魔法をやめた。
家に帰ってSNSをチェックする。
フレンドリーモンスターを守る会から新製品が出てる。
檻に貼り付けるお守りらしい。
俺も直営店で買ってきた。
お守りの中身を見る。
これは、魔力イレーサーDXじゃないか。
魔力イレーサーDXは魔力の影響を消し去る。
ゴブリンの檻にお守りを貼り付けて、精神魔法を使うと、無効化された。
フレンドリーモンスターを守る会は対策が早いな。
しかし、こんなに早く短期間で開発して売り出すのはちょっと普通じゃない。
よほど、頭の良い奴がいるんだろうな。
とにかく精神魔法でというのは、これからは防がれると思った方が良いだろう。
反射魔法の魔道具までフレンドリーモンスターを守る会は売り出した。
くそっ、やるな。
もっとも素直になれという精神魔法を反射されても問題ないか。
でも試してみないとな。
ゴブリンの檻に取り付けて精神魔法を掛けてみた。
ゴブリンを殺したい。
俺はアダマン鉄パイプで檻ごとゴブリンを壊してた。
これは不味い。
ファントムが暴走したら、指名手配犯になってしまう。
くっ、もうパラサイトウルフに精神魔法を掛けるのは辞めないと。
だって、どこに反射の魔道具が取り付けられているか分からん。
試してみて良かった。
俺は馬鹿だから、製品は自分で試してみないと納得がいかない。
今回はそれが功を奏した。
フレンドリーモンスターを守る会が、キャンペーンを打って来た。
檻とフレンドリーベルとお守りと反射魔道具を無料で配布するという。
条件はパラサイトウルフを飼うことだ。
フレンドリーモンスターを守る会は守銭奴だと思ってた。
違うのだな。
確保隊も気合を入れて、ダンジョンからパラサイトウルフを運び出している。
パラサイトウルフの家庭での数を増やすのが目的か。
これを打破する方法が思いつかん。
危険の周知はするにしても、それだけじゃな。
くそっ、指を咥えて見てろってのか。
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