第130話 畑フィールド

 巨人のダンジョン。

 畑フィールドだ。

 人間の背丈ほどある各種の野菜が植えられている。


 巨人の武器は鉄製の農具。

 ファーマージャイアントかな。

 まあ、丸太が農具になったところでそれほど変わりはない。


 俺は巨人の作っている野菜の味が気になった。


【野菜丸かじり。お味は?】

【美味くないと聞いている】

【美味かったら、略奪しているだろう】

【巨人討伐をやめろ】

【巨人擁護派は被害者遺族動画を見てないのか】

【見てるわけないだろ】

【畑から作物を奪うのは窃盗だ】


「うん、薄味だ。乾燥したら食えるかな」


【なに平気で食っているんだよ。巨人達に謝れ】

【乾燥は食えるだろうけど、縮んで普通の野菜と変わりなくなるぞ】

【カロリーは低そうだから、ヘルシーメニューに良さそうだな】

【おっさんは討伐に加わらないのかな?】

【思うにモンスター別世界からの侵略者】

【その説に信憑性はないはずだ】


「真打は最後に出る」


【巨人の農具が怖いんだな】

【あの大きさは怖い】

【彼らは恐ろしくないのです。話合えば友達になれるはずです】

【でもくず鉄として売れそう】

【くず鉄は安いぞ】

【巨人の肉も肥料じゃ大した値段にはならない】

【ハズレダンジョンだからな。モンスターの強さに比較して、実入りが少ない】

【ヤエちゃん達、普通に強いな】


「巨人は討伐すべきモンスターだ。スタンピード被害者の約3割が巨人によるものだ」


【おっさんが数字を持ち出してきた】

【確かに巨人はオーガ並みに強い。それがわんさか出て来るんだから被害は多いだろう】

【でも重火器でイチコロだ】

【まあな】

【被害の約3割はオークとゴブリンだ】


「オークとゴブリンは普通の冒険者が倒せる」


【だからって、巨人を目の仇にするのは間違っている】

【ちょっとおっさんぽくないアプローチだな】


「俺は巨人の断末魔が好きだ。人間に似ているからな。人間を殺せば罪になるが巨人は大丈夫だ」


【うわっ、サイコパス発言】

【許せません】


 いや、断末魔が好きと言ってみたが、ちょっと違うな。

 実際は好きじゃない。

 ここで悪党らしい発言は。


「体のでかい奴は嫌いだ。格の差を主張してくる。そういう奴らをぶちのめすとスカッとするんだよな」


【コンプレックスか】

【この発言はおっさんらしい】

【体が大きな人は大らかなのです】

【それはモンスターには当てはまらないだろう】

【巨人は優しき隣人です。きっと何かの精神支配を受けて人間を襲っているのに違いありません。ですからそれを断ち切るためにも会話が必要なのです】

【ダンジョンのモンスターがコアの支配を受けているという学説はあるな】


「モチ、異世界のダンジョンじゃない場所にいた巨人はどんなだ?」

「もれなく人食いにゃ。ダンジョンの中でも外でも変わらないにゃ」

「だそうだぞ」


【信じられないな。言葉では何とでも言える】

【俺はモチの言うことを信じる】

【まあ、現時点で巨人は人食いなわけで】

【だから、ダンジョンの呪縛がそうさせるのです】


 俺もモチを信じる。

 難しいことは分からない。

 モチが敵だというなら敵だろう。

 それに俺も相対してみて巨人殺意は感じた。

 人間を餌としか見てない奴らに話が通じるとは思えない。


 ファーマージャイアントを30体ぐらい討伐して終わった。

 マップもかなり埋まったがまだ先は長い。


 ダンジョンから出ると巨人を守る会が討伐反対の声を上げてた。


綺羅々きらら的には巨人さんと分かり合えるならそうしたい。だからこそダンジョンコアを取りたい。そうすれば呪縛は解けるでしょ」


 綺羅々きららが配信してる。

 真っ向から否定はしないのだな。

 賢いな。

 ダンジョンコアを奪われると、ダンジョンはもうモンスターを生み出さない。

 討伐されて数が減れば、もうそのダンジョンのモンスターは滅亡だ。

 綺羅々きららもそれは分かっている。

 分かっていての発言だ。


 ずるいとは言わない。

 何かしら人は演じているのだから。

 俺も悪を演じてる。


 さて、巨人の肉だ。

 コボルトとケットシーにある程度消費させるとして、肥料は再開させたい。

 俺は、弥衣やえに頼んで巨人肥料の通販を開設させた。


 売り行きは良い。

 だって野菜が良く育って美味いから、農家は使う。


 だよね。

 野菜の消費者は肥料まで気にしない。

 農家も言っていた。

 そりゃ狂牛病で肉骨粉を肥料に使わないというか使えなくなったけど、あれって野菜にはなんの影響もないんだよ。

 で、ほとぼりが冷めたら使ってる。

 そんなもんだよ。

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