第129話 ウッドジャイアント

 巨人のダンジョンに来ている。

 フィールドは草原から森に変わっている。

 巨人の背丈が、前の巨人から更に20センチぐらい大きくなった気がする。

 それと、手に丸太を装備してる。

 ウッドジャイアントだな。


【ここら辺りから少しずつ強くなっていく】

【Aランクダンジョンの看板に偽りなしだ】

【水鉄砲の射程だと丸太が届くぞ。もっとも背後からなら関係ないが】

【正面から行ってぶちのめされるのを希望】

【巨人は知的生命体です。討伐を即刻辞めなさい】

【今度はこういうアンチか】

【普通のアンチもいるよ。おっさん氏ね】


「盛況だな。じゃあ行ってみようか」


 俺はウッドジャイアントの後ろに回って酸鉄砲を撃った。

 ウッドジャイアントの背中から白煙が上がる。


 綺羅々きららが斬りかかったのが見えた。

 ウッドジャイアントは俺のことは後回しにするつもりらしい。

 丸太で綺羅々きららに殴りかかった。

 綺羅々きららが大剣で丸太をいなす。


綺羅々きららちゃん、援護行くよ」


 弥衣やえがバリスタを発射。

 矢はウッドジャイアントに深々と刺さった。


「トニカ!!」


 ウッドジャイアントが吠える。

 意味は相変わらず分からない。

 分かっても討伐は辞めないが。

 酸鉄砲で援護。


【後ろからちまちま削る。実にクズらしいな】

【うん、ゲスいな】


 綺羅々きららが、剣に酸を纏わせ丸太を両断した。

 キナコとモチがバリスタの装填を完了させた。

 今度は酸を塗ったようだ。

 矢はウッドジャイアントを貫通。

 彼方へと飛んで行った。


 そして、綺羅々きららがウッドジャイアントの腹を斬り裂いた。

 どうやら勝負ありだな。

 ウッドジャイアントは崩れるように倒れ込んだ。


 酸がないと、弥衣やえ達もきついな。

 しょうがない、切り札を出すか。


「ちゃらん、酸バズーカ砲」


【プールでお子様が使っている奴ね】

【ミスリル製か、金を掛けているな】

【これで顔面をやるつもりか】

【ゲス感が消えないのはなぜか】

【やめなさい。やめるのです】

【知的生命体って言うならオークもだろ。あいつらも言葉らしきものを喋る】

【ゴブリンもな】

【古代の地球には巨人族が住んでいたのです。絶滅した彼らが帰ってきたのです。彼らを受け入れるべきです】

【ゴブリンの名付けの元となった妖精も伝承にはあるが。これとダンジョンのゴブリンがなぜ違うと言える】

【巨人は味方につけるべき人々です】


「バズーカ発射」


 ウッドジャイアントが顔面に酸を食らって、丸太を滅茶苦茶に振り回し始めた。

 綺羅々きららが冷静にウッドジャイアントの手首を切り落とす。

 弥衣やえがバリスタを発射。

 今度は急所に当たったようだ。

 ウッドジャイアントは断末魔の悲鳴を上げて倒れた。


 ハイタッチする二人。

 俺もハイタッチに加わった。


【こんな暴挙は許せません】

【この動画を拡散させて、世論に訴えよう】

【みなの力が巨人を救う】


 そして、連携も慣れて、ウッドジャイアントを20体ぐらい倒せたので、今日は終りにした。

 さて、こっちも世論に訴えるぞ。


 スタンピードが起こった時に巨人が人を襲っている映像を編集。

 かれらは良き隣人ですかと訴えた。

 そして巨人の被害者の遺族などから、コメントを集めた。


 父さんを返せだとか、子供を返せだとか訴えてる。

 もちろんお金も少し使ったが。


【巨人に食われる動画。モザイクが掛かっているが、それでも正視できない】

【これもると巨人は要らないな】

【モンスターだという主張も頷ける】

【ファントムにも意見を聞きたい】


 ファントムの巨人に対するスタンスね。

 討伐しないということはないな。

 事実、駆けまわっている時に巨人も葬り去った。

 どういう正義が良いだろう。


「ファントムだ。巨人について、ひとこと言いたい。善悪を判断するのに古来より人は法を使ってきた。街で巨人が人々を襲うというのなら、巨人を狩ろう。襲い掛かってこない巨人を討伐するのは悪だと言える。法に従うべきだ」


 そういう映像を流した。


【正当防衛なら許されるのか。じゃあ最初の一撃は受けないといけないってことか。そんなことができるのはファントムだけだ】

【巨人は友達になれる資質をもった人々です】

【俺は巨人と仲良くなれたら良いなとは思うよ。平和が一番】

【モンスターは討伐しないと】

【みなさん、野蛮な思考に染まってはなりません】


「法治国家なのだから法に従うべきだという私に文句があるなら、対案を示したまえ」


【ある意味正論だからな】

【モンスターには人権なんかないだろ。討伐しても良いに決まってる】

【コボルトとケットシーという前例がある】

【彼らはモンスターじゃない。魔石がないからな】

【魔石の有無で知的生命体かどうか決めるのですか。一考して下さい】


 いまいちだな。

 なんか強烈さが足りない。

 ファントムに巨人は善だと言わせるのも違う。

 もうちょっと考えたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る