第124話 ファントム動画
ええと、そっちがそうするなら、俺にも考えがある。
おちょくってやれ。
ええとファントムは正義の使者。
俺の立ち位置はライバルの悪党だな。
悪と正義を一人二役。
面白いな。
ファントムとして顔は晒せない。
じゃあ仮面を被ろうか。
チアフルの時に被ってた仮面があるからあれで良い。
チアフルの男の方がファントム。
うん、いきなり現れたんじゃなくて過去から活動してた。
良いんじゃね。
「悪だくみしてる顔をしてる」
「チアフルの時の仮面を被った俺はファントム。
「うん」
「じゃあ、ファントム動画を撮ろうか」
仮面を被って失踪する俺の様子を
アスファルトが燃える所が撮れたかな。
そして、急停止。
仮面の姿を映した。
「俺はファントム。モンスターを憎む男。正義のバールが唸るぜ。素顔は秘密だ」
そう言ってまた駆け出した。
撮った動画は
適当なアカウントと名前で動画サイトにアップした。
そうしたら、偽物が出るわ出るわ。
フェイク動画まで作る念の入れよう。
俺のより恰好良い動画もあった。
俺は追加の動画を上げた。
「ファントムを騙るものよ。ファントムだというのなら冒険者バトルで俺と対戦しろ」
この動画を上げたら、ほとんどが沈黙した。
楽しみだという剛の者もいる。
たぶんSランク1級の肩書が欲しい冒険者だろう。
冒険者協会は、ファントム争奪戦なる冒険者バトルを開催すると発表した。
観客が呼べれば本物か偽者かは関係ないらしい。
民間企業から人材をたくさん入れた効果が出ているな。
さて、俺はライバル宣言をしないといけないな。
「俺はおっさんで通っている悪党冒険者だ。ファントムの野郎は我慢できない。いつか叩きのめしてやる。ファントムの大事なものを滅茶苦茶にするから楽しみにしとけ」
【おっさん、ファントムに絡むのかよ】
【無茶だろ】
【殺されたりはしないだろ。あっちは正義の使者だからな】
「今まで俺は幻想の中にいた。今こそ現実に踏み出す時だ」
【なんのこっちゃ】
【また意味深なことを言い始めたな】
【どういうこと?】
【おっさんの考えなぞ分からん。考えるだけ無駄】
さて、5階層だ。
花畑フィールド。
ここの特徴は花の花粉や香りが状態異常を起こすってことだ。
俺達はガスマスクを着けて討伐している。
最初の敵は、ラージホーンラビット。
こいつの角に触ると幻覚に侵される。
「てやっ」
俺はアダマン鉄パイプをヘロヘロと振った。
当然、ラージホーンラビットにダメージはない。
「私が」
【あれっ、おっさん弱くなった】
【がはは、おっさんはFランク10級だって知ってたか】
【えっ、ダイヤドラゴンを倒したあの強さは?】
【いやこのダンジョンでも大活躍してただろ】
「てやっ。こいつ強敵だ。ボスモンスターに違いない」
【うん、ふざけているのか】
【ああっ、謎が解けた。今までは幻想の中にいたって言ってたよな。今まではCGだったんだ】
【えっ、それを蒸し返すのか】
【金さえあれば可能だろ】
【コボルトとケットシーが大勢いるのは間違いない。俺も目にしたからな。彼らを奴隷にして、稼いだ金でCGを撮ってた】
【そんな馬鹿な。今までが釣りだったのか】
【実際の討伐も、コボルトとケットシーがやってた】
【ヤエちゃんの実力は本当みたいだから、ヤエちゃんもな】
【シロガネもペットだからな。餌で釣ったのだろう。餌を上げる人には逆らわないからな】
【面白い展開だ】
「やぁ。ようこそ、カクテルハウスへ。このカルアミルクはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。うん、済まない。謝って許してもらおうとも思っていない。でも、この会話を聞いたとき、君は、きっと言葉では言い表せないときめきみたいなものを感じてくれたと思う。殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい。そう思って、このCGを作ったんだ。じゃあ、注文を聞こうか」
【なんだ、釣りかよ】
【盛大だな。気に入ったよ】
【カルアミルク寄越せよ。飲んでやる】
【完全に釣られました】
「俺はファントムのライバルだ。正義の使者のライバルは悪党が相応しい」
【はいはい】
【この後の展開がちょっと楽しみ】
【うん、ファントムに無様に負けるんだろうな】
【あのへろへろ殴りじゃ仕方ない】
【過去動画みたけどCG技術って凄いな】
【ファントム動画もCGだろ。本物があんなにいるはずない】
【あれも良く出来ているよな】
【おっさんが金持ちだってのも嘘?】
【そこは本当だろ。CGは金が掛かる】
「コボルトとケットシーをこき使って沢山稼がせてもらったぜ」
【数千人規模の給料だといくらになるか想像がつかん】
【あのダンジョン素材は?】
【コボルトとケットシーが獲ったのに決まっているだろ。だって今は彼らとノアフォロが獲っている設定だ】
【どれが本当でどれが嘘か分からん】
【金の部分以外は全部嘘じゃないか】
うんうん、上手く転がっている。
よし、討伐は
危なくなったら、ファントムの出番だ。
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