第123話 ファントムの虚像
テレビを点けるとどのチャンネルもあふれ出たモンスターの話題で持ち切りだ。
この現象をスタンピードと名付けたらしい。
ふーんと言うしかないが。
壊したガラスの弁償代はうやむやになった。
それじゃ悪いので、復興資金の寄付に匿名で1億円を送っておいた。
「コボルトとケットシーのマンションの近くは彼らの活躍で被害が少なくて済んだみたい」
「そうか。コボルトとケットシーの差別が完全になくなると良いな」
「今回は儲けさせてもらったわね。ドラゴンを仕留めたから、1千万にはなったわ。と言ってもレッサーだけど」
「
「いいえ、ミスリルの剣を作ってもらったから。あれは3千万ぐらいでしょう」
「まあなツケにしておいてやるよ」
【
【ひとの女の心配をするなんて、度量の大きい奴だな】
【まだひとの女だと決まったわけじゃない】
【
【それにしてもスタンピードが起こるとは】
【俺も冒険者になろうかな】
【
【乱交か】
【アンチ増えたな】
【おっさんのハーレムに加わったからな。俺は純粋に討伐動画が面白いから見ているが】
【ハーレムになんて加わってない。ただの討伐パーティだ】
【そうだな。俺は
【
それほど荒れてないようで安心した。
チャンネル登録者数は激減したと言っていたが、ポーション代を稼がなくていいので気分は楽みたいだ。
「今回の件で冒険者協会は新たな改革を打ち出すようです」
テレビのコメンテーターがそう言った。
「どのような改革でしょうか」
アナウンサーが尋ねる。
「まず、冒険者協会から政府の補助金を減らしていって完全に民間企業とするそうです」
「民間になる利点はなんでしょうか?」
「民間の視点を取り入れることですね。そして、現在ある階級を10分割するそうです。Fの10級からSの1級までです」
「ほう、階級を細かくした理由は?」
「今まではなかなか階級が上がりませんでした。それが10倍上がり易くなったと言えますから、モチベーションが違うと思います」
「その他には変更点がありますでしょうか?」
「ランクの変動は依頼ではなくて、民衆の人気と実力によるものとなります」
「それでは芸能人の方とかが有利なような」
「そう言った方は指名依頼で依頼が果たせなくなってランクが下がります」
「なるほど、身の丈にあってなおかつ人気がある方でないといけないのですね」
「冒険者の暴力事件が後を絶たないのはご存じだと思います。ですので人格も求められると言ったところです」
「なるほど」
「ランクを上げるのは冒険者バトルという方法も取られます。これは冒険者による闘技大会でランクを上げてもらう方法です」
「どのような効果を狙ってですかね」
「技を磨いてほしいということです。そしてスポーツマンシップを身に着けてほしいと。ですから大会では違反行為は厳しく取り締まります」
「良く分りました」
そして、冒険者ランクのホームページのアドレスとコードが表示された。
俺はさっそくアクセスしてみた。
検索欄に俺の名前を入れる。
えっ、Fランクの10級。
ええと一番下ってことか。
「私はAランク5級だった」
「やった。私、Aランク3級。てへへ」
いったいどういう基準だ。
俺の人気がないってことか。
いや、俺のチャンネルは登録者数もそれなりにいる。
ランクに関しての異議申し立てがある。
俺はそこにメールを送った。
しばらくして、返事が返ってきた。
ランクの評価はスタンピードでの活躍と、日頃の人格の評価からなされてますとある。
スタンピードの時に俺って活躍したよね。
どうなっているんだ。
ランクの順位を上から見る。
1位のSランク1級は一人だけ。
ファントムという名前。
外人か?
どんな奴だ。
検索掛けると、ファントムが走った後はアスファルトが燃えるんだぜとか、走った衝撃でガラスが砕けるとか、エルダードラゴンも一撃とか、ヒュドラの再生も追いつかないとか、オークキングも魔力切れとか、フェンリルも形無しとかある。
なんか身に覚えがあるんだけど。
これって俺のこと?
早すぎて顔は確認できてないとある。
おう、そうなっているのね。
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