第216話 遠足

 今日は遠足。

 電車で1時間。

 山がある所まで移動。


 はぐれモンスターもいるので、冒険者協会から派遣された冒険者が護衛に就く。

 生徒もみんな武装している。

 俺の武器はもちろん鉄パイプ。


【物騒な遠足だが、今はこれが普通】

【まあ定期的に自衛隊などが山狩りしているから、モンスターはほとんどいないがな】

【スタンピードが起こってモンスターがダンジョンから溢れると、山は危険地帯だけどもな】


「みんなはぐれないように。置いていかれるとモンスターが出て来て怪我を負うこともあるからな。最悪は死ぬ。脅しじゃないからな」


 先生がそう言って遠足が始まった。


埼京さいきょう、お前、斥候だろ。モンスターを釣り出してこい。冒険者の戦闘がみたい」


 見矢原みやはらがそう言った。


【おっ、イベントが始まった】

【今回はどきっ♡遠足でモンスターと戦闘の巻だな】

【なんかエロいタイトルだな】

【グロいの間違い】

【内臓ポロリもあるよ】

【そこはおっぱいじゃないのか】


 俺は気配を消して、集団から離れて、一人先行する。

 モンスターはいない。


 だよな。

 遠足する前に山狩りしているはずだ。

 もともとはぐれモンスターは珍しいのに、そう都合よく現れない。


 どうしよう。

 ちょっと隣の山まで行って来るか。

 隣の山まで足を延ばした。

 オーク発見。


「来い豚野郎!」


【オークに豚野郎は悪口なのか?】

【うんうん、豚だからな】

【ここはもやし野郎と言うべき】

【でも底辺おっさんを追って来ている】


 隣の山からオークを引っ張ってきた。

 護衛の冒険者になすりつける頃にはオークは息絶え絶え。

 運動不足だぞ。

 まあ、山ひとつ全力疾走すれば、そうなるか。


「助けて!」

「だから、集団から離れたら危険だと。護衛の方々お願いします」


 先生がちょっと怒っている。


「おう、どりゃゃあ!」

「リーダー。このオーク弱っていたな。一撃だ」

「何かに追われていたのかもな。気をつけて進もう」


【へっぽこだ】

【追っていたのと追われていたのの違いなんか判らん】


埼京さいきょう、なんか思ってたのと違う。もう一回行け」


 見矢原みやはらがまたも言った。


「いや、この山にもうモンスターはいないと思うよ」

「何で知っているんだ」

「調べたから」

「嘘言いうよ。この山がどれだけ広いと思っているんだ」


 やべっ、失敗したな。

 ええと。


「怖くて嘘を言いました。オーク怖かったです」


 これで良いか。


【台詞、棒読み】

【毎度のことだ気にするな】


「行けよ」

「おす」


 ええと、先生に丸投げするか。

 先生のそばに言って小声で話し掛ける。


「先生、モンスターを釣り出せと見矢原みやはらが」

「仕方ない奴だな」


 先生が見矢原みやはらの所に行き、話し始める。


「こら見矢原みやはら、みんなを危険にさらすような真似はするな」

「チクったな」


 俺は先生の後ろであかんべーをした。

 見矢原みやはらは怒り新党、あれ浸透だったっけ、いや心頭か。

 俺は逃げ出した。


 先生の制止を振り切って、追って来る見矢原みやはら

 俺は付かず離れずの距離を保って逃げた。

 見矢原みやはらはすぐにバテた。

 山の中を駆けるのは体力が要る。


【さあどうなる】

【モンスターの影が】

【ほんと出やがった】


 オーガがいる。

 仕方ないな。

 気絶した見矢原みやはらは放っておいて。

 俺はアダマン鉄パイプでオーガを一撃。

 オーガの頭蓋骨は陥没した。

 もちろん即死だ。


 見矢原みやはらを揺すって起こす。


「はっ、オーガは?」

「ヤングファントムがやっつけてくれた。見ろよバールで一撃だ」

「本当だ。くそっ何で気絶したかな。見たかったぜ。お前、俺が気絶したことは秘密だからな。喋ったら殺す」

「言わないよ」


【つまらん】

【なんというかドラマがない】

【ここは俺に任せて逃げるんだとかやって欲しかった】

【気絶するなよ。女じゃないんだから】

【男の方が小心者が多いぞ。女の方が肝が据わっている】


「みんなは楽しめたかな?」


【まあ、山の景色が良かった】

【オークがバテたのは笑った】

【オーガ一撃は盛り過ぎ】

【気絶する前に漏らさないと】

【男のお漏らしなんか見たくもない】


 皮口かわぐちが俺のことを怪しんでいるけど、見矢原みやはらも怪しむかも知れないな。

 そうしたら何か手を打とう。

 その時は弥衣やえに相談だな。

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