第172話 根こそぎ

 ラブリーネスト、10階層。

 毛布地帯だ。


【毛布と戯れるラブリードッグ。もふもふの相乗効果】

【良い光景だ】

【これからおっさんがやらかしそう】


「まずは毛布を収穫だ。パラサイトウルフは殺せ。毛布に血を付けるなよ」

「はい」

「任せて」

「了解にゃ」

「ですわん」


【そういう展開になるよな】

【確保隊はまだか】

【確保隊は9階層を突破できないってさ】

【我々は無力だ】

【このもふもふの楽園を誰か守って】

【無理だろうな】


「俺は悪党だ。嫌いな物はぶちのめす」


【そう言うだろうな】

【あー、毛布が】


 弥衣やえ達によって毛布の葉が収穫されていく。

 広いな。


「空いているコボルトとケットシーを総動員しろ」

「了解にゃ」


 コボルトとケットシーの一団が到着。

 毛布の葉は根こそぎ無くなった。


【酷い】

【ラブリードッグから毛布を奪うなんて】

【これからもっと酷くなる予感】


「パラサイトウルフを皆殺しにしろ」

「「「「「イエッサー」」」」」


【なんてことを】

【フレンドリーモンスターを守る会はこの日のことを忘れません。必ず報いを受けさせます】


「8階層から上を残してやっただけでもありがたく思え」


【8階層から上は何で皆殺しにしないん?】

【やるならそこまでだな】


「確保隊を相手にしたくない。奴らは熊をペットとして家庭に送り込む狂人だからな。コボルトとケットシーを揉めさせたくない」


【そんな理由】

【悪なら、そんなの関係ないと言わないと】

【あなたこそ狂人です】


「粗方片付いたな。さてボスに行くか」


 ボスはでかいだけのパラサイトウルフだった。

 だが、バチバチいう音を立てている。

 電撃だな。


 関係ないけど。

 ボウガンで討って仕留めた。


【バチバチ言ってたな】

【これは討伐止む無しか】

【死んでいい命なんてありません】

【アース取り付ければ、無力化できたかもな】


 さて、今日は終りだ。


「おっちゃん、毛布の葉を持って来たけど」

「おう、手触りは良いな。そうだな1枚496円」


 安っ。

 野菜とか考えたら、高い方か。


「半端だね」

「売値は596円に設定した」

「毛布の草は採算採れるかな」

「どのくらいの頻度で葉っぱが取れるかによるな。だが魔力ハウスの維持費を考えると厳しいな」


「魔力ハウスの魔力は人でやってるの?」

「人の所もあれば、ダンジョンコアを使っている所もある。どっちにしても高いな」


 パラサイトウルフの死骸もなんとかしたい。

 皮を剥いだら非難轟々だろうな。

 炎上覚悟でやってみるか。

 だが最近は有名ブランドも動物の毛皮を使わなくなっている。

 時流って奴かな。


 パラサイトウルフの革でぬいぐるみとか作ったら、子供とかが泣きだしそうだ。

 俺もそこまでするつもりはない。

 何か良い利用法はないかな。

 ああ、身内で消費すれば良いのか。

 今、コボルトとケットシーは2万人を超えている。

 毛布にしても2万枚だ。


 そうしよう。

 肉は肥料だな。

 巨人の肥料の会社がまだあるから、それでやろう。


 魔力ハウスの運用か。

 コボルトとケットシーの魔力を集めれば運用できるな。

 魔力を注ぐのはそんなに手間じゃないよな。

 ただ、無賃金で彼らを使うのは抵抗がある。


 モチに相談だな。


「はい、はいにゃ。パラサイトウルフの毛布は喜んで使わさせてもらいますにゃ」

「魔力ハウスを作りたいが、人をただで使うのは心が痛む」

「子供にやらせたらどうですにゃ」

「それも嫌だな」


 赤字経営も面白くない。

 単価の高い製品があれば良いんだ。

 毛布程度じゃ駄目だ。

 あれっ、元々は毛布の葉を栽培したかったんだな。

 いかん思考が脱線してる。

 毛皮の代替品として毛布の葉が使えないか。

 高級ブランドに売り込んだりできるかも知れない。

 目が出るか分からないが、日本語を覚えてないコボルトとケットシーに良い仕事になる。


「魔力ハウスを建築するいことにした。アイデア募集」


【ラブリードッグの品種改良】


「却下」


【どうしても駄目かな】

【考えてほしい】


「パラサイトウルフの小型化に成功したとしよう。確かに暴れた時の危険性は減る、だが指を噛み千切られたらどうする。責任が取れない」


【まともなコメントだな】


「生理的に受け付けない」


【その意見なら仕方ない】

【感情論は無敵だからな】


 パラサイトウルフの品種改良はしない。

 奴らは性根がねじ曲がっている。

 治るとは思えない。

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