第141話 市場

 巨人の市場に突撃だ。

 こいつらバイヤージャイアントで良いな。

 商人の英単語が出て来なかった。

 あんなに必死に勉強したのにな。

 馬鹿だった俺が唯一点数が取れる英語の問題が、英単語の暗記。

 だって文法は数学の公式みたいで嫌だ。

 リスニングに至っては眠くなる。


 英単語なら、日本語で良く使われているから、ローマ字で当てはめると何問かは正解する。

 まあそんな感じだ。


 バイヤージャイアントは荷物を運ぶ手押し車で掛かってきた。

 ああそうだ。


「クイリリラ」

「キラ・カラ・クイリリ」


「分かる言葉で喋れよ。シロガネ掛かれ」


 こんにちはになんて返したか意味は分からないが、いい天気だねとか言われても、じゃあ死ねしか言葉が出ない。

 スタンピードの惨状を知ると余計にそう思える。


【挨拶は通じなかったか】

【向こうも何か言ってたぞ】

【それに分からないからとキレてシロガネをけしかけるおっさん】

【せっかく言葉を返してくれたのに、何で話し合いでことが済まないのでしょう】

【話し合いの次元はもう過ぎている。砦を潰した時点で敵意が溢れている】

【スタンピードの映像見たが凄かった。フロストジャイアントの被害者なんか凍って粉々になってた】

【液体窒素を掛けられた薔薇の花みたいだったな】

【ファイヤージャイアントなんか。手で握られたら、一瞬で灰だ】

【あんなのに勝てるファントムは凄いな】


「ファントムは凄くない。あいつも幻想だ」


【CGではないだろ。冒険者バトルでの活躍をこの目で見た】

【カラクリがあると言うんだな】

【金で買収は出来ると思うけど、おっさんではないんだぞ】

【おっさんはCGでサクラを作ったんだけど、現物の金でサクラを作る方が容易いかもな】


「そういう事ではない。いずれ分かる時がくるだろう」


【意味深だな】

【おっさんにはファントムの強さの秘密が分かっているらしい】

【どんな種明かしなのかな】

【ちょっとワクワクしてきた】

【なにを呑気に喋っているんです。こうした瞬間にも善良な巨人が死んでいくというのに】

【鼻ほじなんだが】


「いずれ俺はファントムを超えるだろう」


【あのヘロヘロ殴りでファントムを超えるのか。不良にも勝てないぞ】

【だけどおっさんは巨人に至近距離で挨拶する胆力があるんだよな。凄くね】

【シロガネがいれば俺にも出来る】

【ヤエちゃん達もいるし】


 弥衣やえの討伐も順調だな。

 俺はゴザの上の商品を根こそぎアイテム鞄に入れた。


【出た。勇者プレイ】

【大した値段では売れなさそうだけど、1個100円では売れるだろう】

【だな】


「それだ。今日ダンジョンを出たら、巨人ノミの市をやるぞ。巨人の物なのにノミの市。ふはは、洒落が利いてる」


【大して面白くないが、蚤の市には行く】

【1個100円なら、将来値段が上がるかもな】

【盗人が市を開くのですか。恥を知りなさい】

【勇者プレイは合法】

【モンスターから盗みを働いても別に法律違反じゃない】


 討伐は順調だった。

 巨人の街は、砦が壊されたので出撃はなかった。

 街で迎え撃つ方が楽だと思ったのだろう。

 それにしても巨人は逃げない。

 逃げたら死ぬより酷い宗教にでも入っているのかな。


 市の全ての商品を強奪した。

 なんか得した気分。


 ダンジョンから出て、広場になっているところに商品を広げる。

 値付けは適当だ。

 壺なんか高そうだから1000円の値段を付けた。

 皿は100円。

 こんな具合だ。

 貴金属は弥衣やえが調べて持っていった。


 おや銀杯があるぞ。

 高いのかな。

 でも弥衣やえが調べたはず。

 鑑定魔法を使ってみた。

 銀メッキの錫製かよ。


 こんなの100円だ。


「よくもぬけぬけと盗んだ物で商売できますね」


 巨人を守る会がいちゃもんをつけた。


「営業妨害するなら訴えてやるから」

「くっ、覚えておきなさい」


「さぁ、巨人のお宝が安いよ。この銀杯、そんじょそこらの物ではない。これが100円」

「買った」

「言っとくが銀メッキだからな」

「そんなことだと思ったよ。だけど、100円は安い。買うよ」

「まいど」


「おっさん、そこの巨大鍋くれ。催し物で炊き出しするのにちょうど良い」


 巨人の普通サイズの鍋は、人間だと特大だ。

 巨人の特大鍋もあったが、それは飲食店の看板として買われた。

 人間が調理できる大きさではないからな。


 おおむね、巨人ノミの市は好評だった。

 まだ街が控えている。

 あそこを略奪したら、またノミの市を開こう。

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