第142話 冒険者バトル
巨人の街はお預けだ。
今日は冒険者バトルの日。
ファントムは毎回、出なくても良いらしいが、俺は出ることにしてる。
お祭りは好きなんだ。
人がわいわい騒いでいるのを見るとこっちまで楽しくなる。
さて、おっさんのランクアップ戦だ。
「構えて、始め」
俺は左右にステップを踏み、軽快なフットワークを披露した。
相手の木剣の攻撃を軽くかわす。
相手は何回も攻撃して疲れたようだ。
肩で息をしてる。
俺は対戦相手の額にデコピンした。
倒れる対戦相手。
ちょっと、今のはかなり手加減が上手くいった。
子供にやっても泣きださないレベルだ。
「こんなに攻撃してもかすりもしないなんて、とてもじゃないが」
対戦相手が涙目だ。
「両者反則負け、八百長の疑いあり」
【おっ、加齢に、いいや華麗に決めたのにな】
【デコピンで勝負が決まったら、そりゃ八百長だろう】
【またしてもサクラの演技指導を失敗したな】
【CGは作っていた会社が優秀だったんだろう】
【サクラはおっさんが指示を出しているのかな。強者感を出そうとして失敗してる】
「俺、勝ってたよな。前の二回も」
【八百長を抜きにすれば勝ってたな】
【だが、そこが大事】
【審判の眼は誤魔化せない】
【名審判だ】
【俺でも反則負けにする】
「もう良いよ」
【おっさんがしょげた】
【いじけたおっさんは可愛くない】
【もっと上手くやれよ。適度に殴り合って。相手をKOすればいいんだからさ】
くそっ、ちゃんとやってるよ。
相手が弱すぎるんだ。
適当に攻撃させて、デコピンで心が折れるかな。
くそっ。
このうっぷんはファントム戦で晴らそう。
いつも通り全速力で入場。
喝采や口笛、拍手、トランペットが起こる。
トランペット?
野球の応援みたいだな。
だが、賑やかなのはありだ。
オッケー、風呂の桶。
偽ファントムは相変わらずいる。
こいつらどういう心境なんだろな。
偽物でも勝てば本物になれると思っているのだろうか。
嘘をついてたという事実は勝っても消えないぞ。
それともファントムっていうのは冒険者バトルの優勝者の名称とでも思っているのかな。
まあいいや。
いずれファントムは消える。
消えた後に誰が名前を引き継ごうが俺はなんとも思わない。
横暴が過ぎたら俺が懲らしめに行くから問題ない。
まあ、強い奴はやたら噛みついたりしないものだ。
今回のファントム戦は太鼓やトランペットなどの応援がある。
だが俺の試合しか応援しない。
なんかポリシーがあるのだろう。
試合は俺の新技、マッハファイヤーパンチが炸裂。
これはパンチの風圧で相手を場外に吹っ飛ばすものだ。
その時、フニッシュとして炎が出るがこれは魔法を使った演出で、攻撃力はない。
決勝まで簡単に進めた。
決勝の相手はとみると、鉄の輪っかを手足に嵌めている。
歩くのが大変そうだ。
動けないんじゃ、風圧に耐えても負ける一択なんだけどな。
まあいいや。
「構えて、始め」
「マッハファイヤーパンチ」
うん飛ばないな。
「ええとめんどくさい。略してMFP、MFP、MFP、MFP、MFP」
新技を連発。
対戦相手のかつらがすっ飛んだ。
そして着ている鎧と服もすっ飛んだ。
辛うじてパンツは脱げてない。
観客席から笑いがこぼれる。
応援の音楽が一段と大きくなった。
「止めだ。スーパーマックスマッハファイヤーパンチ」
対戦相手のパンツが吹っ飛んだ。
相手は真っ赤になって逃げ出そうとしたが、重りが重くて走れない。
もじもじと内股で退場していった。
まったく、強いやつは出ないのか。
まあそうだろうな。
他人の名前を騙るなんてみっともない真似を強者がするはずない。
「場外により、
わあっ、歓声が上がる。
楽器も高らかに音を奏でた。
「では、2回目の防衛を果たした
「馬鹿にしているのかと言いたい。ファントムの名前はそんなに安くない。これでは糞トムだ」
会場がシーンとなる。
やべ滑ったか。
「いや憤慨してる」
「では、今後はどのような展開を望みますか」
「ファントムの名前は称号だ。たしかに俺の功績でそういう名前が付いたが、一番強い冒険者の名前ってことでいいのではないか。つまり俺はファントムだと名乗るのは自分が一番だと言っているに等しい。だからファントムだと主張するのは騙りでもなんでもない。ただ、ファントム強奪戦で勝ってから主張して欲しいが、簡単に言うと、今はファントムじゃないがのちのファントムだと思う者は気軽に参加してほしい」
「というと、ファントムは一番強い証だと。それを目指すのは恥じゃないと」
「その通り、ファントムという名前に興味がなくても、自分が一番強いということに興味がある冒険者は参加してほしい」
「昨今のファントムの偽者を見ていると確かに私でも思います。初代ファントムの
滑った時はちょっとと思ったが、上手くいって良かった。
ちょっとは強い奴が出て来ないと見せ場が作れない。
次回は期待しよう。
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